ENVii GABRIELLAが伝える、自分の人生を生きることの大切さ 8cmシングルへの思い入れも語る

 ENVii GABRIELLA(以下、エンガブ)がシングル『「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」c/w「オリビアを聴きながらを聴きながら」』をリリースした。表題曲は、エンガブらしいパワフルなメッセージが込められた歌詞に加え、怒涛の展開を詰め込んだチャレンジングな楽曲に。カップリングの「オリビアを聴きながらを聴きながら」もまた、これまでのエンガブにはなかった、たっぷりとした叙情感で新たな魅力を引き出している。今作は8cmシングルでリリースされることでも話題を呼んでいるが、なぜ今8cmシングルでのリリースに至ったのか。メンバーそれぞれの音楽との出会いと共に、これまでとは一味違った楽曲制作についてじっくり語ってもらった。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

学生時代のカラオケで閃いたタイトル

Takassy

──きらびやかな「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」と、叙情的な「オリビアを聴きながらを聴きながら」という、対照的な2曲が収録されたシングルですね。まずは先行配信されたカップリング曲「オリビアを聴きながらを聴きながら」について聞かせてください。この曲はTakassyさんが10年以上温めてきた楽曲ということですが、今回この曲をリリースしようと思ったのはどういった想いからだったのでしょうか?

Takassy:温めていたのは「オリビアを聴きながらを聴きながら」というタイトルのことですね。学生時代にカラオケに行ったときに、一緒に行った友達が杏里さんの「オリビアを聴きながら」を歌っていて、その隣で私はデンモクを見ていて。「『オリビアを聴きながら』を聴きながらデンモクを見ているな」と思ったんです。そのときに、こういうタイトルの曲があったらウケると思って(笑)。そのときからずっと、そういう曲をいつか作ろうと思っていました。で、ちょうど今はシティポップブームだし、「BL」「Symphony」からの“夏3部作”の締めくくりになるような晩夏の雰囲気にも合うと思って提案しました。

ENVii GABRIELLA - オリビアを聴きながらを聴きながら (Official Lyric Video)

──そうだったんですね。歌詞で描かれているストーリーがあまりにも素敵だったので、てっきりシチュエーションありきで出来上がった楽曲なのかと思いました。

Takassy:歌詞のシチュエーションはタイトルから掘り下げました。「オリビアを聴きながら」を聴きながら、主人公は何をするのかなって。この主人公のように、「自分ではこうしたいんだけど、彼がこうしろって言うから我慢してるんです」みたいな悩みが、よくYouTubeやラジオに届くんですよ。そういう女性が、意を決して別れを切り出そうとするんだけど、まだちょっと葛藤しているところに、杏里さんの曲が流れたことによって踏ん切りがつくというストーリーになりました。

Kamus

──Kamusさん、HIDEKiSMさんはこの曲を初めて聴いたときはどんな印象を持ちましたか?

Kamus:とても大人でムーディーな曲で、エンガブっぽくない曲だと思いました。エンガブって恋愛についてがっつり歌っている曲がないので新鮮で。「初めまして〜」と思ったのと同時に、どういうパフォーマンスになるんだろうというちょっとした不安もありました。パフォーマンスに関してはまだうちらもどんなものになるのか分かっていないですが、大人なエンガブが見せられそうだなと思っています。(取材は10月上旬)

HIDEKiSM:私もKamusちゃんと同じで、エンガブっぽくないなというのは思いました。でもこういう大人っぽい雰囲気って、アラサーになったからこそ出せるものなのかなという気もして、「いよいよこういう曲が歌えるときが来たんだな」と思いましたね。楽曲においてもライブにおいても、新たなエンガブをお見せできるいいチャンスなのかなって。

コーラスワークで表現した心情

HIDEKiSM

──歌い方もこれまでとは違いますか?

Takassy:違いますね。この曲はずっと地声とファルセットの間のミドルボイスで歌っているのですが、そういう曲って今までのエンガブの曲にはなくて。HIDEKiSMには「耳元で歌ってもうるさいと言われないトーンで歌って」と言いました。レコーディングのときはHIDEKiSMに椅子に座ってもらって、電気を暗くして。タクシーに乗って、シートにもたれかかって鼻歌を歌っているような感じで歌ってもらいました。

HIDEKiSM:難しかったです。私、声を張るような高音のほうが得意で、息の量が多い歌い方だと音程が不安定になってしまうんです。挑戦でしたけど、チャレンジすることは楽しかったし、仕上がりを聴いて大人っぽい雰囲気が出せていたのでよかったなと思いました。

Takassy:我々、体は男なので、中低音が響きやすいんですよ。高音ももちろんですが、私はもともとHIDEKiSMの中音域がすごく好きで。そういうこともあって、今回はいつもよりもキーを低く設定しています。ハモリも、いつもは私の上をいくんですけど、下のハモリに入ってくれているところもあって。いつもとは違う声と音域を使ってもらっています。

Kamus:最初Takassyの声だけでデモを聴いたときは、曲調が新鮮なこともあって、どうなるのかわからないなと思っていたのですが、ふたりの声が合わさっているものを聴いて「あ、ハマった」という感じがしました。HIDEKiSMのハモリが上に行ったり下に行ったりしているのは、曲の主人公の気持ちだというのを後から聞いたのですが、その上下がすごくいい感じで。「ハマった」と思った理由はそこなのかも。

──ハモリの動きで心情を表しているんですね。

Takassy:別れたいマインドと別れたくないマインドがせめぎ合っているというのを、私とHIDEKiSMのパートが上下することで表現しています。そのぶんミックスがすごく難しくて。いつも通りにミックスすると、どうしてもハモリパートは主旋律よりも小さくなるのですが、この曲に関してはどっちも主旋律に聞こえてほしかったから。それこそ「オリビアを聴きながら」がリリースされた頃の曲って、コーラスワークがすごいじゃないですか。私は子供の頃ラジカセに耳を近づけてハモリのパートを必死に覚えようとしていたのですが、そんな感じで「ハモリを覚えたい!」と思わせるようなミックスにしたかったです。カラオケで友達とハモって楽しんでもらえるような。

HIDEKiSM:カラオケで歌うには難しいんじゃない(笑)?

デモを受け取って「バッカじゃない?」って言いました(笑)

──対する表題曲「あなたが私を綺麗にする訳じゃないの」は意志の強い女性が主人公のきらびやかな楽曲です。この曲の着想源はどのようなところだったのでしょうか?

Takassy:自転車を漕いでいて、ふと「私は私を綺麗にしているわ」と思ったことがあって。8cmシングルの企画の話も出ていたので、「こういうタイトルで、すごくゴージャスな曲を作りたいんです。できればコスメのCMに採用されるような曲にしたいです」と作り始めました。

──おっしゃる通り、ゴージャスですし、展開もめまぐるしくて。変拍子もいろいろなところに入ってきて……これは褒め言葉ですが、訳がわからないというか。

Takassy:あはは(笑)。でも変拍子を入れたのは共作したOgiくん(Takao Ogi)なんですよ。Ogiくんは私が作家をしていたときに同じ事務所にいた同僚で。私たちの曲だと過去に「オダマリナサイ」を作ってくれています。普段は劇伴やゲーム音楽、CM音楽を手がけている子で、もともとこういう音楽が得意なんです。だから今回はOgiくんしかいないと思って、コンセプトやイメージする映像を送って自由に作ってもらいました。最初に上がってきたデモはもっとめまぐるしかったんですよ(笑)? だからこの曲が狂っているのはOgiくんのせいです(笑)。

──でも、こういう曲を狙っていたからOgiさんにお願いされたんですよね? ある種狙い通り?

Takassy:そうですね。私は最初にOgiくんに『不思議の国のアリス』の話をしたんです。『不思議の国のアリス』はアリスが社会や他人の意見に合わせて自分の意見を出せていないというところからスタートして、あの不思議な国の世界を経て、自分や自分らしさを大事にすることに目覚めるというお話じゃないですか。それがこの曲のテーマにぴったりだと思ったので。あとは遊園地にある「びっくりハウス」のようなイメージでということも伝えて。自分も驚きたかったので、「デモができるまで聴かせないでください」とも言いました。

──実際にデモを受け取ったときは驚きました?

Takassy:「バッカじゃない?」って言いました(笑)。ウキウキしましたね。「そうそう、これこれ!」って。

──おふたりはこの曲に対してどういう印象を持ちましたか?

Kamus:今はすごく好きですが、初めて聴いたときは「ヤバイな」と思いました(笑)。私はダンサーということもあって最初にパフォーマンスのことを考えてしまうので、「どうパフォーマンスしよう」って。ゴージャスすぎて追いつかないし、「そもそもこれ何拍子?」みたいな。でも歌詞を読んで、曲の意図を聞いた上で改めて曲を聴くと、楽しい曲だし、どんどん好きになっていきました。今は早く人前でパフォーマンスしたいと思っています。

HIDEKiSM:私はミュージカルが好きなので、聴いた瞬間「大好きですー!」と思いました。振り返ってみれば、今までのエンガブにはミュージカルっぽい曲もなかったし。ぶっ飛んでいるアレンジも含めて、Takassyらしいし、パフォーマンスもエンガブらしいものがイメージできたし、この先エンガブの代表的な曲になるんじゃないかなと。何よりも私はこの歌詞がすごく好き。私はわりかし“自分が好き”みたいなところがあるんですが……。

Takassy:「わりかし」じゃないよ(笑)!

HIDEKiSM:あはは(笑)。まぁ自分が好きな気持ちが強いタイプなんですが、『不思議の国のアリス』の話のように周りに影響を受けて自分を見失う瞬間もある。でもそんなときにこの歌詞を聴いて「そうよ、私、自分のことが好きだったじゃない」と自分を取り戻せたような気がしたんですよ。だからこの楽曲ができてから毎日がすごく楽しくて。

Takassy:あんた、その前から楽しそうだったじゃない(笑)。

HIDEKiSM:そうかもしれない(笑)。とにかく、この曲で、聴いてくださる皆さんも元気づけられたらいいなと思っています。本当に自分の指針のようなものになりましたよ。

Takassy:あら、うれしい!

ENVii GABRIELLA - あなたが私を綺麗にする訳じゃないの (Official Music Video)

関連記事