Tokimeki Records、ライブでこそ明かされるノスタルジーの正体 新発見やトキメキに満ちた『透明なガール Release Party』

 この秋、初のオリジナルアルバム『透明なガール』をリリースしたTokimeki Recordsが、11月21日に東京キネマ倶楽部にてライブ『透明なガール Release Party』を開催した。

  “都会の夜の帳を舞台に、ノスタルジックな音楽を届ける”をテーマにした音楽プロジェクトとして活動をスタートさせたTokimeki Recordsは、洋邦問わず80~90年代のカバー曲を中心に発表してきた。その楽曲のチョイスのセンスや、カバー曲へのリスペクトを感じさせながらも大胆かつスタイリッシュなアレンジで、熱心な音楽リスナーの間で注目される存在となった。昨年末からは、オリジナル曲のリリースも開始。古町ミナという架空の人物のイラストをキービジュアルに使い、彼女を主人公にしたTwitter漫画もスタートさせるなど、豊富なアイデアで作り出すイメージと、徹底した“こだわり”が魅力だが、特筆すべきはその“こだわり”の見せ方である。

 この日も開演前の影アナからそれが感じられた。柔らかい声の女性がフレンドリーな口調でグッズなどの情報をアナウンス。最後、Twitterと連動したこの台詞で締め括り、観客のイマジネーションを刺激した。「開演まで今しばらくトキメキを秘めていてくださいね」。

 ライブはアルバム『透明なガール』のオープニングを飾る「Virgin Mojito」でスタート。バンドメンバー5人に続き、ボーカルのひかりが姿を現すと、観客はこれから始まる“この日のノスタルジー”へ期待の拍手を送る。ひかりがスタンドマイクの前で歌い出したのは「You Are Nobody」。アルバム『透明なガール』は、リズムだけに焦点を絞れば、トレンド最先端といえるだろう。ジャスト、もしくはそれより気持ち、前のノリ。しかしアルバムの中で唯一、少しディレイ気味のリズムで聴かせるのが「You Are Nobody」だ。この日演奏された本楽曲は生楽器のグルーヴが非常に艶っぽく、音源よりスウィートソウルやシティソウルを色濃く感じさせるものだったのだが、驚いたのは、ボーカル・ひかりのトーンの切り上げの速さである。ひかりは、ピッチも安定しているし、子音の揺れなどでニュアンスを出すのもとてもうまい。細かい譜割りや、起伏が独特な難しいメロディをしっかり聴かせることもできる。この日はファルセットやアドリブで、バンドのグルーヴを後押しする瞬間もたくさんあった。前述したロングトーンも、もっと伸ばしてソウルフルなアプローチを前面に出す歌い方もできるはずである。しかしながら、彼女がそうしないのは、Tokimeki Recordsが描こうとしている世界観をしっかり理解しているからに他ならない。音源では気がつかなかったライブならではの新発見にトキメいた。

 続くシティポップ「透明なガール」では、バンドのグルーヴが一転。前のめりにならないギリギリのところで刻んでくる、バウンシーなサウンドにのせ、自然に身体を揺らしながらステージを左右に行き来するひかり。「天気雨 -Still love me-」では、ドラムのプレイで「この曲、確かに4つ打ちだ」と、またも音源では気がつかなかった楽曲の側面を発見。そして「小さな嘘 -Callin’ me-」と続いた後、サックスを呼び込み「puzzle」へ。真っ赤に染まるステージ。歌詞の〈体温抑えて数える321〉に合わせ、左手で3、2、1と指でカウントするジェスチャーをしたひかりは、切なげな表情で言葉を紡ぐ。その表情と赤の照明を見ながら 「“小さな嘘”と真っ赤な嘘は、どちらが罪深いんだろう」などと考えてしまっていた。完全にTokimeki Recordsの思うつぼ、だ。曲は後半へ向け、ビックバンドジャズのようなアレンジになっていく。その中でひかりは、歌声でサックスとやりとりするなど、ライブならではのセッションを見せる。一旦ステージを後にしたひかり。バンドはそのままSHAKATAKのカバー「Night Birds」「Invitations」を2曲インストで演奏した。

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