ヤバイTシャツ屋さん、笑いと感動で溢れた“日本武道館ライブ”への本音 家族も登壇したメモリアルな1日を振り返る

 2022年8月25日に行われた、ヤバイTシャツ屋さん初の日本武道館ワンマン公演の模様が、2022年10月30日にWOWOWプラスでテレビ初独占放送される。

・そもそも「日本武道館ではやらない」と公言してきたバンドなのに、前言撤回した。

・毎週末どこかのフェスに出続けている、その合間を縫っての平日に開催、という、他のバンドならまず選ばないであろうやりかたで決行(でもソールドアウト)。

・もりもりもとの父と姉、しばたありぼぼの父母、こやまたくやの父母が登場し、曲の演奏に参加するコーナーあり。

・タンクトップくん(ヤバTのキャラクター)、要所要所で大活躍。

・後半に「寿命で死ぬまで」を演奏する前に、こやまたくや、少し前に身内と友人を亡くしたこと、その時の思いについてなどを、言葉にする。そして、曲に入るとこやまとしばた、演奏しながら落涙ーー。

 などなど、いろんな意味でトピックだらけ、笑いと感動だらけ、歴史に残る瞬間だらけだったこの公演の模様を、足を運んだ方も未見の方も、ぜひ放送で、改めて確認していただければと思う。リアルサウンドでは、そんな初の日本武道館を終えた3人の本音を聞いた。(兵庫慎司)

「やらない」と言ってたのは、逆に言えば意識していたから

ーーまず、以前は「日本武道館ではやらない」と公言していたのに、やることにした経緯からうかがっていいですか?

こやまたくや(以下、こやま):そもそもフェスとか以外は、ライブハウス以外でライブをしないというポリシーで活動しておりまして。10-FEETやったり、マキシマム ザ ホルモンやったり、尊敬する先輩たちが、そういう意志を持ってやられていたので、それを受け継いでいるつもりだったんですけれども。それで「日本武道館やるんやったら、Zepp Tokyoで5デイズやりたい」って言ってたんですが、それをやってしまい(『“You need the Tank-top” TOUR 2020-2021』)。

 で、コロナ禍でこういう状況下になって、ライブハウスでもイスありになって……もともと「イスありのところではライブやりません」と決めていたんですけど、そういうところでやらざるを得なくなった。ならもう柔軟に、やるんやったらとことんいろいろ挑戦していこう、ということで、3人の地元を回るホールツアー(『"こうえんデビュー" TOUR 2021』)をやってみたり、大阪城ホールでワンマンをしてみたり。そういう挑戦を経て、「これやったら日本武道館もやってみたいな」と。いろんなところで「やらない」と言ってたのは、逆に言えば意識していたからやし。

しばたありぼぼ(以下、しばた):憧れがね。

こやま:あったんやと思うんですよ。でもストレートにやるわけじゃなくて、『“ぶどうかん” TOUR 2022』と銘打って、北海道の「はこだてわいん葡萄館(ぶどうかん)本店前駐車場」と、愛知県の「葡萄観(ぶどうかん)光農園 小林農園」と、日本武道館の3公演でツアーにして、他とは違うようにしてやりたいな、っていう。

ーー大阪城ホールの時は、「その日のホールのスケジュールが空いたからやってみない?」と誘われて軽く引き受けた、でもステージに立った瞬間にすごく感動した、とおっしゃってましたよね。武道館ではいかがでした?

こやま:(メンバーふたりに)どうでした?

しばた:私は、大阪城ホールの時とは、感情が逆で。武道館の時は、始まる前の方が、めずらしく緊張しちゃって。私、武道館にライブを観に行ってる数が、すごく多いんですよ。

こやま:ハロプロ(ハロー!プロジェクト)とかね。

しばた:それで、「え、出れんねや?」っていう緊張感があったんですけど、いざ出たら、楽しさの方が勝って。感動っていうよりは「うわ、楽しい!」の方が勝った。こやまさんは?

こやま:どうすかねえ、うーん……めちゃくちゃ緊張したわけではないと思うんですけど……もちろん感動もしたし……でもなんか、すごい高揚感はあった気はしますね、ずっと。アドレナリン、ずっと出続けてたような気はします。終わった後も寝られへんかったし、その翌日も寝られへんかったし。

しばた:2日後にラブシャ(『SWEET LOVE SHOWER 2022』)があったからね。次の日に前乗りしてますから、山梨に。

こやま:でもテンション上がりすぎて全然寝れなくって、そのテンションのまま『ラブシャ』も出たんで。いい感じでライブできましたね。

しばた:(笑)。武道館の気持ちを持ったままね、山梨に。

ーーもりもとさんは?

もりもりもと(以下、もりもと):大阪城ホールが大成功だったので、それがかなり自信になっていたんです。ただ、まわりが「武道館だよね」みたいに緊張させようとしてくるところはありました(笑)。バンドの先輩とかにも「人生を変えるつもりでやれ」と言われて。でもやっぱり、武道館のコンパクトな作りが、大きい会場なんですけどライブハウスを感じさせてくれるというか。楽しくライブができたと思います。

家族がおらんかったら、ヤバイTシャツ屋さんはない

ーーで、観てびっくりしたのが……メンバー3人それぞれの肉親がステージに登場する、というライブは、前にも何度か観たことがあったんです。でも、メンバーの肉親がステージに登場して、曲の演奏にちゃんと参加するのを観たのは、それこそ僕は、CharとJESSE以来で。

しばた:すご(笑)!

こやま:どこと並べてんねん!

ーーこやまさんのお母さんがピアノの先生だというのは知っていたんですけど、メンバー全員の家族出演だったので、さらに驚いて。あのプランはどう考えついて、いかに家族を巻き込んだのか、教えていただけますか。

しばた:最初、こやまさんのお母さんが出て来たらおもしろい、という話をしてて。こやまさん嫌がるやろなと思いながら、「こやまさん、武道館でお母さんにピアノ弾いてもらおうや」と言ったら、案の定嫌がられて。「じゃあ全員の家族、出たらいいんか?」って聞いたら、「……それやったらおもろい」と。

こやま:はははは!

しばた:で、こうなりました。

ーー家族はどうやって説得したんですか?

しばた:「武道館出て」「イヤや。ヤバTの武道館、ちゃんと客席で見届けたい」「いや、もう、出るってみんなに言っちゃってるから。もう決まってるから」って言いました(笑)。

ーーお父さんが津軽三味線でお母さんが琴でしたが、あれは長年弾いていたんですか?

しばた:そう、趣味でずっとやってますね。

ーーこやまさんのお母さんの反応は?

こやま:「ええー、やったあ!」っていう。

しばた・もりもと:(笑)。

ーーあのピアノアレンジは?

こやま:アレンジは、なんも言ってない。「『眠いオブザイヤー受賞』一緒にやるから、ピアノ弾いて」と言って、まかせました。

ーーしかし、すごいステージ度胸ですよね。普通にサポートミュージシャンでしたもん。

こやま:なんなんですかね? 今もたまにステージで弾いたりしてるからですかね。

ーーでも、多くて数百人とかでしょ? 武道館ですからねえ。

こやま:確かに武道館となったら、ちょっと緊張した方がいいっすよね。緊張感、なかったかもしれない。でもそのおかげで僕も安心してやれました。

ーーお父さんは気の毒でしたけど。コーラスってことで、マイクを持たされて。

こやま:あれがおもしろかったでしょ(笑)? スーツを着てもらったのは堅い方がおもろいから……よく出てくれたよな。

しばた:そう、お父さんが意外やった。

ーーもりもと家は?

もりもと:もりもと家も、断られることはなかったですけど、やっぱり口説き文句としては「二家族とも出るから、うちが出ないと成立しないんだよね」っていう。

こやま:はははは。みんなそや。

しばた:もう、だましだましやん。

もりもと:「そんなに大変なことじゃないから」っていう口説き方をしたんですけど。

こやま:大変やろ、武道館に立つの。

もりもと:姉がミュージカルをずっとやってたのでーー。

ーーああ、だからか。あの最後のシャウト、すごかったですもんね。

もりもと:僕も音楽教室に通ってたし、まあ、そういう家なので。今の僕を形成してくれた家族に、恩返しができたのかな、と思います。

ーーそれ、恩返しかなあ(笑)?

しばた:ステージに上がってくれた家族がおらんかったら、ヤバイTシャツ屋さんはないから。

もりもと:そう、ないから。

しばた:生みの親ですから。

こやま:と言っても、過言ではない。

もりもと:はははは。

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