BUMP OF CHICKENという音楽の生命の源にあるもの 歓声の中で躍動したツアー『be there』有明アリーナ公演

BUMP『be there』ツアー有明公演レポ

「声出していいんだってよ。だから聴きに来たぜ、有明!」

 みずみずしいバンドサウンドに乗って藤原基央(Vo/Gt)がそう呼びかけると、観客が熱気を帯びた声で応えていく――。

BUMP OF CHICKEN
藤原基央

 BUMP OF CHICKENの全国アリーナツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there』が、2月11・12日の有明アリーナ公演よりスタートした。コンサート開催におけるガイドラインが緩和されたことに伴い、今回のツアーから、不織布マスクを着用したうえでの声出しが可能に。BUMP OF CHICKENがオーディエンスの歓声や歌声の中で演奏するのは2019年のツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』以来約3年ぶりだ。

BUMP OF CHICKEN
増川弘明

 メンバーを迎えるように客席から歓声が上がったライブのオープニングを振り返り、「感動した」と明かしたのは増川弘明(Gt)。これまでの3年間と目の前のファンを想い、「ずっと我慢してくれて、この場所を守ってくれて、僕らをまた迎えてくれてありがとうございます。今日はめっちゃ楽しもう!」と伝えたのは直井由文(Ba)。アンコールを求める際に歌を歌ったりメンバーの名前を呼んだりできるのも久々で、升秀夫(Dr)は、満面の笑みでステージを下手から上手までダッシュして喜びを表現している。藤原も嬉しそうで、「みんなが静かになるまで12秒かかりました(笑)」という言葉も飛び出した。

 ツアーは5月まで続くが、全国のファンと喜びとともに音楽を分かち合う日々がここから始まっていくのだろう。そのかけがえのない日々の幕開けとなった有明2デイズのうち、本稿では2月12日公演を振り返りたい。一部の演奏曲や演出、MCに言及するため、ご理解のうえ読んでいただければと思う。

BUMP OF CHICKEN
直井由文

 何と言っても今回のツアーは、声出しが解禁されたことが大きい。バンドと観客が互いの“音”をプレゼントしあうことで生まれるコミュニケーションを楽しみながら、そして客席からのシンガロングによって楽曲に新しい命が吹き込まれていく様子に高揚しながら、4人はいきいきと演奏していた。きっとメンバーは、みんなの声が聴けることを楽しみにして準備を重ねてきたのだろう。そう想像したくなる場面があった。特別なアレンジで披露された「天体観測」。この瞬間を心待ちにしていた一人ひとりが思いきり声を出し、特大のシンガロングが生まれた。観客の歌声に、「やっぱりみんなの声が聴けるのはすっげー嬉しいです」と藤原。そして「存分に歌うなり叫ぶなりしてくれ」としつつ、「じっくり黙って聴いてくれたっていい。どんなんだっていいよ。聴いてくれていたらいい。来てくれてありがとう」「君がそこにいてくれるのが嬉しいから。声出してくれるのも嬉しいし、腕上げてくれるのも嬉しい。生きていてくれたら嬉しいです。よろしくな!」と彼らしい言葉を添える。ツアータイトル『be there』にも通ずるメッセージだ。

BUMP OF CHICKEN
升秀夫

 曲が終わる度に客席からテンションの高い歓声が上がる。“名演を目撃してしまった!”という高揚感やメンバーを心から称賛する気持ち、今こうして音楽を届けてくれることに対する感謝など、観客一人ひとりの想いはきっとメンバーにも届いていたことだろう。バンドの演奏は終始熱量が高く、攻めのプレイが目立つ。増川がギターを弾き倒すシーンや、思わず足取りが弾んでしまうような気持ちをプレイにも反映させた直井のベースラインに惹きつけられるが、両翼を担う2人が自由に躍動するほど、シンガーとしての藤原の魅力や、彼のボーカルにぴったりとつける升のドラムの強固さが浮き彫りになる。藤原のボーカルは、曲数を重ねるほどに内側からビリビリと漲り、まるで発光しているようだ。特に心に残ったのは「花の名」。〈いっぱい力をもらったから 声の出る内に返さなきゃ〉と歌詞を替えたのも相まって、BUMP OF CHICKENという音楽の生命の源にあるもの、その片鱗に思いがけず触れてしまったような気がして、震えた。

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