秋山黄色、リスナー一人ひとりへ投げかけた感謝の気持ち あたたかい光で会場照らした中野サンプラザ公演

 秋山黄色が、自身最大規模となるホールワンマンツアー『一鬼一遊TOUR Lv.4』東京・中野サンプラザホール公演を10月13日に行った。「天気微妙だから気をつけてね」と秋山も公演前日にTwitterで気にかけていたが、開演前の中野にはしんしんと雨が降っていた。

 〈シャッターチャンス/4 3 2 1〉ーーカウントダウンにいざなわれるように、ライブは「シャッターチャンス」で勢いよく幕を開けた。一曲目から秋山はステージを右へ左へ、観客と目を合わせるように歌う。「『一鬼一遊』へようこそ!」の声かけに、フロアの揺れが強まり、ボルテージが一段階上がったのを感じた。

 「Bottoms call」に続く三曲目は「やさぐれカイドー」。以前は前のめりに、タイトル通り“やさぐれ”の感情をぶつけるように演奏されるイメージだったが、この日は客席のクラップと一体となり、安定と爆発が同居するようで心を掴まれた。この時点ですでに、秋山がより表現力を高めていることに気づかされる。

 演奏後の静寂の中、秋山はゆっくりと水を飲んだ後、本ツアーについて「今回は解放されて自由な気持ちでライブをしているので、伝わるんじゃないかと思いますけども。みなさんの見る心構えとして、結構1人や遠くから来てる人も意外といるみたいですが、全くもって気にしないようにしてください」と口を開く。続けて「破壊に破壊を繰り返すようなライブをして、常識が変わるくらいの体験をしてくれたらいいなと思っておりますので、気合いいれて聴くように」と声をかけ、会場も拍手で応えていた。

 「毎度言うことなんですけど、世の中で一番くだらないものって人の目なので。人の目を気にしたやつから、ぶっとばしてやります!」ーーそう叫び始まったのは「クラッカー・シャドー」。フロアも自分たちを解放し、秋山の想いが伝わっていく。「聴き覚えがないよね? でも聴いたことある体で行くよ」と、新曲「年始のTwilight」も特別に披露された。

 秋山が「非常にプレミアムなことですが、今から転換したいと思います」と告げると、会場の照明が明るくなった。すると秋山は「うわ、すげえ!」と前髪をかきわけて客席を見つめ、「皆さんこんばんはー!」と嬉しそうに声をかけた。その後、中野サンプラザが来年閉館することに触れ、「デビューしてすぐくらいのときに、マネージャーさんと中野駅前を通って、『あれが中野サンプラザだよ』みたいな、バスガイドみたいなことされて」とエピソードを披露。スタッフとの二人三脚の道のりを想い、こちらまで胸が熱くなった。

 そして「ささやかですが、アコースティックセットでやってみたいと思うので、ゆったり聴いていてください」と、秋山のアコースティックギター、井手上誠のバンジョー、藤本ひかりのベース、鈴木敬(Bentham)のカホンの編成で披露したのは「夕暮れに映して」。すぐそばで歌ってくれているようなあたたかさが、夕暮れのように会場内にじんわりと広がった。そのままの編成で「エニーワン・ノスタルジー」へ。〈大人と子供の間にいるからだ/ダサい大人になりたくない〉ーーそう感じる世代のリスナーも、この日はたくさん来ていたように思う。彼らがじっと聴き入る様子が印象深かった。

 再び秋山が観客へ語りかける。「本当の意味での“一喜一憂”を、ちゃんとした温度で伝えたり歌ったりするっていうのが、最近の僕のお仕事です。最近皆様のおかげで自覚がわいてきました」としながらも、「ときたま昼間くそ楽しいのに、寝る前に嘘みたいに、今までの人生がまるで全部来世のための行いだと思うときがあります。だから、すがるものがないと、と。活動する上で、スタンスを変えずにやっていきますので。遊ぶように歌いますので。叫ぶようにステップも踏みます」と明かす秋山には信念があり、そんな空気をずっと感じる。

関連記事