Official髭男dism、日本武道館で迎えた結成10周年ツアーファイナル 積み重ねた日々が証明するバンドとしての強さ
ライトなファンクチューン「parade」ではファンの3連クラップが演奏を盛り立てる。そして前回ツアーとは全く異なる強い印象を残したのが「Anarchy」の新たなライブアレンジ。クールな印象の楽曲をロックンロール色強めのギターリフでハードさを加え、まるでQueenとファンクバンドが合体したような稀有なダイナミズムを生んでいた。オーディエンスの驚きがビビッドに伝わったようで、藤原はここでトップギアに突入。イントロのギターノイズが景色を一変させ、映像演出がなくてもハードボイルドな「Cry Baby」の世界観が演奏で押し寄せてきた。ステージ上もオーディエンスもギアが上がった状態で演奏された「115万キロのフィルム」は誰もがクラップしながら、自分の人生や生活と重ねながら楽しんでいるように映った。バンドのブレイク後、インディーズ時代の楽曲の中で最も聴かれることになったこの曲の“みんなにとっての歌”感は強い。続く「異端なスター」は藤原の自己分析のような、ある種ヒゲダンのバンド像を表すような曲でもあると思うが、いかにして自分のできなさ、不甲斐なさも認めた上で何も諦めたくないという意志を歌詞にするか? 秀逸すぎて、しかも後半の選曲やMCもあって、思わず涙が溢れてしまった。ポップな曲調でむしろあぶり出される藤原聡という人物の執念深さはポップシーン屈指だと改めて思う。
ホーンセクション渾身のイントロで、心身が開放される「宿命」。生バンドの強さに圧倒されると同時にこの日のセットリストの流れで聴くと、何が起こるか分からないライブという生き物の瞬間瞬間を燃焼してきたプロセスにゾクゾクしてしまった。だからこそ、本編ラストを前に藤原が語った、年明けからのライブのガイドラインが変更されても、このツアーの当初からのルールがあるからこそ、会場に足を運べた人もいることを勘案して、そのルールを最後まで貫いたという信念にも説得力があったのではないだろうか。言うべきことを伝えきったことで、本編ラストの「ミックスナッツ」は演奏することの痛快さが横溢。複雑なランニングベースを笑顔で弾く楢﨑のタフさ、アンサンブルを構成するサポートメンバー一人ひとりの確かな演奏が相まって、凄まじく高いレベルのライブがフィニッシュした。
武道館全体が当初の緊張が遠い昔のように歓喜に溢れ、アンコールを促す中、披露されたのは小笹のフュージョンタッチのフレーズにリアレンジしたイントロからの「Universe」。この時間も感情もシェアしている実感が増幅する。メンバー紹介に続き、サポートメンバーの助っ人も加わり、総勢12名での「Clap Clap」はまさにファイナルならではだ。そしてライブができない時期も、例えば建物に灯る明かりや車のヘッドライトにも「どこかで誰かが自分たちの曲を聴いてくれている」ことを感じていたと藤原が語り、その実感がオフビート気味の「破顔」にリアルな感覚を与えていたのも、この日のハイライトだった。そこで終わるかと思いきや、「音楽でみんなの憂鬱を断ち切っていくバンドでありたい。Official髭男dismでした!」と大声で言い放ち、新曲「ホワイトノイズ」に突入。シンプルな8ビートと旋回するようなギターやホーンアレンジがバンドの新章をすでに告げていた。
■セットリスト
1.Pretender
2.I LOVE...
3.Tell Me Baby
4.Second LINE
5.ビンテージ
6.LADY
7.風船
8.Choral A
9.夕暮れ沿い
10.Subtitle
11.parade
12.Anarchy
13.Cry Baby
14.115万キロのフィルム
15.異端なスター
16.宿命
17.ミックスナッツ
En1.Universe
En2.Clap Clap
En3.破顔
En4.ホワイトノイズ
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