きゃない、“再開”と“再会”を祝した東名阪ツアー 路上ライブからメジャーデビューへの夢を叶えた幸福な一夜

きゃない、メジャーデビュー叶えた夜

 きゃないが、フルバンドセットで東名阪を巡る『LIVE TOUR 2023「さいかい」』を開催した。活動休止を経て、「再開」と「再会」を祝したツアーとなる。今回は4月29日にEX THEATER ROPPONGIにて開催された東京公演をレポートする。

 SEが流れバンドメンバーが登場した後、きゃないが駆け足でステージに姿を表した。「やろうかー! 立てますか? 『さいかい』ツアー、よろしくお願いします!」と挨拶。その足取りや表情からは、この日を楽しみにしていたことが存分に伝わってくる。ライブはブライトなナンバー「たまご」でスタート。ジャンプをしながら軽快に歌い、会場を一気に盛り上げていく(後のMCで「あれは27歳がしていい運動量ではなかった」と吐露していた)。中盤では「声聞かせてくれー!」という言葉を合図に、オーディエンスがシンガロングする場面も。

 2曲目「サイダー」からはギターを手にし、爽やかなメロディと真っ直ぐな歌声を届けていく。「愛の言葉」ではリスナーが手を大きく左右に振り、愛の溢れる空間に。ボーカルを前面に出した歌パートと間奏のメロディックなギターサウンドの掛け合いのバランスがとても心地よかった。

 「日々頑張ってくれているマネージャーが好きな曲です」という前置きのもと披露されたのは、「夕暮れ」。夕日を想起させる赤い照明と迫力のあるドラムサウンドが、楽曲をドラマチックに彩っていたのも印象深い。「でこぼこ」「私の半分」でじっくりと歌声を届けた後にプレイしたのは、「浮気を肯定する曲」(※1)として話題になった「紫陽花」。ジャジーなキーボードが切なさと軽やかさを醸し出し、歌詞がより深く胸に刺さってきた。

 中盤のMCでは「重大発表があります」という宣言の後に、「6月14日に『僕はヒーローになれない』という曲でメジャーデビューします」と発表された。その瞬間にリスナーからの大きな歓声と拍手が起こったのだが、これが予想以上の反応だったらしく、「そんな熱量で返してくれんねや!」と答える。本曲はきゃないが路上ライブ時代からずっと大切に歌ってきた歌で、曲名を発している時点でファンからはすでに歓声が上がっていた。

 そうして披露された「僕はヒーローになれない」は、かけがえのない特別な演奏となった。路上ライブからメジャーデビューまでの道のりや、〈僕はヒーローになれないけど/少しだけ君の心震わせるんだ〉という歌詞、気持ちのこもった歌声などが相まって、思わずうるっときてしまった。観客の心を大きく震わせた後は、「ゴールデンタイム」「ネガティブフライ」へと繋げていく。

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