BLACKPINKが示したグループの歴史、変化、そして進化 会場中をポジティブなムードで満たした東京ドーム公演を振り返る
YGXによるダンスセクションとバンドセッションによる転換を経て、ディスプレイには大きく「JISOO」の文字が映し出される。そう、ここからは各メンバーによるソロパフォーマンスの時間だ。MVと同様にダンサーを交えたエレガントな振り付けと、浮遊感のある美しい歌声で魅了したジスの「FLOWER」を皮切りに、それぞれが自らのソロ楽曲を披露していく。
ジェニが「I LOVE U & ME」(未発表曲)でスタイリッシュなダンスミュージックをバックに男性ダンサーとの1対1によるシルエットを活かした鮮やかなダンスで観客を魅了すると、続いて登場したロゼはスタンドマイクを強く握りしめながら「Hard to Love」(SHORT VER.)を熱唱し、近づいてくる男性たちを跳ね除けながら、多くのダンサーを従える「On The Ground」へと繋いで自らの存在感を強く知らしめる。
最後に登場したリサは「LALISA」(SHORT VER.)で圧倒的なオーラを叩きつけると、ステージ後方に用意されたセットで美しいポールダンスを披露し会場中の視線を釘づけにし、さらに自らに札束が降り注ぐ様を歌い上げる「MONEY」へと繋ぐという大盤振る舞い。ジェニが未発表曲、リサが(カップリング曲だった)「MONEY」をメインにしているのは意外な選択に思えるかもしれないが、それぞれソロ作のリリースからある程度時間が経っているということもあり、より今の「自分らしさ」に合ったものを選んだ結果が今回の選曲に表れているのだろう。
まさに各人各様だったソロパートを彷彿とさせるような、砂漠の中のオアシスや氷の世界など、メンバーがそれぞれに異なる場所で自らの居場所を確立したかのような映像(無垢な自然の世界を離れ、荒廃した世界を経験した果てに「自分らしさ」を手にしたBLACKPINKの歩んできた物語を示しているのかもしれない)を経て、本編最後のセクションが幕を開ける。より自由でカジュアルな印象の衣装へと切り替わり、『BORN PINK』収録の「Shut Down」、「Typa Girl」が披露されていったのだが、ソロパートを経た上で改めて四人が揃った状態でのパフォーマンスを目の当たりにすると、グループだからこそ生まれるオーラの強さに圧倒される。その後のMCではさらに数段リラックスした様子で、お互いに「かわいい!」と褒め合ったり、東京公演が初お披露目となったジスのソロパフォーマンスの感想を語り合ったり、会場全体でウェーブをやってみたりと、ゆるく楽しい時間が過ぎていった。
そして、「残り2曲」と名残惜しそうに話しながら最後に披露されたのは、言わずとしれた代表曲である「DDU-DU DDU-DU」と、「FOREVER YOUNG」だ。もはや盤石な安定感を誇る「DDU-DU DDU-DU」が素晴らしかったのはもちろんだが、筆者個人としてはデビュー7年というキャリアを重ねながら、今なおピークを更新し続ける姿を目の当たりにした上で歌い上げられる「FOREVER YOUNG」に強く心を動かされていた。2018年のリリース当時はやや大袈裟にも感じていた〈BLACKPINK is the revolution〉というフレーズは今や完全な事実だ。その事実を祝い、『コーチェラ・フェスティバル』へと送り出すかのように盛大で温かな大団円のムードが会場中を覆い尽くし、最後まで手を振りながら4人はステージから去っていった。
恒例となったBLINKによる「STAY」の合唱が東京ドーム中を満たすと、やがて観客席の両サイドからトロッコに乗ったメンバーが登場し(この日はジェニ&ジス、リサ&ロゼの組み合わせ)、「Yeah Yeah Yeah」を皮切りにアンコールへ。そのままトロッコで「STAY」も披露した。4人とも今回のツアーのグッズを身に纏い、リラックスした表情で観客とコミュニケーションを取っていく。カメラを相手にふざけたり、メンバー同士でからかったりする姿は、やはり等身大の仲の良い4人組であり、改めてこのバランスが成り立っていることに驚き、同時に嬉しくもあった。最後の楽曲は、最初期からのお馴染みである「AS IF IT’S YOUR LAST」。まさにBLACKPINKの“Pretty”と“Savage”を併せ持った同楽曲がもたらす幸福感は尋常ではなく、途中にはサイファーを囲んでメンバーがソロダンスを披露する場面も。まさにこの場にいる全員で、この日の成功とBLACKPINKという存在を祝福していた。
先日、見事に成功を迎えた『コーチェラ・フェスティバル』でのパフォーマンスは、間違いなく素晴らしいものであり、歴史的にも大きな意義のあるものだったと言えるだろう。それを踏まえた上で、よりBLACKPINKの本質を捉えていたのは、この日のライブだったのではないかと感じている。それは、グループの歩んできた歴史と変化と進化をより明確に示していたからであると共に、ここまでの成功を実現させた今でも変わらずに「共感できる存在」であり続け、だからこそ生まれるポジティブなオーラが会場中を満たしていたからである。それがある限り、これからも革命は続いていくのだろう。
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