Hakubi、初のホール公演で放ったライブハウスと変わらぬ輝き 会場全体が“光”で包まれた場面も
片桐(Vo/Gt)、マツイユウキ(Dr)、ヤスカワアル(Ba)による京都発スリーピースバンド・Hakubiが11月3日、ワンマンライブ『Noise From Here - HALL edition』を恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催した。この日はHakubiにとって初となるホールでの公演。ホールならではの演出もあり、Hakubiが新たな一面を見せた一日となった。
1曲目は「悲しいほどに毎日は」で開演。片桐が一言ずつじっくりと確かめるように歌っていくと、徐々にリズム隊の2人も歩調を合わせて歩み寄る。その3人を支えるようにして客席からは自然と手拍子が起きた。そこから「Twilight」「夢の続き」「どこにも行けない僕たちは」と立て続けに披露。すでに会場には一体感が生まれていた。
ライブハウスで育ったHakubiは、楽曲の聴かせ方を熟知している。何より曲の始め方が上手い。緩急をつけたり、トークから流れるように演奏に移ったり、掻き鳴らしていた轟音をすっと引いて一言だけタイトルを囁いたりして、イントロから聴衆を惹き付ける技を持っている。特に疾走感のある曲が続く場合、曲が進むに連れてスピードが加速していくような独特の感覚があるのだ。
ここで街の雑踏の音が会場に流れる。そしてそのまま「在る日々」へ。片桐の歌声が熱を帯びていく。歌い終えると片桐はこう言った。
「この目まぐるしい世界の中で、こうやって私たちに出会って、ここに辿り着いてくれて嬉しいです。私たちからありったけの思いを伝えさせていただきます」
流れるようにして「Friday」へ突入。ゆったりとしたリズムで進行するこの曲は、生き方についての不安や迷いが歌われている。続いて披露したのはHakubiが初めてラブソングをテーマにして作った「あいたがい」。前半のこの2曲に、感情に任せて歌うだけではない今のHakubiが象徴されている気がした。
何より印象的だったのは次の演出だ。ステージが薄く白い幕で覆われ、その幕全体に映像が流された。淡い色彩による抽象的なグラフィックだが、ここで歌った「32等星の夜」の世界と完全に融合している。次の「サーチライト」では小説のような文字列が、ゆっくりとスクロールしていったり、逆再生されたりして曲の世界観を彩った。孤独感のある歌詞も相まって詩的な雰囲気が会場に漂った。これこそホールならではの演出だ。
紗幕の演出が終わると、次は「薄藍」と「アカツキ」へ。再び片桐によるギターの轟音が会場全体を覆い尽くすと、それに呼応するようにしてマツイのドラム、ヤスカワのベースが鳴り響いた。3ピースながらもサウンドに厚みがあり、疾走感のなかにも重厚さがある。さらにここで“よっしー”こと善岡慧一をピアノに迎え、4人編成へと変化。さらに厚みの増した豪華な特別編成で「栞」と「22」を披露した。
Hakubiというバンドは、暗さや闇のなかにもどこか“光”を歌っているように思う。曲のタイトルも星や天体を彷彿とさせるような光をモチーフとしたものが多い。しかし単に明るいだけでなく、陰がベースにあるからこそ、その光はより一層輝いているように感じるのだ。ここでのピアノの繊細な音色は、そうしたHakubiの世界観の楽曲に唯一足りなかったピースがぴたりとハマったような感覚があった。