KAT-TUN、中堅の底力見せたアルバム『Fantasia』がチャート首位に 無国籍感と歌謡の絶妙なバランス
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2023-02-27/
今週のアルバムチャート。OnlyOneOfのミニアルバムが初登場5位、NCT DREAMとNCT 127の新作が3位と2位にランクインするなど、相変わらず韓国ボーイズグループの人気が目立ちます。しかし、首位に輝いたのはKAT-TUNの『Fantasia』。セールスは初週9.7万枚。オリコンによると彼らのアルバムは2006年の1stから13作連続で1位を獲得しているそうで(※1)、若さや勢いだけでは語れない中堅アイドルの底力を感じます。
メンバーの頭文字を取ることで決まったKAT-TUNというグループ名。2010年代に入ると少しずつメンバーが欠けていき、亀梨和也、上田竜也、中丸雄一の3人体制で再始動したのは2018年のこと。『CAST』(2018年)以降は『IGNITE』(2019年)、『Honey』(2022年)とコンスタントにリリースが続いています。今回の『Fantasia』は3人体制になってからの4作目。すべてシンプルな単語タイトルで統一しているのがいいですね。いちいち説明を挟まない大人の余裕、もしくは、テーマがひとつあれば3人で自在に表現できるという信頼関係。そういうものがあるのだと思います。
実際『Fantasia』は現実から連れ出してくれる魅惑のファンタジー作品。K-POPの主流である重低音重視のトラックから始まりますが、スタイリッシュなビートに甘い歌声と美しいハーモニーを絡ませ、だんだんカラフルな色彩が加わっていきます。表題曲「Fantasia」など、ヒップホップ(ビートを乗りこなすフロウ)とダンスミュージック(快楽性の高いメロディ)とポップス(詩情も含めた歌声の余韻)を完璧に網羅している3人の歌唱がお見事。ブレスや囁き声も実にセクシーで、これは10代にはできない表現でしょう。
全体に漂うクール&スタイリッシュな空気は、作家陣も関係しているはず。目立つのは海外のクリエイターで、イギリスのJoe Lawrence、Kieran Davis、スウェーデンのErik Lidbom、韓国のCommand Freaksなど、過去にも縁のある作家が多数起用されています。彼らは、TWICE、EXILE、Kis-My-Ft2などにも楽曲提供しているプロフェッショナル。曲の好みや手癖はあるにせよ、一曲ずつに「自分の思い」や「俺だけの印」を詰め込むことはほぼありません。さらには「和の情緒」「誰もが知るあの郷愁」といったものとも無縁ですから、全体にクセがなく風通しがいい。カントリー風、トロピカル風など、曲ごとの雰囲気は違っても、結果的には無国籍ポップスと言うのか、どの国のどんな場所で聴いても気持ちのいい音だと思います。低音重視、音数は少ないのがクールというトレンドと似て非なるKAT-TUNの現在地。全曲で聴ける美しいハーモニーも注目ポイントです。