Newspeak、メジャーで挑戦する未踏の地 バンドの信念とロックが再び多くの人に届く未来

自分たちが見て、聴いている世界から、ロックはなくなっていない

――改めて、Newspeakの結成のいきさつを聞いていいですか。

Rei:もともと同じ界隈にいたバンドの知り合いで、2013年頃からStevenとは対バンとかしていて。僕はその後イギリスのリバプールに渡って、リバプールでも音楽をやっていた時期があったんですけど、日本に帰ってきたら、Stevenが隣駅に住んでいたんですよね。その頃、Yoheyがボーカルのバンドで「キーボードを弾いてくれないか」と言われ、 Stevenからも「俺がボーカルをやるバンドでキーボードを弾いてくれないか」と言われた(笑)。でも、2人のバンドは一向に始まらなくて。そうこうしている間に、元メンバーであるギターのRyoyaがライブに来て「Reiくん一緒にやろうよ」と言ってくれたので。

Rei

Yohey:ちなみにRyoyaは僕のところにもきて同じことを言っていた(笑)。

Rei:それで、君たちのバンドが始まらないんだったら、僕がボーカルをやると言いました。

Steven:じゃあ俺もドラムでもいいかって(笑)。

――それぞれの音楽的なバックグラウンドを具体的に聞かせてください。

Steven:僕はパンクロックが一番好きだったかな。Blink-182、The Offspring、New Found Gloryとか。

――エモ系?

Steven:うん、エモね。ちょっとだけ。ダークな、病んでいる音はあまり好きじゃなかった。Blinkがちょうどよかったかな。ふざけたい! という感じがあって。若い頃はずっとそういうのを聴いていた。

――2000年代の半ばあたりですよね。

Steven:そうそう。そういうルーツかな。

Rei:僕は親が聴いていたThe Beatlesやスピッツ、エンヤとか、そういうのを自分もふわっと聴きながら、同年代の子と同じような音楽を聴いていたんです。でも自分もバンドをやりたいとなった時に衝撃を受けたのが、サッカー部の先輩がカバーしていたArctic MonkeysやThe Strokesで。Newspeakというバンドをやる中で、一番のルーツと言えるのがあの辺のガレージロックリバイバルです。そこから2010年代のシンセポップとかも自然な流れで聴いていってという感じですね。リバプールでもバンドをやっていて、The Killersとかカバーしていました。

――The Killersはちょうど2人のバックグラウンドに重なるバンドですよね。

Rei:そうですね。

Steven:3人全員がこれは本当にいいなと思うバンドは少ないけど、The Killersはそうだね。

Rei:1回、StevenとThe Killersの武道館ライブを一緒に見に行ったのですが、彼は横でずっと歌うんですよ。めっちゃ大声で。しかも主メロならまだしも、ずっとハモってるっていう(笑)。俺はブランドン(・フラワーズ)の歌が聴きたいのに、うるせぇなってなった(笑)。

Steven:周りはメロディを歌っているから、プロデューサーマインドで「じゃあ俺はハーモニ入れよう」と(笑)。

――(笑)。Yoheyさんも教えてください。

Yohey:最初に衝撃を受けたのは、Rancidなんですよ。そこからその当時、スペシャとかMTVで流れていた音楽に徐々に影響を受けて。いろいろなところを通っているので、一概にこれというのがちょっと言いづらいんですよね。レアグルーヴ系のソウルとかR&Bも通っています。今のベースのスタイルでかなり影響を受けているのは、Yesのクリス・スクワイアとか、Tower of Powerとか。うん、でもやっぱりThe Killersの影響はありますね。

――そういう3人が集まってバンドをやるとなった際に、Newspeakの方向性をどのように固めていったのでしょうか。

Steven:そこはあえて固めないほうが良いって話をしたことを覚えてる。スタジオに入って、Reiがいくつかデモ曲を持ってきた時も、ジャンルをどうしようかという話は1回もしなかったね。

Steven

――それはすごく、ジャンルが解体されていった時代だった2010年代っぽい感覚ですよね。

Rei:そうですね。僕もイギリスで様々なバックグラウンドを持った人と一緒に音楽をやっていて、制限がないのがすごくいいなと思った。このバンドも自分たちの感覚にあまり固執しすぎずに作っていくのがいいのかなと思っています。

――そんなNewspeakの、日本のロックシーンにおける立ち位置はどう考えていますか。

Rei:対バンの時などに、どういうバンドと一緒にやったらいいか考えたりするけど、なかなかはっきり答えが出てこないというのは結構ありますね。

Yohey:自分たちのいるシーンというか、界隈がよくわからないですよね。仲が良いから一緒にやりたいというバンドはもちろんいますが、やっぱりここまでストレートにシンセポップな要素と、ロックを一緒にやっていますっていう人たちがあまりいない。

Rei:どこかに属そうとするとすごくポップか、めちゃくちゃロックかのどちらかになる。でもどちらもやるっていう自分たちのスタンスはあまり変えたくないです。メインストリームに僕たちのような音楽をやっている先輩がいないのであれば、自分たちがやるしかない。メインストリームというか、多くの人たちに届く音楽、それこそビーチにいる色々な人達にも聴いてもらえる音楽を作るというのが、自分の中でゴールですよね。

――Newspeakはサウンドプロダクション的にすごくユニークで、それこそ日本のバンドシーンでは異質な存在ですが、でも、例えばサウンドの中からメロディだけ抽出して聴くと、すごくフレンドリーだったりしますよね。J-POPとして聴いても全然違和感がないという。

Rei:うん、そこは結構意識しています。日本でやっているかぎりは、日本人にしっかり届いて引きずり込めるような音楽をやりたい。例えば、大サビはあくまでもボーカルでやる。そこもリフで押し切るところまではやっちゃいけない、っていう線引きをしています。

Yohey:リフでやれば、俺らはテンション上がるけど。

Rei:そうそう。俺らはテンション上がるけど、テンションあがっているのが俺らだけではダメ。やっぱりサビがちゃんとサビになっているというのは、邦楽の良さでもあると思いますし。だからサビのメロディは大事にしてますね。

――例えばアメリカでヒットする曲は運転中に聴きやすい曲、ドライビングミュージックであることが大事だったりする。でも、日本の場合は「カラオケで歌える」ということが大事な条件になってきますよね。

Rei:多分、そこも無意識的に考えてやっているんだと思います。自分も小さい時からスピッツとかミスチル(Mr.Children)とかを聴いてきたというバックグラウンドもありますよね。それに多分、自分が好きな洋楽も、サビがちゃんとしているバンドが多い。それこそThe Killersなんてそうですよね。そういう音楽が自分も好きです。

――今後、活動の場として海外は意識しますか。

Rei:そうですね。いつか海外でやりたいし、自分たちの武器、他のバンドになかなかできないことは、英語もひとつだとは思います。海外に出たいんだったらなおさらそこは大事にしなきゃいけないかなと思っている。最初にワーナーの方と会った時に、一発目の会話が「海外に行きたいの?」、「はい、行きたいです」でした(笑)。

Yohey:(笑)。ほんまにそうやな。

Rei:こんなに僕らと目指している方向が近いレーベルの人がいるんだ、って思いました。だから最終的にマネージャーも含めて海外を一緒に目指していきたい。僕ら、ワーナーには本当にめちゃくちゃ感謝しています。『Turn』を作った後に、この後どうすればいいか分からなくなっていて……目標も見えなかったし、もうそのまま休止していたかもしれないぐらいでした。

――『Turn』の最後の曲(「Parachute Flare」)、レクイエムみたいでしたよね(笑)。

Rei:そう、もうこれで終わりますみたいな(笑)。でもそのツアーのファイナルを初めてワーナーの人たちが見に来てくれた。そこで声をかけてくれて。ふわふわフェードアウトしていきそうな俺らのケツをバンって叩いてくれました。

Yohey:うん、あの時はちょっと先が見えない感じだった。あのままだと、順当に路頭に迷う予定やった(笑)。

Rei:そこで事務所の人たちも頑張って動いてくれたり、レーベルが声をかけてくれたりして……3人だけだったら終わってはいなかったにせよ、1回新しいものを作るのはやめて、チルしようぜ、となっていたかもしれない。

――日本はまだしも、海外ではロック、バンドミュージックは長らく不振が続いています。Newspeakはそこにどんな活路を見出し、どう戦っていきますか?

Rei:自分の中では、感情を一番うわっ! って爆発させてくれるのはバンドミュージックなんです。その、うわっ! ってなる瞬間は、ロックを聴いていない人でも誰にでもあるじゃないですか。だから、そこに反応する人たちは、絶対にいると信じることしかできない。バンドっぽくない曲を作れと言われたら作れますけど、このバンドでは絶対にやらなさそうだし(笑)。自分の好きな音楽を信じることしかできない。それに時代は必ず回ると思う。

Yohey:結局、俺らが好きなロックバンドは今もまだロックバンドをやっているし、自分たちが見て、聴いている世界から、ロックはなくなっていない。いまだに大きなフェスがいくつもあって、海外にいざ目を向けて、超満員のところでバンドがライブをやっているというのを目の当たりにすると、絶対になくなるものではないって思える。ロックはもうダメだってよく言われていることと、これだけの人を集めてギターをかき鳴らしている状況というのが、僕の中であまりリンクしないですね。

Yohey

Steven:今ロックは一番大変な時期だと言われているのに、大きい会場をまだ埋めている。

Yohey:ロックのリバイバルみたいなものを、みんな今か今かと待っているんじゃないかなって、ちょっと信じちゃっているというところはあるかもしれない。

――最後に、Newspeakとしての短期的な目標と長期的な野望をそれぞれ教えてください。

Rei:長期的なのはさっき言ったことですかね。Newspeakの音楽をメインストリームにして、色々な人達が聴いてくれること。僕らのオーディエンスは結構年齢層が広いんですよね。おじいちゃんおばあちゃんが最前列で踊ってくれていることもあります。そういう方たちから10代の人たちまで、僕らの音楽をメインストリームで聴いてくれるように、聴いていても「マニアックだね」と言われないようなバンドにしたいというのが一番大きな目標です。短期的には、ちゃんと人が来る空間をライブで作っていくこと。コロナ前までは地方も10カ所くらい回れていたのですが、コロナになってから行けなくなってしまっていたので、これからは日本の各都市も回って、あわよくば海外にも行って……というのが短期的な目標です。いい音楽を作って、いいライブをするということしか僕らは能力がないんですよね。だから、僕らはちゃんと音楽を作る、ライブをするですね。

 

『Leviathan』

■リリース情報
『Leviathan』
2022年11月2日(水)発売
01.Leviathan *Honda FIT e:HEV CMソング
02.Where Is Your Mind
03.Bonfire *「第35回東京国際映画祭」フェスティバルソング
ダウンロード、ストリーミングはこちら
https://wmj.lnk.to/Leviathan

オフィシャルサイト
https://newspeak.jp/

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