PEOPLE 1が射抜く、狂った世の中に立つダークヒーローの本質 『チェンソーマン』と重なる“NOハッピー”な精神性

 しかしもちろん、そうした絶望的な状況の中で、ただ“犬”として従順するだけでは終わらない。その後この曲は、それまで胸の内に沸々と溜め込んできたエネルギーを全て爆発させるように豪快なサビへと向かっていく。激烈に轟くロックサウンドに乗せて、Deuはこう歌う。

〈さあさ/悪名よ馳せて回れ/身を焦がして粉にして街に響け/止まぬ雨のような明けぬ夜のような/うるさいファンファーレで街を襲え〉

 勇壮なメロディに乗せて歌われるサビの言葉は、絶望のどん底から無邪気に突き抜けるような抜けの良いブレイクスルー感を放っている。そしてその言葉が、まるで暴発するようにドライブしていくロックサウンドと重なった時の爆発力は本当に凄まじい。この世界が狂っているのだから、自分もそれと同じように、いやそれ以上に狂わないとやっていられない。そうしたネジがふっ飛んだようなデンジの心境が、この曲から痛いほど伝わってくる。『チェンソーマン』のエンディングテーマという役割を担っている楽曲ではあるが、この曲に、自らの行き場のない想いを重ね合わせたくなる人はきっと多いはず。仄暗く澱んだ時代の空気を豪快に切り裂くような、2022年を代表する痛快なロックチューンの誕生を心から祝福したい。

 また、このサビにおいては、〈悪名〉〈街を襲え〉といった、いわゆる一般的なヒーローものの主題歌には用いられることがないワードが大胆に盛り込まれていて、これぞ、ダークヒーロー『チェンソーマン』のテーマソングにふさわしい。この物語においては、数々の「〇〇の悪魔」が登場して、モチーフとなるものが世の中の人々から恐れられていればいるほど、その悪魔の能力がパワーアップするというルールがある。〈悪名〉を馳せるほど、そして〈街を襲え〉ば襲うほど、自らが人々から恐れられ、それがさらなるパワーアップに繋がっていくという壮絶な展開がこの曲のサビからは浮かんでくる。『チェンソーマン』という特異なヒーローの本質を鋭く射抜いた素晴らしいタイアップソングだ。

 最後に、サビ前の〈僕が僕の心臓を 君にあげるから〉以降の歌詞について触れておきたい。 『チェンソーマン』の物語において“犬”といえば、真っ先ににチェンソーの悪魔であるポチタのことを思い浮かべた人は少なくないと思う。この部分の歌詞は、1話以降しばらく登場していないポチタの心境を想起させる仕上がりになっていて、特に〈もう一度その胸で ぎゅっと抱いて〉という一節にはグッとくる。また、この曲を締め括る〈それを孤独と知ったのは/君のせいだ〉という言葉は様々な解釈ができるが、そこにデンジとポチタの関係性を重ね合わせることもできるはず。改めて、Deuの原作に対する深い愛と理解を感じる。

 12月20日には「DOGLAND」のMVも公開される予定だ。『チェンソーマン』の最新話と合わせてチェックしたい。

※1:https://chainsawman.dog/music/#ed11

PEOPLE 1「DOGLAND」

■リリース情報
PEOPLE 1「DOGLAND」
ダウンロード&ストリーミング:https://people1.lnk.to/DOGLAND

■ライブ情報
『PEOPLE 1 2022 AW TOUR “嘘だらけのPEOPLE 1”』追加公演
12月20日(火)神奈川 KT Zepp Yokohama
OPEN 18:00 / START 開演19:00

PEOPLE 1 OFFICIAL SITE

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