KALMA、真っ直ぐなサウンドで歌う周囲への愛 ロックバンドとしての原点と熱量が込められた“転機の1作”を語る

KALMA、転機の1作を語る

「“愛してる”って今なら言えちゃいそうなぐらい、実感した」

ーーだから、まさに最初に話してくれたライブにおけるお客さんとの関係性とか、そういったものとも通じる部分がありますよね。それを乗り越えて「好きだ」って言えるようになっていく、その強くなる過程も描かれている感じがしますし。

畑山:そうですね。好きだからこそこう思っちゃうんだっていう歌なのかもしれないです。

ーーその「優しい嘘」も含めて、このミニアルバムのテーマをひとつ挙げるとしたら「愛」だなって思うんですよ。

畑山:めちゃくちゃ、愛ですね。ライブでのキャッチボールという部分でもそうだけど、自分は「愛してる」ってライブで絶対言えないんですよね。だけど今回歌詞を書いてるときに初めて、いろいろなことに対して「愛してるな」って思うことがあって。もともと「愛してる」って思っていても言えなかったけど、今なら言えちゃいそうなぐらいそれを実感したというか。「ペーパーバック」にも出てくるけど、「愛」っていうワードがすごくいいなって思いました。

金田:今言われて「確かに」って思いました。街とか歌とか、いろいろなものを愛している曲が多いなって。

KALMAインタビュー(写真=小杉歩)

ーーいろいろなものに愛を向けていますよね、今回。「24/7」も自分自身に愛を向ける感じの曲だし、「マイシティ」はそれこそ自分が育ってきた街に対しての愛情表現だし。これもいい曲ですけど、なぜ今改めて地元のことを書いたんですか?

畑山:これはもういろんな場所で言ってるんですけど、来年上京する予定なんですよ。だから、札幌を離れる前に札幌の歌を書きたかった。ただそれだけですね。東京に来てから札幌のことを思い返して歌うのもいいんですけど、まずは自分の街の歌を歌わなきゃダメじゃんって思ったから。かといって別に札幌でしか歌えないわけじゃなくて、結構壮大な曲になったから、10年、20年やっていくうちに進化していきそうだし。ずっと残っていく歌だろうな、名曲だなって思いましたね。

ーー上京したら歌うことももしかしたら変わるかもしれないし、今のうちに刻みつけておきたいということだったのかもしれないですね。

畑山:それこそ上京したら「東京」っていう曲ももしかしたらできるかもしれないし。

ーー「東京」、1回は作るんじゃないですか。

畑山:でも、僕は30歳になるまで「東京」は書かないつもりなんで。みんな早く書きすぎなんですよ(笑)。これはディスってるわけじゃなくて、最近は若いバンドでも「東京」っていう曲が多いと思ってて。いい曲だったら嫌だから、悔しくて聴けてないんですけど(笑)。もちろんいい曲だから出してるんだろうけど、でももっと「東京」してから「東京」を作ってもいいのかなって。来年上京して「この街は人が多い」とか思うことは絶対あるけど、それを歌にしようとは思わない。何年も住んで、30歳になってアリーナとかでライブをやれていたときに、急に「東京」っていう曲を出したらめちゃくちゃ痺れるじゃないですか。「今か!」みたいな。

ーーなるほど。東京がちゃんと「マイシティ」になってから書きたいということですね。

畑山:そうです。それこそ「マイシティ2」になれるくらいになってからじゃないと作りたくない。とかいって来年あっさり出したらウケる。そうしたら僕のこと殴ってください(笑)。

ーー(笑)。でもそういうふうにちゃんと対象に愛情や愛着を持つっていうことが、曲を書く上でも大事なんですよね、きっと。それを象徴しているのが最後に入っている「ポシビリティー」だと思うんですが。

畑山:この曲はアルバムができ上がってきたときにたまたま竜也とLINEしていて、「この曲どう? 俺は全然よくないと思うんだけど」って送ったんですよ。そしたら「めっちゃいいじゃん、なんでもっと早く言わないの?」って言われて(笑)。

ーー金田さんは受け取ったときにどう感じましたか?

金田:このアルバムの最後のピースが揃った感じがしましたね。なんでこれよくないって思ったんだろうって疑問でした(笑)。弾き語りの状態から一瞬でドラムも思いついたし。

斉藤:KALMAのお客さんは絶対大好きだと思うし、ベースも弾いていてめちゃめちゃ楽しいんです。こういうのは得意分野なのですぐできたし、レコーディングも早かった。

畑山:そう。曲の短さもあるけど、テイクも少なかったよね。

斉藤:本当にライブして終わってできたみたいな。一番それを感じたのがこの曲ですね。

KALMAインタビュー(写真=小杉歩)

ーーうん。アナログレコーディングにおける生感、ライブ感みたいなものがすごくはっきり出ている曲ですよね。「これがKALMAです」っていう、名刺みたいな曲が生まれたなと。テーマもバンドだったり音楽だったりを歌っているし。

畑山:この歌詞はライブのことをイメージしながら書いていったんです。ライブのときって、その瞬間のことは歌わないじゃないですか。家で1人で、当時の好きな人とか誰か想っている人がいたりして作るけど、これに関してはもうライブそのもの。ライブでみんなに対して歌いたいと思って書きました。〈僕らの愛をあげるから あなたの愛をもらうから〉って、ライブの日の夢みたいな夜のことを歌いたかったんです。ライブに来てくれるありがたみも表現したかったし、SNSにはない気持ちを伝えたかったし、いまだに僕はCDの中の音楽に恋をしてるし。

ーーすごくピュアですよね、10代のバンド始めたての子が叫ぶようなことを今改めて歌っているような。今回この曲に限らず、「隣」とか「ペーパーバック」もそうだけど、歌とか音楽に対する思いみたいなものがすごく出てますよね。

畑山:はい、それは1回離れたところでもあったんですよ。前作のときはいい歌詞を書こう、いい曲を書こうっていうのが大きすぎて、歌詞もちょっと変化していた。でも今回のほうが僕的には変化も進化もしていて。高校生のときみたいな気持ちで歌うけど、歌っている内容は全然違うから。進化してるけど軸はずっと変わってないみたいなところが出せたかなって。それがちょっと前まではずれちゃって、小説になるようないいフレーズを書こうと思ってたんです。でもそうじゃないなって。

ーー本当にその通りですよね。一番自分の中にある核の部分っていうのを、今の自分の言葉にして改めて歌っていくっていう。

畑山:だから昔からKALMAを聴いてくれている人にも響くと思うし、例えば「わがまま」がTikTokでバズったのも嬉しかったけど、「隣」とか、本当に歌いたいこととかライブで毎回やってるような曲がバズってくれたりしたらもっと嬉しい。まあバズらなくても全然いいんですけど、こういうアルバムが広まってくれたらめちゃくちゃ夢があるなって思います。

『NO BORDER』ジャケット
『NO BORDER』

■リリース情報
KALMA
3rdミニアルバム『NO BORDER』
2022年11月9日(水)発売
¥2,200(税込)
<収録曲>
1. DEBAYASHI ROCK
2. 隣
3. ボーダー
4. 24/7
5. 優しい嘘
6. ペーパーバック
7. マイシティ
8. ポシビリティー

■ツアー情報
『KALMA NO BORDER one man tour 2023』
2月11日(土祝) 北海道・PENNY LANE 24 開場17:15/開演18:00
問い合わせ:マウントアライブ 050-3504-8700(平日 11:00-18:00)
2月16日(木) 大阪・umeda TRAD 開場18:15/開演19:00
問い合わせ:清水音泉 06-6357-3666(火‧金 12:00~16:00)
2月18日(土) 福岡・BEAT STATION 開場17:15/開演18:00
問い合わせ:キョードー西日本 0570-09-2424(11:00〜17:00(日祝以外))
2月25日(土) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO 開場17:15/開演18:00
問い合わせ:ジェイルハウス 052-936-6041(平日 11:00~15:00)
3月4日(土) 東京・WWW X 開場17:15/開演18:00
問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日 12:00~15:00)
チケット詳細:前売 3,500円(税込) [受付期間] 11/8(火) 12:00~11/16(水)23:59
※オールスタンディング / 整理番号付き/ 未就学児入場不可 / 全会場ドリンク代別途必要

KALMA 公式サイト

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