澤口優聖が語る、鮮やかな情緒を表現する“演歌ならではの魅力” 「17LIVE」を通して全国に歌を届ける意義とは?

澤口優聖、演歌ならではの魅力

「たった1行でいろんな感情を表現するのが演歌の凄み」

ーー先日リリースされたオリジナル曲「Real Love (Be Yourself)」(コンピレーションアルバム『MUSIC LIVER COMPILATION ALBUM presented by 17LIVE』収録)にはどんな思いを込めましたか?

澤口:「17LIVE」のイベントで作っていただいた曲で、プロの方と相談しながら作りました。タイトルは直訳すると「本当の愛」なんですけど、僕的にはコロナ禍の応援ソングになればいいかなと思ってて。コロナ禍って俳優さんとかモデルさんとか、そういう表に立つ仕事をしてる人に大打撃だったんですよね。僕も影響を受けた身です。でも、僕はコロナ禍でもライブ配信を頑張ったからこの曲を手に入れることができて、歌手活動も続けられている。歌手になるという道を諦めなかったから、実際にこの歌を歌ってますっていうことを言いたくて。僕みたいに歌手を目指してる人も、世界にはたくさんいると思うんです。そういう人たちが抱いてる夢を諦めないでほしい、というメッセージをこの曲には込めました。

ーー演歌を歌ってきた澤口さんにとって、こういう曲調で歌うことの難しさはなかったですか?

澤口:ありましたね。こぶしとかビブラートとか、演歌独特の歌い方が自然と出ちゃうんですよね。徳永ゆうきさんと一緒で、18年もやってると意識しなくてもこぶしが出ちゃったり、音が変わる時にしゃくっちゃったりするんですよ。そこが一番難しくて。でも、レコーディングの時に(プロデューサーの)Renato Iwaiさんには「演歌の良さも残したらいいんじゃないか」と言っていただいて。こぶしは入れないにしても、できるだけオリジナリティのある歌い方をしました。

ーーそもそもなぜこういう曲調になったのでしょうか?

澤口:「もっと和風にしましょうか」という意見ももちろんあったんです。ただ僕的には、2歳の頃から18年間やって染みついた演歌の要素を生かしたポップスを聴いてほしいなと思ってて。例えばワンフレーズ終わった後に和太鼓の音が入ってたり、単なるポップスじゃなくて、少し和の要素を残したりしてます。なので、この曲を聴いてくれた若い方とかに僕の存在を知ってもらって、「演歌を歌ってる人なんだ」っていう流れになってほしくて。日本の伝統的なカルチャーを大切にしていきたいから、それをJ-POPを通して伝えたいと思ってます。

ーー澤口さんが思う演歌の一番の魅力って何ですか?

澤口:短い文章で多くの感情を伝えられるところですね。世界の音楽の中で演歌が一番、短い文で物凄い量のストーリーとか人間の情緒を伝えることができると思ってて。普通の失恋ソングなら、自分に起きたことを冒頭から一つひとつ説明していくじゃないですか。でも演歌だったら、1行で済むんですよ。いろんな感情を1行で、たった5文字とかで表現してるのが演歌の凄いところで、一番の魅力だと思います。

ーーある種、俳句とか短歌に近いと。

澤口:近いと思います。曲の時間で言うとほんの3分半くらい。でもその3分半の中で人生を語ったりするんですよね。美空ひばりさんの「人生一路」がまさにそうです。だからお年寄りの方とかが「今まで自分の人生はこうだった」とかを深く考えられるんじゃないのかなって。演歌の魅力に気づけていない人はそこなんじゃないかなと思うんです。目先にある失恋の話なのか、これまで生きてきた50年間の話なのか。

ーーなるほど、一つひとつの言葉の重みが違うと。

澤口:そうです。北海道の民謡に「江差追分」という世界一難しいと言われてる歌があるんですけど、文字数にすると30文字くらいなんです。でも30文字で4分くらいかかる。普通なら考えられないですよね。でもめちゃくちゃ名曲で、そういう曲にしかない魅力が演歌にはあると思います。

ーー例えば“海”という歌詞があったら、ただの海ではなく、その裏には壮大なストーリーがあるというようなことですか?

澤口:そういうことです。それを歌い方でも伝えることができて、普通に歌うのと民謡っぽく歌うのとで違ってきたりする。それこそ海で言うと、僕のお父さんが好きだった村木賢吉さんの「おやじの海」という歌があって。その3番に〈空のヨ〜 空のヨ〜/入道雲がヨ〜/どこか似ている おやじの顔に〉というフレーズがあるんです。そこだけ聴くとそのままの意味なんですけど、1番2番を経て聴くと漁師の一家の歌なんだと分かって、両親を亡くしたんだなとか、船の上で見た雲だとか、いろんなことが見えてくる。

ーー背景がしっかりあると。

澤口:その後は〈つらい時には入道雲を/じっとにらんで おやじの苦労/想い出しては たえて行く〉と続きます。接続詞とかがなくて文章としては不完全かもしれないけど、辛い時には入道雲を見て父を思い出して頑張ろうという、すごく素敵な歌なんですよね。こういう素晴らしいストーリーがギュッと短いフレーズに詰め込まれてる。演歌が好きな人は、それを見て解読したりとかするんです。

ーー歌詞を読んで想像するのが楽しくなりそうですね。

澤口:そうなんです。例えば山内さんの2001年発売のデビュー曲「霧情」でも、最初の〈黒髪指(ゆび)に 巻きつけて/霧の波止場を さまよえば〉の2行で一気に情景がふわっと浮かぶわけですよ。黒髪を指に巻きつけるということは、男性じゃなくて女性の歌なんだとか。僕の解釈だと、人口も少ないような離島でできた恋愛の話なのかなって思ったりしてます。彼が船で去ってしまったけど、その後にちゃんと考えたら私も悪い点があったかもしれないと思い直して、波止場まで行ってみるけど船はもういない、みたいな。そういう風に短くてもちゃんと掘り下げれば1番だけでもこれだけのストーリーが詰め込まれてるんです。

ーーあえて説明を省くことで、想像の余白を生んでいるとも言えそうですね。

澤口:そうです、そうです。それで2番を聴いていくとその詳細が分かってきて、3番を聴くとさらにその細かい部分が明らかになっていく。曲を聴けば聴くほど世界が見えてくるっていうのが、演歌の面白いところの一つなのかなと思います。

ーーお話を聞いて演歌のイメージが変わった気がしました。それでは最後に、今後の目標を教えてください。

澤口:山内さんを越える存在になりたいです。それと人生の最終目標が『NHK紅白歌合戦』に出ること。演歌と言えば『紅白』だと思ってるので、僕は『紅白』に出るまで絶対に諦めないし、欲を言えば世界で活躍できる演歌歌手になりたい。演歌の魅力とか日本のカルチャーを、日本だけでなく世界に伝えられる歌手になりたいと思ってます。

『MUSIC LIVER COMPILATION ALBUM presented by 17LIVE』

■リリース情報
『MUSIC LIVER COMPILATION ALBUM presented by 17LIVE』
発売日:2022年11月30日(水)
価格(税込):2,000円
発売元・販売元 :PCI MUSIC
<収録曲>
1.Real Love (Be Yourself) / 澤口優聖
2.BillyBone / 鈴木龍二(fr. S.Dragon-Er)
3.アドバーシティ / 中野正英
4.その一歩 / Yuuki
5.ミッションベイビー / 沖野惇(GENSEKI)
6.たねの話 / はたなかみどり
7.ひかり / 星野希望
8.揺るぎない花 / AOI
9.Mr.Evergreen / marimani
10."AI" / MASUNARI

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