【浜田麻里 40周年インタビュー】第5弾:メモリアルな武道館公演で実感した大きな節目 重厚なメタルで表現した確固たる意志や、『LOUD PARK』出演も振り返る
26年ぶりの日本武道館公演「ドラマティックなシンガー人生になった」
――『Mission』というアルバムが出たのも意味深いですよね。タイトルに冠された言葉は、「歌うことは使命だ」という麻里さんが子供の頃から抱いていた考えを改めて示したものですし、実際に繰り出される楽曲を通して、シンガーとしての強靭さが鮮やかに表現されています。
浜田:やっぱり『Aestetica』からの強めの流れが来たなっていう感じはあります。高崎さんに感謝ですね。
――そこを『Mission』で集約させたような印象でした。だから、その後にどんなアルバムを作るのかまったく想像ができなかったところ、再びビクターエンタテインメントに移籍し、新たに生み出された『Gracia』で、どこまで進化が続くのかとまた驚愕させられたんです。
浜田:できたばかりのときの達成感は、たぶん『Gracia』が一番大きかったと思います。グワーッと集中力が高まってきたところでした。実は、『Mission』とその後のツアーを経る中で、いろんな問題点が噴出してきて、また追い込まれた状況までいって、一時は食事も摂れなくなりました。けど、そういった物事を一つずつ解決させて、短期間で復活したんです。それと同時に次のアルバムの曲を演奏してほしいミュージシャンにも片っ端からメールしたり。あれだけたくさんの人たちと一人ずつ密なやり取りをして、1からすべてやったことが、自分でも信じられないくらいでしたね。
――本当に錚々たるミュージシャンが参加していますからね。
浜田:そうなんですよね。新作の『Soar』はまたそこからの抜粋というか……いや、外れることになったポール・ギルバートやクリス・インペリテリもすごくよかったんですよ。ただ、たまたま楽曲の方向性というか、音楽的に向いているのがマイケル・ロメオとクリス・ブロデリックだったので、彼らが残った感じになりましたけど。『Gracia』では、ちょうどそれぞれが、「これだったらやってもいいな」と思える曲を上手くオファーできたのもよかったですね。
――『Mission』を経た上でのあるべき姿が、鮮明に見えてくるアルバムですよね。その後のツアーも荘厳でしたが、やはり2019年4月19日に行われた、26年ぶりの日本武道館公演に集約されると思います。
浜田:そうですね。デビュー35周年を迎えるタイミングで、ビクターに移籍をさせていただこうという決心もそうだし、お別れする人とのいろんな気持ちのやり取りもそうだし、日本武道館に向けて、すごく強固な意思を持って積極的に前に進んだんですよね。私はずっと「物静かな人」って言われるタイプで、元々はあまり人前に出て目立つのが好きじゃない性格でした。そんな自分がここまでやるかっていうところまで行きましたね。
――『Mission』のリリースに伴うツアーの以前から、すでに麻里さんのコンサートのチケットは入手困難になっていました。たとえば東京エリアでは、5000人超のキャパシティである東京国際フォーラム ホールAに観客が入りきらない状況でしたし、もっと早くから日本武道館を会場にすればよいのではないかと周りは考えていたと思います。ただ、実は麻里さんは然るべきタイミング、つまり35周年で武道館公演を実現させたいと早くから想定されていたんですよね。
浜田:はい。ただ、状況的にどうしても足を引っ張られちゃうようなところがあって。それを打破するための厳しい決断と、結構な労力が要りました。
――想定されていたにもかかわらず、当時のコンサートプロモーターからは、その時期に日本武道館を押さえるのは不可能だとの返答があった。そこも麻里さん自身が動かなければならなかった背景の一つでしたが、他にもツアーに関わる件も含めて、様々な物事を刷新して臨んだ一連の活動でもありましたよね。日本武道館公演の模様は映像作品『Mari Hamada 35th Anniversary Live "Gracia" at Budokan』(2019年12月)としてもリリースされましたが、あの記念すべきライブはどう振り返りますか?
浜田:いつもなんですけど、時間が足りないなって(笑)。ギリギリまでバタバタしてて。「もっと時間をかけてやれたら、こういうことができた」とか、そういうのは何に対しても私はあって、満足しないタイプなんで……パッと聞かれると、まずそういう記憶が蘇ってきちゃいますね(笑)。ただ、「あぁ、やっと戻って来れたな」っていう感じでした。「昔のヒット曲のリバイバルが独り歩きして、何か大きな話題となって、若かったときの武道館に戻る」なんて話はあり得なくはないと思うんですけど、私の場合は違いましたよね。暗い夜道で手探りしながら、1点の小さい光に向かうような。なかなか珍しいだろうなとは思います。
――感慨深い日本武道館でしたね。
浜田:そうですね。かなりドラマティックなシンガー人生になったなと(笑)。ここから何年やれるかわからないですけど、大きな節目にはできたかなと思います。でも今って、あの武道館から4年も経っちゃってるんですよね。困っちゃうなぁ、時間が流れるのが早くて(笑)。
――この3年ほどはコロナ禍でもありましたから、なおさらかもしれませんね。さて次回は、いよいよ最新アルバム『Soar』についてたっぷりお話を伺います。
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