Skoop On Somebody、25周年の足跡刻んだアルバム『1997』 KO-HEY復帰ライブの裏側から合宿での制作秘話まで
25年間変わらない3人のこだわり
――今作はラブソングもあれば、人生を歌っていたり、コロナ禍であるからこそ胸に響く、メッセージ性のある楽曲もたくさん収録されています。「青空」は、今の時代に対するメッセージを感じました。
KO-ICHIRO:これは合宿の時にできた曲です。3人でまた集まって何を奏でようかという時、やっぱり喜びにあふれているものがいいなと思いました。力強い曲調で歌い上げる感じにしたいと思って作って、仮タイトルは「雨のち晴れ」だったんです。でも作詞の小林夏海さんがさすがで、サクッと「青空」という一言に置き換えてくれて。
TAKE:僕らは説明くさくて「雨があって、だから晴れがあるんだよ」って。でも小林さんは「それって青空ですよね」って、ズバッと(笑)。
KO-ICHIRO:小林さんとも結構やりとりをさせていただいて。小林さん自ら歌を入れて、譜割りを提案してくれたこともありました。レコーディングスタジオにも来てくださって、その場でもいろいろ試して録っていきました。
TAKE:今作はツアー中でもあったので、ほとんどの曲の仮歌を2人が歌ってくれたんです。「青空」も仮歌はKO-ICHIROなんですけど、思い入れたっぷりの歌声で。そういう下敷きがあったからこそ、僕はより歌い手に徹することができたし、迷うことなく歌えることができた。これは今回のアルバムの一つの特徴かもしれないですね。
――元の日常に戻りつつある、今だからこそ響くものがある。
TAKE:「大切なものは何か、みんなはもう分かったはずだよね?」って問いかけている。さすが小林夏海さんで、作詞家として本当に尊敬します。
――その「青空」に続く「Donʼt worry it doesnʼt matter」は、コロナ禍を経た未来へのメッセージを感じさせます。サウンド的には、80年代のバンド・TOTOを彷彿としました。
KO-HEY:TOTOはリアルタイムで通ってきたバンドだし、いわゆるAORを含めた、ブラックミュージックから多大なる影響を受けた音楽は、僕も大好きです。今回は奇しくも全曲生ドラムだし、3人で演奏するとなるとこのあたりの音が、すごく演奏しがいがあっていいんですよ。複雑な譜割ですけど、ハマるとめちゃめちゃ気持ちいいです。
――アルバムは基本的にソウルやR&B、ブラックミュージックだけど、AORやフュージョン、シティポップなど、爽やかな空気感が散りばめられていると思いました。
TAKE:そういうサウンドは、ほとんどKO-HEYからのアイデアです。「1曲1曲は濃いけど、曲順も含めて意外とカジュアルに聴けちゃいますよ」といった、サブスク世代への挑戦のアルバムでもありました。アルバムとして通して楽しんでもらうことを、僕らが諦めたら終わってしまうので、全体のサウンド感や曲順もこだわりました。
KO-HEY:だからこの曲も最初はギターソロがなかったんですけど、最近の流行であるオチまでが短かったり楽器のソロがなかったりする曲のような、目まぐるしさって必要なのかな? と思って。それで全体的にもうちょっと音楽として楽しんでほしいみたいな思いで、ギターやサックスなどきっちりソロを入れました。
――アナログ盤のブームがきていますし、今作も25年後に聴いたとしても、色褪せることなく、その空間にフィットして聴いてもらえるのではないかと思います。
TAKE:そうなることが3人共通のこだわりで、それだけは25年間変わりません。だから同発で、1stアルバム『SKOOP』がアナログ盤で再発されます。歌詞にポケベルが出てきたり、時代を感じさせるワードがたくさんあるけど、そこも含めて楽しんでほしいですね。
KO-HEY:変に「若者は」って言っちゃったり、そういう世代を隔てるような感覚は、持っていちゃいけないですね。だからと言って寄り添うわけでもなく、突っぱねるでもなく、身の丈にあった状態でいれば、格好いいと思ってくれる人はくれるだろうし。「何それ?」と思ったことは調べてエモいと思ってくれたら、それはそれでいいし。
TAKE:ただ、人が喜ぶことや喜ばないことは、ずっと変わっていません。世代とかはあまり気にしていないけど、80年代や70年代をリアルタイムで通ってこられたことは、僕たちにとっては武器だと思っています。そういうことはKO-HEYもアレンジャーとして意識していて、ソウルってこういうもの、シティポップはこう、AORはこうだよって、それをおもちゃ箱のように散りばめた、聴く人が楽しいアルバムになったと思います。
――表題曲「1997」は、S.O.S.の25年が詰まっています。作詞は松尾潔さんで、歌詞が〈静かな旅のはじまりだった 誰も僕らに気づかなかった〉で始まります。
TAKE:実際、静かでしたよ(笑)。デビュー曲を出した時は、すぐ高級外車が買えると思っていたのに。
KO-ICHIRO:当時は新聞にもオリコンチャートのトップ10が載っていて、僕らの名前が絶対載っていると思っていましたからね。
TAKE:でも、当時はひな形がなかった音楽をやろうとしてわけですから、静かなのは当然です。そこから3枚アルバムを作ったんですけど、それでもまだ静かでした(笑)。Skoop On Somebodyに改名して、いろんな作家さんと組んだりして世間を知っていくうちに、徐々に静かじゃなくなってきたんだけど、静かだった頃の最初の3枚のアルバムは、今でも自分たちの宝物になっています。あんなに生意気だった若造に好きなことをさせてくれて、いきなりロサンゼルスにあるBabyfaceのスタジオでミックスさせてもらえたり、当時のスタッフには本当に感謝しています。
KO-ICHIRO:作詞をしてくださった松尾潔さんは、デビュー当時からのお付き合いで、同じブラックミュージックラバーとして情報交換をさせていただいて、お友だちの時期を経て、2001年から作詞家として一緒にお仕事をするようになりました。僕らと共に歩んで来てくれた人なので、ずっと僕らのことを見続けてきてくれて、その上で僕らの未来のことも見据えて作詞をしてくださっています。
TAKE:松尾さんは同志のような存在です。
――〈歌い続けよう〉というのが、すごく力強くて頼もしいです。
TAKE:歌い続けるのは当たり前だから、それをわざわざ歌うのはどうなのかなと最初は思いました。でも、今3人で改めて〈歌い続けよう〉と歌うことの意味が、レコーディングしながら分かりました。今だからこそ、聴く人が「まだこの人たちは〈歌い続けよう〉と言っているのか」と思った先で、その人たちが何を考えるか、そこまで考えた歌詞です。KO-HEYがREJOINしてからの第三章で改めて気づけたことを、もう一回歌い始めないといけないという、決意の曲でもあります。
――サウンド的にはいろいろな楽器が入っていますが、KO-ICHIROさんのピアノとKO-HEYさんのドラムの音が強調されていて、そこにTAKEさんのボーカルが加わり、“3人感”がすごくあると思いました。そこは意識されたのですか?
KO-ICHIRO:そこはまさしくです。派手なブラスが入っているなどの彩りはありますけど、コーラスもそうですし、3人感がしっかり出ています。
――最後の「Save Our Smiles」は、KO-HEYさんのドラムなど派手なサウンドを聴かせていますね。
KO-ICHIRO:これはシンガーもバンドメンバーも、いつもライブでサポートしてくれている仲間たちと全員集まって「せーの」で録ったんです。63本のライブツアーを経て最後に作って、最後に録音した曲です。
――ガヤやコーラスも満載で、ライブステージの雰囲気がそのまま封じ込められています。
KO-ICHIRO:ここ2年はみんなで「せーの」で録音することなんてなかったから、それができるというだけで“勝ったも同然”みたいな気持ちでした(笑)。
TAKE:「ぼくが地球を救う〜Sounds Of Spirit〜」という曲があって、当時は〈地球を救う〉と迷いなく言えたのに、今はどこか迷いがあって。じゃあ救うためにはどうすればいいか? 「みんなが笑顔になれば地球も喜ぶ」じゃないか。そんな禅問答のような自問自答から生まれた歌詞とタイトルです。もう本当に、曲名に込めたメッセージが全てというシンプルな曲です。
――これが最後に収録されているのがいいですね。
TAKE:ミュージカルで言うところのエピローグです。劇中で亡くなった人もここでは生き返って、敵も味方も、みんながステージに並んで喝采を浴びているようなイメージです。
KO-HEY:笑顔は“敵”を作りませんから。
TAKE:マーヴィン・ゲイの「What's Going On」を単純に格好いいと思っていたら、実はベトナム戦争の悲しみを歌ったものだったことを知った時から、僕らの使命としてそういうものもあると思っています。直接誰かを傷つけたり否定するメッセージは歌いたくないけど、みんなが笑顔になれるメッセージならどんどん歌っていきたいです。
――12月は恒例のクリスマスツアー『25th anniversary LIVE Vol.3〜Christmas Live Tour 2022〜』を開催します。
KO-HEY:僕がいない間も毎年クリスマスの時期に必ず行われていたツアーで、風物詩的なものというか、「その時期にしか味わえないものを味わわない手はないでしょ!」って(笑)。こういう時くらいは、みんなで集まって素敵な時間を過ごしてほしいし、僕も久しぶりなので楽しみでしかありません。
TAKE:最近はおかげさまで初めてS.O.S.のライブに来てくれる人も増えているので、25年ずっと応援してきてくれたコアファンも楽しめることを念頭に置きつつ、新しい人たちも楽しめるものを考えています。アルバムからも少し新曲を披露させていただきます。
KO-ICHIRO:現地で一般の方からシンガーを募集して、その人たちにステージに上がってもらって一緒に歌う企画もあります。僕らの曲や参加してくれるシンガーたちを通じて、僕らのパワーがどんどん広がっていったらいいなと思います。残念ながら客席ではまだ歌ってもらえないので、そのぶん僕らがステージからメッセージを届けたい、そんな思いであふれています。
――では最後に、それぞれどんな25年でしたか?
KO-ICHIRO:四半世紀と言いますが、振り返ればほんの一瞬で、積み重ねてきたものはたくさんあります。25年自分たちが踏みしめてきた足跡を見つめ直しつつ、また新たな一歩が踏めるように。おかげさまで今年はすごく忙しくさせていただき、刺激やエネルギーをいっぱいもらいました。それを来年以降の活動に繫いでいけるように、放電しつつ充電もして、さらに高められたらいいなと思います。
KO-HEY:デビュー当時に25周年を迎えた先輩方はどれだけ大ベテランなのかと思っていたけれど、いざ自分たちが25周年を迎えてみると、まだ分からないことだらけで、きっとこれからも100点を目指して100点が取れないという日々を送っていくんだろうなと思います。そして、25周年はやっぱり通過点だなと思います。まだまだやりたいことがあるし、伝えたいこともある。3人でやっていけることの喜びを嚙みしめながら、それを追いかけていきたいです。
TAKE:僕らの仕事は、必要とされなくなったら終わってしまう。だから必要とされるように、関わってくれる人が笑顔になってくれることが最低条件。それには僕らが心から音楽を楽しめていないと叶わないし、それがいずれたくさんの人と出会えるきっかけになると思っています。今言えるのは、そのことだけです。誰かの心を動かして、何かを感じてもらえるのであれば、そこに3人で向かっていくだけのこと。過去でも未来でもなく、今しか見ていません!
■リリース情報
Skoop On SomebodyオリジナルNew Album 『1997』
完全生産限定盤(CD+2BD)
¥13,200(税込)
「1997」の予約はこちら
<収録曲>
1.LOVIN’ YOU
2.SUPER SHINING
3.GOOD TIME
4.恋の炎
5.Good Night Babe
6.ORGEL
7.青空
8.Don’t worry it doesn’t matter
9.SUMMER ESCAPE~夏の思い出~
10.Hooray Hooray
11.1997
12. Save Our Smiles
BD-1
・Skoop On Somebody「25th anniversary LIVE Vol.1〜REJOIN〜」ライブ映像+副音声
・Skoop On Somebody「25th anniversary LIVE Vol.1〜REJOIN〜」Backstageドキュメント
BD-2
・Skoop On Somebody 「Special Live Session 2022」
・Skoop On Somebody「25 th anniversary LIVE Vol.2~club SOS~」Tourドキュメント
※全映像パッケージ初収録
封入特典
・Photobook
・「魔法のじゅうたん柄」バンダナ封入
・BOX仕様