海外主要メディアの年間ベストから2022年ポップミュージックシーンを総括 ビヨンセなど常連作の傾向や、英語圏以外の躍進も

 2022年も終わりに近づき、各メディアが年間ベストを公開している。毎年日本でも多くの音楽ファンが注目している海外音楽メディアの年間ベストアルバムであるが、Pitchfork、NME、Billboard、Rolling Stoneなどの主要メディアのランキングから2022年に話題になったアルバムを紹介したい。

ビヨンセ『RENAISSANCE』

 7月29日にリリースされたビヨンセの7thアルバム『RENAISSANCE』は、多くの主要海外メディアで上位にランクインしており、Pitchfork、Rolling Stone、The Guardian、NPRのリスナー投票で1位を獲得している。それ以外にもNMEで3位、Billboardのスタッフピックでは2位となっており、今年最も音楽メディアに評価されたアルバムと言えるだろう。

 『RENAISSANCE』はダンスやハウスなどのジャンルを取り入れたアルバムであり、「CUFF IT」にはナイル・ロジャース、「ENERGY (feat. BEAM)」にはスクリレックス、「HEATED」にはドレイク、「ALL UP IN YOUR MIND」にはA・G・クックなどのミュージシャン/プロデューサーたちが参加している他、ハニー・ディジョンなどのハウス/ダンスのプロデューサーも参加している。『RENAISSANCE』は3部作であると明かされており、パンデミックの最中にレコーディングが行われたようだ(※1、2)。

 また、『RENAISSANCE』はBillboard 200で1位を獲得し、『第65回グラミー賞』では最優秀アルバム賞と最優秀ダンス/エレクトロニックアルバム賞にノミネートされている。

Beyoncé - ALL UP IN YOUR MIND (Official Lyric Video)

バッド・バニー『Un Verano Sin Ti』

 5月6日にリリースされたプエルトリコ出身のバッド・バニーの4thアルバム『Un Verano Sin Ti』(「あなたのいない夏」という意味)。バッド・バニーはスペイン語の音楽を世界的に広めた功績が讃えられており、2020年と2021年にはSpotifyで年間通して最もストリーミングされたアーティストとなった。歌詞が英語ではないアーティストとしては初であり、今までに2度のグラミー賞、4度のラテン・グラミー賞、さらに今年のApple Music Award「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」も受賞している。

 レゲトンやクンビアを取り入れたポップスを収録した『Un Verano Sin Ti』はBillboard 200で年間1位を獲得しており、第65回グラミー賞にて最優秀アルバム賞にノミネートされている。これはスペイン語のアルバムとしては初の快挙である。Billboardのスタッフピックでは1位、Rolling Stoneでは2位、Pitchforkでは5位に選出されている。

Bad Bunny - Tití Me Preguntó (Video Oficial) | Un Verano Sin Ti

ロザリア『Motomami』

 スペイン・バルセロナ出身のアーティスト、ロザリアの3rdアルバム『Motomami』。2018年にリリースした2ndアルバム『El Mal Querer』ではポップスとヒップホップをフラメンコにミックスしたエクスペリメンタルなサウンドで評価され、2019年にはスペイン語シンガーとして初めて、グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた。

 『Motomami』はレゲトンを取り入れており、Billboard 200にて33位にチャートイン。ザ・ウィークエンドなどのアーティストも参加しており、年間ではRolling Stoneでは4位、Billboardでは5位、Pitchforkでは6位となった。

ROSALÍA - LA FAMA (Official Video) ft. The Weeknd

テイラー・スウィフト『Midnights』

 10月21日にリリースされたテイラー・スウィフトの『Midnights』。リリースから24時間以内にSpotify、Amazon Music、そしてApple Musicのストリーミング記録を更新した作品として大いに話題になったが、Rolling StoneとBillboardで3位、NPRのリスナー投票では2位にランクイン。わずか1週間で158万枚相当のユニットセールスとなり、ハリー・スタイルズが『Harry’s House』で保持していた記録を塗り替え、2022年最大の売上枚数を達成した。

 『Midnights』はBillboard 200にて堂々の1位デビューを果たし、リリース日にはSpotifyの「発売初日で最も再生されたアルバム」という記録を塗り替え、さらに収録曲全13曲が、Spotifyグローバルチャートのトップ13を独占した。ジャック・アントノフをプロデューサーとして迎えた同作であるが、2010年代中盤のテイラー・スウィフト作品を彷彿とさせるシンセポップとなっている。Pitchforkではトップ50にも入らず、メディアによって評価に差があるようにも見受けられる。

Taylor Swift - Anti-Hero

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