Weezer『SZNZ』シリーズは壮大な最終章へ Queenからエリオット・スミスまで取り込む“混沌としたパワー”
そしてこのたび、冬至の2022年12月21日に合わせて配信リリースされたのが、『SZNZ: Winter』である。クオモは本作を「lots of loss and despair and kind of quiet(多くの喪失と絶望、そしてある種の静けさ)」と表現し「(そういう意味では)エリオット・スミスにスタイル的に似ている」とも述べている(※2)。和声や楽器編成などクラシックの影響を受けつつも、それを「ロック」のイディオムへと落とし込む本作の手法は、確かに晩年のエリオット・スミスに通じるところがあるかもしれない。
曲ごとに検証していこう。『SZNZ: Winter』の冒頭を飾る「I Want A Dog」は、アコースティックギターの弾き語りから始まり、それを優雅なストリングスが優しく包み込む静謐な楽曲。と思いきや、ずっしりとしたリズム隊が途中から加わり、ワーミーを用いたと思しきギターソロが高らかに鳴り響くなど、Queenのロックオペラあたりにも通じる展開だ。続く「Iambic Pentameter」も、テンポやキーの違ういくつかの楽曲をつぎはぎしたチェンバーポップ。そのうちの一節は、クオモが2004年にレコーディングしたデモ音源「You and Me Together」であることに、熱心なファンなら気づくだろう。
エリオット・スミス的なスタイル、というクオモの発言をもっとも象徴する曲は「Sheraton Commander」ではないか。イタリアのバロック時代の作曲家 トマゾ・アルビノーニによる「アダージョ ト短調」の主旋律を大胆に取り込んだこの曲は、例えばエリオット・スミスの「Everything Means Nothing To Me」(2000年のアルバム『Figure 8』収録)あたりと強く共鳴する。
メジャーとマイナーを行き来する入り組んだコード進行や、その上で抑揚たっぷりに歌い上げられるクラシカルなメロディが印象的な「The One That Got Away」を経て、本作の、そして全28曲から成る『SZNZ』シリーズの最後を飾る「The Deep and Dreamless Sleep」は、まるで春夏秋冬を一気に駆け抜けるような壮大かつ疾走感あふれる組曲。アコースティックなセクションからオーケストラポップ、そしてベートーヴェンの「第九」を思わせるような合唱まで飛び出し有終の美を飾る。その混沌としたパワーはまるで、『OK Human』と『Van Weezer』という全く毛色の違うアルバムを丸ごと呑み込んだかのようだ。
丸1年かけて「四季」を表現するという、Weezerによる壮大なプロジェクトはこれにて幕を閉じる。世界規模で広がる気候変動に加え、長引くコロナ禍によって「のっぺりとした季節感のない日常」を送ることを余儀なくされている私たちに、もう一度「季節の移り変わり」を音で追体験させたいーー『SZNZ』には、そんなクオモたちの思いが込められているような気がしてならない。
※1:https://docs.google.com/spreadsheets/d/1BGWLEmZohpOPaLBPe132FMrHvSgyw8PHt8k93AmZ0kQ/htmlview#gid=0
※2:https://consequence.net/2021/02/weezer-new-album-elliott-smith-seasons/
■EP情報
Weezer
EP『SZNZ: Winter』
国内盤CD:¥2,200(税込)
リリース日:2023年2月8日(水)
ダウンロード&ストリーミング
https://weezerjp.lnk.to/winter
<収録曲>
1. I Want A Dog
2. Iambic Pentameter
3. Basketball
4. Sheraton Commander
5. Dark Enough to See the Stars
6. The One That Got Away
7. The Deep and Dreamless Sleep
『SZNZ』ダウンロード&ストリーミング
https://weezerjp.lnk.to/SZNZ