Ryohu、ジャンルを越境する自由自在な挑戦 アーティスト遍歴を織り込んだ「Thank You」は新たな代表曲に
2020年、メジャー1stアルバムとなった『DEBUT』で、Ryohuは冨田ラボやstarRoといったプロデューサーと組み、リリック面では歩んできた人生を彩ってきた喜びや軌跡を丁寧に綴っていき、まるでこれまでのキャリアを総括しつつ、新たな扉を開いていくような“門出”を強調した作品のように見受けられた。そして『DEBUT』から2年、『Circus』と題されたRyohuの2ndアルバムからは、前作で構築した彼の姿とはまた異なるRyohu像が見える。
まず目を引くのは、ゲストメンバーの多彩さだろう。リード楽曲「One Way」にフィーチャリング参加したYONCE(Suchmos)や、いわずと知れたKANDYTOWNを率いる存在のIO、旧知の仲でもあるオカモトショウ(OKAMOTO’S)、『DEBUT』のみならず、これまでに互いの楽曲への客演を経てきたAAAMYYY、しなやかな表現力をもつ佐藤千亜妃や次世代ヒップホップアーティストとして注目を集めるJeter(Peterparker69)、さらには抜群の音楽的センスを誇るマルチプレイヤーのTENDREと、個性的なアーティストが集結した。サウンドを手がけるのも、前作に続く冨田ラボのほか、Giorgio Blaise Givvn、Neetz (KANDYTOWN)、Shin Sakiura、Yohji Igarashi……と、予想もつかない化学反応を期待させるトラックメイカーたちが名を連ねる。
一つ感嘆したことは、これらのゲスト(総勢14組!)を束ね上げ、新たな“Ryohuサウンド”を作り出したという彼のスキルと胆力についてだ。前作の『DEBUT』には、客演アーティストを招いておらず、アルバムを通してマイクを握っているのはRyohu一人だった。その事実を踏まえると、今回の参加ミュージシャンの配置に関してはどこまでも意図的なのだろうと感じる。
Ryohuといえば、インディーズ時代に発表してきた『Blur』(2017年)や『Ten Twenty』(2018年)でも音楽的センスを遺憾なく発揮し、ラップやヒップホップというカテゴリに捉われない世界観を作り上げてきた。また、KANDYTOWNとしてアルバムをリリースするごとに、クルーのビートメイカー/プロデューサー・Neetzと並んで、Ryohuがプロデュースした楽曲が必ず収録されているし、メンバーのソロ作にプロデューサーとして関わることもある。かつ、音楽活動を始めた当初から常にさまざまなコラボへも意欲的であり、Base Ball Bearやペトロールズ、そしてSuchmosらと共演してきた腕とセンスの持ち主。そもそもRyohuが10代の時に、KANDYTOWN結成の核にもなったYUSHI(草刈雄士/2015年に逝去)やOKAMOTO'Sのメンバーらと共に組んでいたバンド・ズットズレテルズこそ、ファンクをベースにしたエクレクティックなサウンドで注目を集めた伝説的バンドであった。常に音楽家として、ラッパーとして確固たる挑戦を続けてきたRyohuだが、これまでの経歴を踏まえると、今回の『Circus』で表現されている内容は、意外でもなんでもなく、アーティスト・Ryohuが歩んできた軌跡の一線上に位置する作品であるという印象を受ける。