Sound Horizonが本気で追求する物語音楽の可能性 Revo、ストーリーが選択できるライブ&BD『絵馬に願ひを!』への挑戦
前代未聞? 収録曲数も非公開、ストーリーが「選べる」音楽作品
――6月14日に発売された『絵馬に願ひを!』は、公演では観客の多数決で決まっていた選択が、Blu-rayでは個人に委ねられますね。Blu-rayよりも公演を先に行いたかったのでしょうか?
Revo:「こっちを選んだらこうなるのね」と知ったうえで選ぶのと、どうなるかわからずに選ぶのとではエンタメとしての次元が違うので、どちらが先であるべきかの判断は難しいのですが、Blu-rayの制作が間に合わず発売を延期しなければならなくなった結果、今回はこうした順序になりました。公演を先にやってみて、この順序ならではの面白さや緊張感があることは、机上の空論ではなく確信しました。ただ、「選べる」ということが僕は大事だと思っているので、作品の発売があって、そこを軸にコンサートをやるのであれば、発売される前に存在しているコンサートと、発売された後に存在しているコンサートがあって、それを選べればもっと豊かな次のエンタメになるのかなと思っています。今回は力及ばず申し訳ないです。
――作品についてもストーリーを「選べる」ようにするためにBlu-rayというフォーマットにする必要があったわけですね。
Revo:そうなんです。そのためにはCDというメディアから離脱しないといけなくて。選択できるということ以外にも、ランダムで再生される曲があるとか、特定の条件下じゃないと再生されない曲があるとか、そういうことができるメディアって何なのかなと考えました。収録曲も非常に多くなって、CDだとディスクを入れ替えなければいけなくなる。創作上、常に何か新しいことをやりたいと思ってはいるのですが、今回は「選択できる」ということを最優先にやりたいと思いました。
――CDをプレイヤーに入れて、収録曲を順番に聴く、というスタイルとは違うことをRevoさんはやりたかったわけですよね。
Revo:音楽で物語を届けることをずっとやってきて、その物語をどう届けたいのかによって、届けるための方法論や媒体も自由でいいじゃないかと。従来の形のままだと、『絵馬に願ひを!』は絶対に生まれないので、「『こういう音楽のあり方もありだよね』っていうのを、今示さねばならん」みたいな謎の使命感はありましたね。「これを無視したまま、次へは進めんぞ」という感じというか。物語音楽の可能性を本気で追求するなら。
――ちなみに、音楽だけを聴くための隠しコマンドは用意されているんですか?
Revo:ないです。
――選ぶ体験をするための作品と割り切っているわけですね。
Revo:そうですね。特定の曲だけリピートして聴きたいという需要があることはわかってはいるので、そういう需要もすべて内包する形でできれば良かったんですけど、今回のBlu-ray形式では難しい問題があって。それをクリアするアプリ版の構想もあるのですが、力不足でまだ着手できていない現実があります。まずはこのBlu-rayをみなさんが受け入れてくれるかどうか。すべてはそこからかなと。
――私も『絵馬に願ひを!』のBlu-rayをプレイしましたが、分岐もあるので、そのぶん多くの楽曲を書く必要がありますよね。
Revo:そうですね、ものすごい曲数が入っています。
――5月30日の公演時のセットリストは19曲でした。
Revo:それだけやっても、全曲の半分もやっていないんです。
――その曲作りも相当なエネルギーが必要ですよね。
Revo:労働者の観点で言うと、本当は作りたくないですよ。こんな曲数(笑)。でも、作らざるを得ないので作っているんです。何の思想性もなしに「この曲数が必要ですよ」と言われたら、絶望的なつらい気持ちになるかもしれないですけど、今回は本当はもっと入れたかったという気持ちがあるくらいで。「僕が投げ出したら、この作品は人類史に生まれることがないし、この先も誰も作らんぞ」という気持ちでいました。そのぐらい強い気持ちを持っていないと作れない作品でした。
――ちなみに、今回の収録曲は何曲なんですか?
Revo:それは言わないほうが面白いと思います。普通のフルアルバムで考えたら、4枚分ぐらいは入っていますよ。それでも熱心なファンの人たち、僕はローランって呼んでいるんですけど。一部のローランは、発売1~2日でもう表向きのコンプリートまでたどりつくんじゃないでしょうか。もしかすると、第三の道まで発見しちゃうかもしれません。そこからが大変なので、公認ネタバレ解禁日の6月28日にどこまで至ってるのか、答え合わせが楽しみですね。2週間あれば、ある文豪の記録か、ある語り部の独白くらいまではいってるのかな? 第二天井はさすがにきついと思いますが。作品未体験の方は何言ってるか分からないと思うんですけど、今は気にしないでください。熱心に楽しんでくれる皆さんがいることを信じているので、ものすごい量の情報を用意しているということです。
――そこまで突き動かされるものがやっぱりあったんですね。
Revo:そうですね、始めてしまったからには、中途半端なところで終わったら誰も幸せにならないので。これをやることで、どのくらい素晴らしいかも、どのぐらい大変かも、そのデータをしっかり手に入れたので。さらにこれを超えたいと思うんだったら、超えられるように考えないと。「甘い見積もりで作っても絶対無理だぞ」とわかったこともひとつの財産です。この経験をふまえて「次はまた違うものを作りましょう」とも言いやすい。とりあえず何かを突き詰めないと駄目なんですよね。僕の性分としては、「一度この方向は突き詰めた」っていう経験を持っていないといけないんです。そういう積み重ねでしか、たどりつけない場所があると確信しているフシがあります。みなさんにもいつか見せたいです。
僕の頭の中だけにある物語や音楽がまだまだある
――Revoさんは、Linked Horizonとして2013年の『紅白』に出場していますよね。そこから10年経って、ご自身の中で突き詰める作業をまだやり続けているじゃないですか。まだ何かを作る過程みたいな感覚なんですか?
Revo:それは完全にそうですね。それに、『紅白』はLinked Horizonで出させていただきましたが、Sound Horizonで出たわけではないので。「紅蓮の弓矢」(アニメ『進撃の巨人』OPテーマ)も狙って出せるようなヒットではないので、巡り合わせでいろんなものが噛み合って、「ラッキーだったな」としか思っていないんです。Sound Horizonでももっといろんな人に音楽を軸にしたエンタメの多様性を楽しんでもらいたいし、それが僕の使命なんだろうなとも思っています。回り道に感じられることも多々あると思いますが、進むしかないです。
――Revoさんはすごくハングリーですよね。探究心をずっと持ち続けている根源には何があると思いますか?
Revo:ちょっとしんどいですけどね(笑)。自分がやるべきことを全うすることが必要なのかなと思うんです。僕の場合、文字通り自分自身がやるべきことと、必要なことを適切な人にやらせること、その両方がやるべきことの範疇に入っています。そんな仕事は誰にでも許されていることではないし、規模の大きいことは、それなりに責任を持っている立場でないとできないことなので、勝手に僕が代表して「これはやらねばならん、やりますよ」と現代の日本の音楽界において言わないといけないと思っていて。もちろん成功したいですけど、仮に失敗だとしても、それは絶対に糧になるんです。
――そういう使命感がクリエイティビティに直結していますよね。
Revo:これまでにないような作品が一つでも生まれれば、それを範疇に入れて我々の歴史、音楽の歴史が進むべきなのかどうかが問われるので。今回の『絵馬に願ひを!』のフォーマットが主流派にならないことはわかっているんですけど、だからといって、すべてがなかったことにはならないだろうし、エッセンスだけでも自分の作品に取り入れてみようと思う若い人たちが出てくるかもしれない。第三者じゃなくても、今回、実際に参加している誰かが、感覚的に何かを学んで、今後やることにつながっていくかもしれない。もしもの話ですが。若い人が先の時代で何かを作っていくのであれば、僕は吉田松陰なのかもしれないし(笑)。
――『絵馬に願ひを!』は、Blu-rayでプレイする松下村塾みたいな?
Revo:わからないですけど(笑)。自分が作れるなら作りたいですけど、永遠に生きられるわけじゃないので。僕たちの死後、誰かの中で生きている僕たちが何かを成し遂げる助けになるかもと仮定するなら、僕たちはある意味死なないのかもしれない。僕の頭の中だけにあって、誰にも伝わらずに終わってしまう物語が、音楽がまだまだあるので。形にして残して人に届けるっていうことは、アーティストとしてやらなきゃいけないことなんだと感じますね。
■リリース情報
Sound Horizon Around 15th Anniversary
7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願ひを!』(Full Edition)
2023年6月14日(水)発売
詳細:https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/release/index.html#bd_ema_fe
【初心者向け】『絵馬に願ひを!』入門サイト:https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/ema_nyumon/
Prologue Editionアプリ版:https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/release/index.html#app_ema_pe
<特装盤>(完全受注限定生産)
特大狼欒神社絵馬型桐箱仕様
※特装盤の受注期間は終了。
<通常盤>
品番:PCXP-50900
価格:¥22,000(税込)
封入特典:「連動幸運券〜弐分乃弐〜」
(※Prologue Editionに封入されていた「連動幸運券〜弐分乃壱〜」と2枚揃えると応募券になる。後日詳細発表。)
購入(国内):https://lnk.to/SH_StoryBD_Ema_FE_j
購入(海外):https://lnk.to/SH_StoryBD_Ema_FE_w
<歌い手>
井坂泉月、石田彩夏、市川裕之、大原よしの、木内栞、清永大心、香西愛美、佐藤真大、SAK.、神社関係者、能楽関係者、灰野優子、ハセガワダイスケ、ピコ、廣瀬真平、水野雅和、山川達平
<語り部>
Ike Nelson、伊東健人、大塚明夫、岡本信彦、梶裕貴、茅野愛衣、
黒沢ともよ、沢城みゆき、飛田展男、深見梨加、森久保祥太郎、悠木碧、Revo
<楽器奏者>
五十嵐宏治(Key)、井上俊次(Fg)、大塚惇平(笙/鉦鼓)、大橋英之(Gt)、熊田かほり(琵琶)、弦一徹(Vln)、纐纈拓也(龍笛/楽太鼓)、淳士(Dr)、庄司知史(Ob)、鈴木正則(Tp)、髙桑英世(篠笛/Fl)、中ヒデヒト(Sax/Cla)、西山毅(Gt)、長谷川淳(Ba)、三浦元則(篳篥/鞨鼓)、本間貴士(箏)、由有(太鼓/神楽鈴/鼓)、与野裕史(Dr)、弦一徹ストリングス、鈴木正則ブラスセクション、内藤貴司ホルンセクション、髙桑英世木管アンサンブル、Voces Tokyo(合唱指揮:木場義則)、すずかけ児童合唱団
※今作では「歌い手」として表記されている参加者もときには語り部に、「語り部」として表記されている参加者もときには歌い手になる場合あり。
■『絵馬に願ひを!』体験版リンク
【其乃壱】https://www.youtube.com/watch?v=nPaV_66r-sI
【其乃弐】https://www.youtube.com/watch?v=FzJAhrTDK44
【其乃参】https://www.youtube.com/watch?v=nyX9yJEIdSE
【其乃肆】https://www.youtube.com/watch?v=8oS9OiSbv-E
■関連リンク
Sound Horizon音楽配信リンク
https://lnk.to/SoundHorizon
Sound Horizon Around 15th Anniversary Special Site(特設サイト)
https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/
Sound Horizon Official Website
https://www.soundhorizon.com/
Sound Horizon Official YouTube
https://www.youtube.com/@soundhorizon1027
Sound Horizon Official Twitter
https://twitter.com/S_Horizon_info
Sound Horizon研究所 -サンホララボ-
https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/special/