前作「TraceTrace」では体を大きく使い、ふわりとした軽やかさの中に力強さやブレないフォーメーションの美、そして体を泳がせるようにして、気持ちよさそうに踊る姿があった。一方本作では、どっしりと重心を下に置くようにしながら手足を四方八方に動かす音ノリの良い挙動、前傾に加えて体を後ろに傾ける前後の動作が組み込まれているのも特徴的だ。

　サビ終わりには、お揃いのグリーンのセットアップへとスイッチ。その変わり身の早さは、どっちが表でどっちが裏なのか、本当の姿は、本当の思いはーーと、見る者を惑わせる。しなやかさと力強さ、冷静と情熱、狂おしいほどの感情を抱えたように踊る5人。細部まで躍動感に溢れる一連の動きからは、まだ諦めちゃいないという内に秘めた燃え上がる感情が伝わってくる。一人ひとりに迫るカメラワークや、ぐるりと回転したりと巧妙なアングルとエフェクトがまた妖しげな雰囲気を演出している。

　King & Princeはデビュー曲「シンデレラガール」を筆頭に、メンバーが出演するドラマや映画作品の主題歌を多数歌ってきた。物語を踏襲して主題歌としての役割をしっかりと果たしながらも、物語と切り離しても独立性を保った作品、ダンスから音楽の世界観を伝える作品が増えている。新曲をリリースするたびに、高みを目指したダンスに挑戦している彼ら。今回の「ツキヨミ」は、年齢やキャリアを重ねてきた現在のKing & Princeならではの魅力がダンスパフォーマンスからも引き出されていると言えるだろう。