女王蜂 アヴちゃん、話題を呼び続けるカリスマ性 舞台、声優、プロデュース……ジャンルを超えた活動で光る圧倒的な表現力

 女王蜂というバンドの存在を初めて知ったのは、2009年に開催された新人発掘イベントのライブ映像をYouTubeで観た時であった。その荒い画質でも十分に伝わるほどの異様な存在感と爆音のエネルギーに、一瞬で衝撃を受けたのを覚えている。

 しかし、そこからまさかここまでの幅広い活動で世間を楽しませる存在になるとは思いもしなかった。近年の女王蜂の快進撃は言わずもがな、とりわけアヴちゃんの活動は多岐に渡り、舞台や声優、プロデュース業など様々なステージでその唯一無二のアーティスト性を遺憾なく発揮している。なかでも印象深いのは舞台への出演だ。アヴちゃんは2017年にミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』のコロンビア役にて舞台初挑戦。続いて2019年にはミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』にイツァーク役として出演し、主人公のヘドウィグ役を務める浦井健治と共演を果たした。また昨年は、東京・PARCO劇場で上演された朗読劇『ラヴ・レターズ ~2022 Autumn Special~』にも出演。舞台役者として着々とキャリアを積んでいる。

 舞台におけるアヴちゃんについては、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』にて共演した浦井が「アヴちゃんはミュージシャンでありモデルとしても活躍されているので、一緒に撮影していてもポーズや表情のプロデュースが的確ですし、最高のタッグだと思います」(※1)とその自己プロデュース能力の高さについて評価している。バンドのライブとは異なるとはいえ、ステージ上における自分自身の見せ方や表情の作り方など、俯瞰的な視点から自分をプロデュースするという面では、音楽ライブと舞台で共通する部分もあるのではないか。そういう意味では、アヴちゃんの舞台役者としての才能は、女王蜂としてデビューした時期から備わっていたのではないかと思う。

 さらに、声優としても注目を浴びている。アヴちゃんは昨年、古川日出男の2017年の小説『平家物語 犬王の巻』を原作としたミュージカルアニメ映画『犬王』の犬王役を演じて話題となった。友魚役で共演した森山未來は「とにかくアヴちゃんの声色の作り込みがハンパじゃなかった。犬王が幼少期から成長していく過程での声の変化もすごかった」とその演技力を絶賛。また、「それを聞いて芝居の想像が広がったし、自分の指針になりました」と森山自身にも影響があったと明かしている(※2)。

劇場アニメーション『犬王』本予告(60秒) 5月28日(土)全国ロードショー!

 確かにアヴちゃんの声の表現力の多彩さは、多くの人々が認めるところだろう。低い声でおどろおどろしい雰囲気を醸し出したかと思えば、次の瞬間には高音で神々しい発声を轟かせたりと、目まぐるしい変化で聴く者を魅了する。しかし、その多彩さのみならず、それによって周りの共演者にまで影響を与えているというのが、アヴちゃんという存在の特異性を表していると言えるだろう。森山が「アヴちゃんの声はエネルギーそのもの」(※3)とも語っているように、アヴちゃんは共演者など周りの人々に影響を与え、巻き込みながら、関わる作品に力をもたらしている。

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