雨宮天、歌謡曲への愛情とリスペクトを作品に昇華 初の全曲作詞作曲に挑戦した最新EPを紐解く

 2021年10月に、大橋純子や中森明菜などの70~80年代歌謡曲のカバーアルバム『COVERS –Sora Amamiya favorite songs-』をリリースした雨宮天が、自身で作詞・作曲を手がけた5曲を収録したEP『雨宮天作品集1 -導火線-』をリリース。ロングの黒髪、胸の内に秘めた情念をストレートに映し出す歌声。雨宮天に最も似合う歌謡曲をモチーフに、歌謡曲愛にあふれた“雨宮歌謡”と呼べる作品になった。

雨宮天「雨宮天作品集1-導火線-」全曲試聴動画

 雨宮天は2012年に声優デビュー、『スパイ教室』(リリィ役)、『彼女、お借りします』(水原千鶴役)、『理系が恋に落ちたので証明してみた。』(氷室菖蒲役)など数々の人気アニメ作品にヒロインとして出演する一方、3人組声優ユニット TrySailのメンバーとして音楽活動を行う。2014年にシングル『Skyreach』でソロアーティストデビューして以降は、13枚のシングルと3枚のアルバムなどをリリースして着実にキャリアを重ねてきた。

 2020年にリリースしたアルバム『Paint it, BLUE』では、自身が作詞・作曲を手がけた「火花」を収録し、以降はTrySailの活動とは一線を画した、アーティストとしての高いクリエイティビティを発揮している。「火花」は、シティポップのサウンドに歌謡曲調のメロディと情熱的な歌詞で、アルバムのいち楽曲を超えた存在感を発揮した。2021年のシングル『永遠のAria』には「BLUE BLUES」、『フリイジア』にはラテン調のナンバー「情熱のテ・アモ」を収録。シングル表題曲やアニメタイアップ曲とは異なる、雨宮天のもう一つの側面としてファンの間に定着。そして昨年リリースしたベストアルバム『雨宮天BEST ALBUM - BLUE -』『- RED -』では、「This Hope」と「ロンリーナイト・ディスコティック」がアルバムのリードトラックとして採用され、アルバムの顔を自ら手で作詞・作曲するまでになった。そうした流れでリリースされる、『雨宮天作品集1 -導火線-』は、作品全曲の作詞・作曲を自身が手がけた初の作品だ。

雨宮天「TRIGGER」Music Video

 EPの1曲目は、ブラスのきらびやかなイントロで幕を開ける情熱的でミステリアスなナンバー「TRIGGER」。本作のリード曲で、MVではショーダンサーに扮した雨宮が、挑発的なまなざしを投げかけてくる。ここは大人の社交場、駆け引きはお手の物。まるで酒や食事を楽しむかのように、繰り返される恋愛遊戯。女と男のスリリングな物語を思わせる世界観は、歌謡曲の常套手段。欲望を解放させるように刺激的な歌詞が、ジャズのド派手なサウンドとマッチし、めくるめく大人の夜が描かれた。フラメンコのように大胆かつしなやかで、アルゼンチンタンゴのように挑発的な雨宮のボーカルが、聴く者のハートを撃ち抜く。

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