2023.05.03 18:00

きゃない、“再開”と“再会”を祝した東名阪ツアー　路上ライブからメジャーデビューへの夢を叶えた幸福な一夜

文＝伊藤美咲

　「活動休止中に救われた曲」として披露したのは、新曲「おむかえさん」。ミドルテンポのメロディに乗せて大切な人のことを歌ったウォームな楽曲だ。そして「じゃあ最後に一緒に歌おっか」と言い、「バニラ」を届ける。フロアからは自然と手拍子が鳴らされ、サビの一部はリスナーのシンガロングで歌われた。ストレートなラブソングに会場は圧倒的な幸福感に包まれ、この瞬間に立ち会えたことを心から嬉しく思った。

　アンコールに応え再びステージに登場したきゃないは、「アンコール3曲やります！」と宣言。まずプレイしたのは「HALLO」。〈またどこかで出会えるはず〉〈その時まで／僕は歌い続けるから〉という歌詞が、まさに『さいかい』ツアーにぴったりだった。2曲目は、人気曲「コインランドリー」。バンドセットでダイナミックに演奏され、歌詞も〈明日も良い日だから〉を入れるアレンジが施され、ラストスパートにふさわしい1曲となった。そしてラストはポップなナンバー「ホッピングシャワー」。カラフルなライトの元、ハンドマイクを片手にジャンプしたり手を振ったりと、全てを出し切るかのように盛り上げ、ライブを締め括った。

　路上ライブでの活動を経て、メジャーデビューという夢を掴み取った、きゃない。活動を始めたときからオリジナル楽曲にこだわり、MCでも「シンガーではなくシンガーソングライターと名乗りたかった」「あなたの人生を変えるくらいの良い歌があるかも」と話していたように、ここまで自分の歌を信じて突き進んできた。その芯の強さがリスナーの心を掴む楽曲を生み出す秘訣となり、EX THEATER ROPPONGIをソールドアウトさせるまでになった。「バニラ」のバイラルヒットやテレビ出演で注目を集めていたきゃないが新たなフェーズに進み、どのように飛躍していくか注目だ。