ラストツアー開催中のKISS、いかにして“伝説のライブバンド”になったのか 伝記映画公開決定を機に初期のキャリアを振り返る
そのように最初からプロ意識を持っていたポール・スタンレーは、高校時代から“ロックスター”の素質を持っていた。彼は高校の先生に「なぜ勉強や宿題をしないのか?」と聞かれたとき、「俺はロックスターになるから勉強をする必要はない」と答えたようだ。先生に「みんなロックスターになりたがってるんだよ」と言われた際に、「そうだけど、俺はなるんだ」と答えたと明かしている。彼は“キャリア”というものに対して、以下のように語っている。
「俺ができることを、100年かけてもできない人たちもいる。逆も然りで、俺に向いていないこともたくさんある。もし俺が数学者になろうとしていたら、失敗してホームレスになっていただろう。人生では、自己評価をし、自分に向いていることや手が届く道を選ぶときがくる。もしそれで全く向いていなく、手が届かないようなことを選んだとしたら、あなたは愚か者だ。この世界で1度しか人生はないし、時間はとても大切だ。だから自分にとって現実的な道を志すのが重要だと思う。それが他の人にとっては現実的ではなくても」(※7)
ロックスターになることはポール・スタンレーにとって現実的だったが、KISSは非現実的なライブ演出で人気を博した。ヒット曲も多数生み出しているが、彼らの本質はライブ演出とステージ上でのエネルギーだろう。初期からメイクアップをし、レザーとスパイクをつけ、血を吐いたり、炎を吹いていた彼らは、ライブの集客が増えるなか、音源のセールスに伸び悩んでいた。1974年のデビューアルバム『KISS』はビルボードアルバムチャートで87位、2ndアルバム『Hotter Than Hell』は100位で、すぐさまチャートから消え去った。1975年の3rdアルバム『Dressed To Kill』はトップ40に入るが、レーベル Casablanca Recordsは倒産の危機を迎えていた。
ライブでのエネルギーを音源で伝えることができれば、人々に魅力が伝わると確信していたKISSは、1975年の春に開催された5つの公演を録音した後、スタジオでトラックを多数オーバーダビングしたライブアルバム『Alive!』を同年の9月にリリース。結果的に全米9位を獲得し、現在に至るまでに世界で900万枚以上のセールスを記録している。
このようにライブのエネルギーによって、長きにわたって評価されてきたKISS。現在開催中のラストツアー『End of the Road World Tour』、そしてファイナルのマディソン・スクエア・ガーデンでどんな伝説を最後に残すのだろうか。
※1(筆者訳)https://www.whats-on-netflix.com/news/shout-it-out-loud-netflix-kiss-biopic-2024-release-and-what-we-know-so-far/
※2、3(筆者訳)https://www.kissonline.com/news?n_id=126775
※4、5、6(筆者訳)https://ultimateclassicrock.com/kiss-first-concert/
※7(筆者訳)https://youtu.be/Z6otLCMbgFs
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