DECO*27が語る、ホロライブとのコラボ企画“holo*27”の全貌 ホロメンの新たな表情を引き出した楽曲制作秘話
“悪ガキ”っぽさを出した紫咲シオン×ラプラス・ダークネス「リップシンク」
ーーではオリジナル曲の全曲について詳しく聞かせてください。1曲目は紫咲シオンさんとラプラス・ダークネスさんがボーカルを担当した「リップシンク」です。
DECO*27:「リップシンク」は、口が悪くて音楽的には治安の悪いーー。言葉を選ばずに言うと“悪ガキ”っぽい楽曲がつくれたらいいなと思ってできた曲です。今回の企画の最初に公開される楽曲にしようと決めていたこともあって、サウンドも攻めたものにしていきました。
ーーリスナーのみなさんに「クソガキ」「キッズ」と呼ばれることも多い二人の魅力を活かしたものになっているのですね。音楽的にもトラップやドラムンベース~ジャングルなどの要素がミックスされていて、文字通り治安が悪いところが魅力的だと思いました。
DECO*27:そうですね。とはいえ、ただ治安が悪いだけの曲にはしたくなかったので、ふざけているおこちゃま感も加えられたらと、〈もう始まってんぞ/引っ込んでな〉の後に二人のくしゃみを入れていただきました。あと、サッカーのホイッスルの音も入っているんですけど、これも実際に二人に吹いてもらった音源を使っています。そんなふうに、ボーカル以外の音でも参加してもらいました。
ーー二人のボーカルで特に印象的だったことはありますか?
DECO*27:holo*27のオリジナル曲は、参加してくださるみなさんのことを僕なりに研究したうえで、「この人はこれぐらい歌えるだろう」というラインよりもさらに上のものを目指して楽曲をつくっていったので、この楽曲もレコーディングは大変だったんじゃないかと思います。同時に、サビの部分は特に最近のDECO*27を意識したものになっていると思います。
ーー2曲目の「Sweet Appetite」はホロライブENのGawr GuraさんとHakos Baelzさんが参加しています。以前DECO*27さんが提供した「Q」ではGuraさんの舌っ足らずな日本語も印象的でしたが、今回はBaelzさんとのコンビで全編英語詞のかっこいい楽曲ですね。
DECO*27:この曲は、普段はすごく可愛い女の子が、相手のためにちょっと背伸びをしてセクシーに装うようなテーマの楽曲です。まずは仮で僕が日本語の歌詞を上げて、英語に翻訳してくださる方に「この母音で韻を踏んでください」ということを指定してお渡したんですけど、それと同時進行でTAKU INOUEさんにアレンジを考えてもらいました。ドロップに二人の吐息が入っているのもポイントで、Aメロでの可愛く背伸びをしているような雰囲気から、かなりセクシーなところまで表現された楽曲になったと思っています。ドロップの部分はTAKUさんにお任せして、「思いっきりやってください!」と伝えました。
ーー低音で思い切り暴れてください、と。
DECO*27:はい(笑)。普段アレンジをお願いするときは僕もある程度つくった上で「こんな雰囲気でお願いします」と言って渡すんですけど、TAKUさんから出てくるものがほしいと思ったので完全にお任せしました。歌に関しても、普段は可愛らしい印象のGuraさんが今回ちょっと背伸びしているような雰囲気を出してくださいましたし、Baelzさんは普段はクールな雰囲気と可愛い雰囲気を兼ね備えていると思うので、その二人がお互いに歩み寄った中間に「Sweet Appetite」があるような感じがして「すごく似合ってるな」と思いました。
よきライバル感を描いた“ぺこみこ”「モッシュレース」
ーー天音かなたさんが参加した3曲目「ヒル」はどうでしょう? この曲は「ゴーストルール」の歌ってみたなどでも印象的なクールなロックが似合うかなたさんのイメージですね。
DECO*27:そうですね。かなたさんは歌が上手い方なので、holo*27のオリジナル曲の中でも、一番ハードルを上げてお願いした気がします。この曲はサビも難しいですし、2Aの早口の部分も「これだけハードルを上げても歌えますか?!」という感覚でお願いしたんですが、かなたさんは見事に歌いこなしてくださっていて流石だと思いましたし、「もっと難しくしてもよかったのかな?」とも思いました。将来的にカラオケ配信などが実現することがあったら、みなさんもぜひ歌ってみてほしいです。きっとすごく難しいことが分かると思うので。
ーークロヱさんの「P.E.T.」はどうですか。クロヱさんは歌枠などでふたつの声を使い分ける方ですが、ここではその声がグラデーションしながら混ざっているのが印象的です。
DECO*27:この曲のテーマは「闇」なんですけど、それをより深く描くために、明るく可愛らしい声から暗い声にグラデーションするように歌ってもらいました。そうすることでより「怖い」と感じてもらえたらいいな、と。そういう「ひとりデュエット」をお願いした曲ですね。以前クロヱさんに提供した「擬態ごっこ」はクロヱさんから依頼をいただいて「ロックがやりたい」ということでつくったので、holo*27では逆をやろうと思って、今回はEDM色の強い曲調にしています。「擬態ごっこ」でも一部コーラスで可愛い声を入れてくださってふたつの声を使い分けてくれていましたけど、今回はより明暗を色濃くつけてもらいました。
ーー〈あいつがいけないの〉という部分など、まさに聴いていてゾクッとしました。
DECO*27:あのグラデーションを表現するのは難しかったと思うんですけど、この部分も「ハードルのひとつ上を目指す」という意味で入れさせていただきました。
ーー続いて百鬼あやめさんが参加した「ビビビ」は80’s風のシンセ音が印象的な楽曲です。とはいえ、ビートはモダンで今風のものになっていることも印象的でした。
DECO*27:おっしゃる通り、懐かしさと新しさをアレンジ面でミックスできたらいいな、と考えてつくっていた曲ですね。今回、Rockwellが多くの楽曲のアレンジを担当してくれているので、すごく大変だったと思います。「ビビビ」に関しては、曲をつくっているときに、あやめさんの口から「ビ」という言葉が出てきたら似合いそうだな、と思ったのでボーカルをお願いしました。歌に関してはとにかく「可愛く歌ってください!」とリクエストしてみました。
ーーサビの「どっち?」のリフレインは、「どーっちどっちの歌」を思い出します。
DECO*27:後からレコーディング時の様子をスタッフさんに聞いたんですが、ご本人も「私のことを色々調べてつくってくれたんですね!」と言ってくださっていたらしいです。この曲はミドルちょっと下ぐらいのテンポで、歌の表現力が試される楽曲ですけど、歌詞にニュアンスをつけながら見事に歌っていただきました。
ーー次の「モッシュレース」はさくらみこさんと兎田ぺこらさんの参加曲ですね。ファンのみなさんにとっても久々となる“ぺこみこ”での楽曲になっています。
DECO*27:楽曲としては「ぺこみこ大戦争!!」ぶりになるんですかね。「メロコアがやりたいなぁ」というアイデアで生まれた曲でした。『holo*27 Originals Vol.1』の中だと「ヒル」もロック曲ですが、あの曲はどちらかというとJ-ROCK系の音楽なのに対して、こちらは同じロックでもまた違うジャンルになっています。
疾走感がある曲なので、「負けないよ!」とペアで競い合うような雰囲気にできたらと思って、そういう意味で僕がイメージしたのが、みこさんとぺこらさんでした。ホロライブのタレントさんはそれぞれに活動スタイルや目標が違うと思うんですけど、二人は「エンタメを突き詰めます!」という雰囲気の配信活動を大事にしている印象で、そういったスタイルや姿勢などを僕なりに解釈したときに、お互いに体をぶつけ合って我先にと競り合っていくような雰囲気の曲なら合うだろうと思いました。「この人がいるから負けられない!」と自分を鼓舞できるような、よきライバル感を描けたら、と思っていたんです。
ーーなるほど。二人のボーカルはいかがでしたか?
DECO*27:二人ともテンション感を合わせてくださって、サビなんて特に、「同時に録ったのかな?」と思ったくらいでした。あと、2番のAメロで一旦メロコアの要素がなくなるところも、「ここでオケの雰囲気が変わりましたよ」ということをボーカルでも表現してくれています。ミックスもジャンル感に合わせてスリーピースで再現できるものにしていて、アレンジをしてくれたsooogood!には、楽器を覚えたてでも弾けるような、勢いで音を奏でるような雰囲気のものをリクエストしました。対称的に「ヒル」はアレンジをtepeにお願いしてテクニカルなものにしてもらいました。