水曜日のカンパネラ、「エジソン」大ヒット以降に起きた意識の変化 詩羽「最近ボーカリストとしての自覚が芽生えた」

今は移行期間が終わったという気持ち(ケンモチ)

ーー新作EPの『RABBIT STAR ★』というタイトルは詩羽さんの発案ということですが、これはどういうアイデアがあったんでしょうか?

詩羽:今年は頑張りたい、今年は私たちの年にしたいと思っているんです。前回の『ネオン』で「エジソン」がバズったりして、思ったよりも反響が良かったからこそ、次に出すEPはすごく大事だと思っていて。時代の流れが速い中でスピード感を大事にしたいし、“今”という意味を込めたいからこのタイトルにしました。「RABBIT」というのは、陰陽五行説で今年が何の年かを調べたら「癸卯(みずのとう)」という年で。「癸」というのは「水」の「陰」の年で、たまたまだけど「水」の年っていうのは、私たちが今年こそって思ってるのとも何かご縁があるんじゃなかなと思って。で、「STAR」はスピード感がある言葉なんで、今年は勝負の年にして速く輝いていくぜっていう気持ちで込めました。

ーーケンモチさんとしては、最初に「アリス」「バッキンガム」「招き猫」「エジソン」を作っていた頃と比べて、今の曲作りの狙いどころがより明確になってきた感じはありますか?

ケンモチ:そうですね。1年前ぐらいのときは、コムアイと詩羽の変わり目をいかに綺麗に見せるかとか、昔の曲が好きな人と新しく聴いてくれる人をどうシームレスに混ぜていくかとか、そういうことを気にしてやっていたんですけど。今はそこの移行期間が終わったという気持ちで。次はこの新しい水曜日のカンパネラをどうもっと良くしていくか、今売れているアーティストさんとか、それを聴いているリスナーさんとかに向けて、どう対抗できるかというのを、わりと新しい目線で考えるようになってきました。

ーー詩羽さんのキャラへの当て書きというか、詩羽さんがステージで歌っている光景をイメージして曲を書いたりすることも増えましたか?

ケンモチ:今回の新しいEPでいうと、「赤ずきん」がまさにそうですね。今までは誰の言葉でもないような語尾の雰囲気で作っていたんですけど、「赤ずきん」は〈完全にやっちゃってんな〉とか、喋っているセリフみたいな感じにしていて。「詩羽だったらこういうことを言いそうだな」とか「こういう言葉を選びそうだな」みたいな雰囲気で作っています。

水曜日のカンパネラ『赤ずきん』

ーー詩羽さんとしては、この曲を歌ってみてどうでしたか?

詩羽:この曲はすごくやりやすいです。口調が本当にナチュラルな状態での私の喋り方だったりするので。何も難しいことなく「やってんなー」っていう気持ちで歌ってますね。

ーーこういう風に相手を詰めていく感じが、普段の詩羽さんにもある。

詩羽:あるんじゃないですかね(笑)。「どっちなんすか?」って結構言うんで。そのテンションで言ってますね。

ーーライブでも狼とダンスを踊ったりして、見せ場のひとつになっていると思うんですけど、ステージでのパフォーマンスについてはどうでしょう?

詩羽:レコーディングの時より、ライブの方がさらに感情移入しているんじゃないかなと思います。あとは、お客さんの層によって言い方を変えたりしていて。たとえば「やってんなー」の一言でも、いつもの水曜日のカンパネラだったら強い口調でいいけど、おじいちゃんやおばあちゃん、小さい子が多い時だったらあまり強く言いすぎるとこの曲の印象が悪くなるかなと思ってちょっと可愛めにしたり。逆に若い子たちが多かったらバチバチにキツめに言ったりとか。〈その分働かなきゃ詐欺だよな〉っていうところをがなるかどうかをお客さんの層とか場の空気で決めたり、自分の中で調整できる余裕が生まれてきましたね。

ーー「鍋奉行」はNHK Eテレアニメ『魔入りました!入間くん』第3シリーズエンディングテーマで、ハイパーポップな曲調ですが、これはどういう由来からできたんでしょうか?

ケンモチ:ちょうどハイパーポップをやってみたいなって思ってたんです。悪魔が出てくるアニメなんで、子供が見て「よくわからないけど楽しい!」ってなる感じとか「楽しいんだけどちょっと怖い」っていう感じも出していいんじゃないかと思って。サビは声がどんどん変化するようなエフェクトをかけて。歌詞にも強さと可愛らしさを入れて作りました。

詩羽:この曲はライブの演出をどうするかを一番話し合いましたね。ただ歌うだけだとやりにくいし、聴かせるタイプの曲でもないから、やること決めちゃってみんなで楽しむってした方がいいかなって。そのやり方が少しずつ見えてきた感じがします。

ーーこないだのライブでは、サークルモッシュというか、DJイベントで「とっとこハム太郎」がかかった時みたいな感じで、お客さんがグルグル回ってましたね。

詩羽:そうですね。私が脚立の上に立ってたんで、みんなが楽しそうに回ってたのが見えて、すごく良かったです。もっと浸透させていきたいですね。

ケンモチ:今年になって、こういうライブの楽しみ方がちょっとずつ戻ってきているので。この曲は特に一緒に楽しめるようになったらいいなと思いました。

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