とた、ベッドルームから紡ぐ独創的なポップミュージック 同世代の共感集めるシンガーソングクリエイターになるまで

 2000年代生まれ、ベッドルームポップを奏でるシンガーソングクリエイター、とた。ピアノ、ギター、ベースなどの様々な楽器とDAWを駆使したセルフプロデュースによる楽曲制作に加え、ハッとさせられる物語性ある歌詞によって令和時代のポップミュージックを拡張する新しい才能だ。

 昨年、TikTokに投稿した「紡ぐ (Short ver.)」が注目され、今年に入りリリースした配信シングル「君二詠ム。」、「ブルーハワイ」が早耳リスナーの評価を集めている、とた。洋楽エッセンスを感じられる音楽性の高さ、10代らしい等身大の日常から派生しながらも哲学的にストーリーテリングする個性ある歌詞の世界観。そして、すっと耳に入ってくる、透明感ある淡くもせつない歌声に心を鷲掴みにされる。

 そんな、とたが10月21日に3作目となる配信シングル「あしたてんき」をリリースした。寝室=陽の当たらないベッドルームに閉じこもる繊細な心情を歌ったナンバー。誰もが知る〈明日天気になーれ〉というフレーズから展開されていく孤独と葛藤。しかしながら、ネガティブとポジティブの狭間をたゆたうポップセンスの妙。遊び心ある歌詞のギミック。ある種、とたのアーティスト宣言ともいえる個性豊かなナンバーとなった。本作は、詞曲やアレンジ、ボーカルやギターのレコーディングまで、自室のベッドルームで制作されている。(ふくりゅう/音楽コンシェルジュ)

SUPER BEAVERからgirl in redまで 音楽への興味を広げたYouTubeやラジオの存在

——とたさんによる、わかりやすい言葉で表現されながらも、深さを感じる哲学的な歌詞表現に惹かれています。耳に残る、せつなく響く歌声も魅力的で。まずは、音楽で自己表現をやってみようと思ったきっかけから教えてください。

とた:もともと、ピアノを習っていたので一番身近に音楽がありました。家族も音楽が好きで、音楽をやることが自然な環境でしたね。

——両親も音楽をやられていたんですか?

とた:趣味なのですが母がバイオリンとピアノを、父はギターをやっていました。最近は、私の影響で父が曲を作り始めているみたいで(笑)。本格的に音楽一家になりそうです。

——ギターはお父さんから習ったのですか?

とた:最初、ギターを始める時に弾いているところを見せてもらったのですが、いまは私が教える側になっていますね。

——今はYouTubeであったり、いろいろ自主的に学べる環境がありますもんね。

とた:YouTubeからの影響は大きかったです。どうやったら一番綺麗な音で弾けるかなど観ながら練習してました。

——ピアノはお母さんからの影響なんですね。ピアノをやりながら、自分は音楽が好きなんだと思った瞬間ってありましたか?

とた:もともと習っていたのがクラシックなんですけど、やっているうちに自分で楽譜を見ないで即興で弾くのが楽しくなって。その方が自分には向いているのかなって思いました。

——早い段階で、音楽での自己表現に目覚められたのですね。

とた:ピアノを習いはじめて3年目ぐらいからは楽譜をほっぽって、自分が好きなように弾いていました。最初の頃は、曲作りというよりはフレーズを作って遊んでいました。

——歌詞を書いてメロディをのせるなど、いまのスタイルになったきっかけは?

とた:ラジオで流行りのJ-POPを聴くようになってからですね。歌詞があるとメロディと相乗効果で意味が伝わりやすくなるんだなって気づいて。その後、歌詞を見ながら曲を聴くことが増えて、自分でも歌詞を書きはじめました。

——最初は、どんなアーティストに影響を受けましたか?

とた:ラジオをかけっぱなしにしている家だったので、流れてきた曲に反応したりしていました。たとえば、SUPER BEAVERさんとか。歌詞がとてもいいなって。その後、洋楽も聴くようになっていろんなジャンルへと興味が広がりましたね。YouTubeで聴いていると、オススメから広がっていくんです。girl in redとかも聴いてました。それこそ、いま自分が作っている音楽性に近いかもしれません。

——ベッドルームポップですね。

とた:最近は、The 1975などいろいろ聴いています。でも、このアーティストが好きというよりは、いろんなジャンル、いろんな年代で曲ごとに好きになることが多いですね。

——YouTube、TikTok、Spotifyなどもそうですけど、今はいろんなプラットホームからいろんなアーティストがいろんなジャンルで曲を発表するので、特定のジャンルを超えた表現が実は多い時代ですよね。それは、とたさんの作品にも感じます。

とた:自分が表現したい世界観によってサウンドが変わることはありますね。サウンドは、歌詞の世界に寄り添えることを第一に考えているからかもしれません。

——だから自らDAWでトラックメイクもされるんですね。最初のツールはGarageBandから?

とた:はい、もともとはGarageBandでスマホで作っていました。最近はLogic Proを使っています。直感的に、イメージしていた音を自分で作りたかったんです。

——詞も書いて、曲も書いて、アレンジしてトラックも作り、ネットに作品を発信までするという。まさに、今の時代感というか、令和ならではの表現者ですよね。ちなみに、ご自分の中でアーティスト“とた”として表現するにおいて、コンセプトといいますか、キーワードなんて持たれてたりしますか?

とた:ベッドルームで作っていること、そして詞に関してこだわりがあるなと思っています。

——それこそ歌詞の世界観が、10代ならではの等身大風でありながらも、実は奥深い表現、聴く者に考えさせる問いかけが込められていますが、とたさんにとって歌詞を書くとはどんな感覚なのですか?

とた:けっこう、自然と出てくる言葉が多いんですけど、歌詞というのは言いたいことを極端に伝えても許される場所かなって……。自分の思いを吐き出す場所にもなっているかもしれません。

友達と意見を交換し合うときに生まれる新しい発見

——とたさんの楽曲の作り方はどんなスタイルなのですか?

とた:基本的には歌詞が先ですね。歌詞を書くときに言葉の並びやメロディを考えながら作っています。同時進行に近いかもしれません。

——作品を投稿しようと思ったきっかけは?

とた:最初はTikTokでしたね。自分が届けたい同世代に伝わりやすいし、コメントなどしやすい場所かなと。

——それこそ昨年アップした「紡ぐ (Short ver.)」という作品がTikTokで再生回数が伸びてバズりましたが、どんな感覚でしたか?

とた:実感はまだなくて。そもそも自分の曲がそこまで聴かれると思っていなかったので、ただただびっくりしていました。

——リスナーからコメントをもらったりすることで、自分の作品を客観的に受け止めることができたんじゃないですか?

とた:傷ついた人がこの曲を聴いて癒されたというコメントがあれば、逆に自分を傷つけようとした人がそれを止めようと思ったというコメントもあって。受け止める人によって解釈が変わってくるんだなと。

とた - 紡ぐ (Short ver.)

——刺激的な言葉を持つ曲ですから、リスナーの心境を揺さぶったのでしょうね。ちなみに、とたさんの創作は、生活する環境などからの影響があったりするのですか?

とた:人と関わることで作品が生まれることは多いかもしれません。友人と話をしていることの影響は大きいですね。

——ちなみに、中学生の頃のとたさんってどんな子だったのですか?

とた:中学生の頃は、人と関わるのが得意ではなかったんです。内向的な性格でした。自分の中でぐるぐる考えちゃうことが多くて。でも、年を重ねるごとに人との関わり方がわかるようになってきました。高校生になってからは、自分に似ているタイプ以外の子とも仲良くなるようになって、人と関わることにポジティブになってきました。

——きっかけがあったりしたんですか?

とた:周りの人の影響をたくさん受けたかもしれません。アクティブな子が多くて。それからは、人と関わることが楽しくなってきました。

——歌詞でも、友達がきっかけで思いつく言葉など多そうですよね。友人には相談するタイプ? 相談を受けるタイプ?

とた:どっちもなんですけど、友達と意見を交換し合うときに新しい発見が生まれますね。親友とは、今も毎日のように連絡を取りあっています。

——ちなみに歌詞で大切にしているのはどんなポイントですか?

とた:今は、言葉の意味を一つのフレーズに二つ重ねたり、受け取り方を広く持たせて、聴いてくれた方次第でいろんな受け止め方ができるようにしたいと思っています。あと、音の並びとして心地よいと思えるような韻の踏み方、母音の並びを考えて歌詞表現をしていきたいなと思っています。曲によって登場する主人公のタイプがバラバラなので、伝えたいメッセージもサウンドも曲ごとに変わっていくかもしれません。

——アーティスト活動を行う上でインターネットの浸透、身近になったことはとたさんにとって大きかったと思うんです。逆にいうと、インターネットがなかったらアーティスト活動はやってなかった?

とた:そうですね。たしかに、音楽活動を外に発信していなかったかもしれません。

——作品性の高さはもちろんなのですが、思いもよらぬ広がりが生まれていますもんね。ちなみに、とたさんのアーティスト名はどんなふうに名付けられたのですか?

とた:これは、ゲームの『あつまれ どうぶつの森』のキャラクターでとたけけというのがいて。いろんなジャンルの曲を作っているんですよ。自分もそんな感じになれたらいいなって。それでとたにしました。他にも意味はいろいろあるんですけど、最初のきっかけはそんな感じです(笑)。

——最近、交友関係からインスピレーションを受けた出来事はありましたか?

とた:普段から言葉を書き溜めていることは多くて。自分が考えていること以外でも、「あ、これは友達の気持ちだな」と思うことがあります。

——なるほど、俯瞰の視点があるからこそ、とたさんならではの奥が深いストーリーテリングが生まれるのでしょうね。俯瞰の視点は、とたさんも自覚されています?

とた:自覚はそんなにはないのですが、自分の行動を見直すことは多いです。あとから、いろんな見方をして考え直したり。それは曲を作る上で、いろんな思考、いろんな方向から物事を捉えるという意味で影響はあるかもしれませんね。

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