ORANGE RANGE、ワンマンでこそ味わえるマルチで奥深い世界 待望の全国ツアー前半戦、Zepp東京公演を振り返る
ORANGE RANGEの、4年ぶりのオリジナルフルアルバム『Double Circle』のリリースと同時に幕を開けた全国ツアー『ORANGE RANGE LIVE TOUR 022-023 〜Double Circle〜』。コロナ禍の長い沈黙を破って開催された待望の全国ツアーであり、ORANGE RANGEのメンバーが同ツアーにかける意気込みは非常に大きい。今回は、ツアー2日目、2022年9月15日に行われたZepp DiverCity(TOKYO)公演の模様を振り返っていく。
まず、ライブ会場に入って目を引いたのが、レンタルパンティーの貸し出しコーナーだ。詳しくは後述するが、ある楽曲で観客が一斉に、タオル回しならぬパンティー回しをするために設けられたコーナーである。開演前には、「節度あるパンティーのご利用をお願いします」という耳馴染みのないアナウンスが会場に響いていて、ORANGE RANGEのワンマンライブ会場ならではの遊び心に満ちた粋な演出に、フロアから大きな拍手が送られる。
オープニングナンバーは、新作収録の「恋はRock’n’ Roll」だ。音源では曲中に挟まれるRYOの台詞が耳を引くが、今回のツアーでは、毎回同じ台詞では飽きるということで事前にファンから台詞を募集。大量に寄せられた中から厳選した台詞が各公演ごとに披露されるという。ツアー2日目の今回披露されたのは、「水筒に豚汁」「山頂でポーカー」「チーズバーガー、チーズ抜きで」「愛してるぜ、東京」の4つ。なお、中盤のMCでは、今回採用されなかった台詞をいくつか読み上げる一幕も。「ハレンチメンチ」など、まるで深夜ラジオ番組のラジオネームのような台詞が次々と発表された。今後のツアーに参加する方は、ぜひこの曲のRYOの台詞に注目してほしい。
続けて放たれたのは、同じく新作から「キリサイテ 風」だ。この夏、筆者は『FUJI ROCK FESTIVAL』と『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』でORANGE RANGEのステージを観たが、この曲は鉄板の代表曲を軸に固めた夏フェスのセットリストの中でも、特にアンセミックな輝きを放っていたのをよく覚えている。今回、ワンマンライブで改めて聴いて、そしてフロアの凄まじい熱狂を観て、これからこの曲が彼らの新しい代表曲の一つになっていくことを確信した。
その後も、いくつもの夏フェスのステージを掌握してきた国民的アンセムを含む多彩な楽曲を次々と披露していく5人。そうしたサウンドの振れ幅の大きさは、まさにORANGE RANGEの武器であり、彼らが20年以上にわたり懸命に唯一無二のミクスチャーロックを磨き上げ続けてきたことの何よりの証左であると思う。続けて、新作から披露された「ラビリンス」では、乱反射するミラーボールの光と共に妖しげなダンスグルーヴがフロアを満たしていき、鮮やかなシンセサウンドが光る「気分上々」では、その楽曲名の通りとびきりポジティブな、そして彼ららしくカジュアルなフィーリングが一人ひとりの観客に優しく共有されていく。この2曲を含め、今回リリースされた新作の楽曲は、これまで以上に豊かな実験精神に満ちたナンバーばかりだが、それらはどれもツアー2日目にしてすでにポップなものとして響いていた。アバンギャルドさとポップさ、その絶妙なバランス感覚を保ちながらエッジを攻め込み続けるORANGE RANGE、やはり本当に凄いバンドだ。
その後も、丁寧に重ねられたシンセとギターのコンビネーションがピースフルな味わいをもたらす「Love of Summer」をはじめ、多種多様なORANGE RANGE流ミクスチャーロックが次々と放たれていく。このように、1曲ごとに万華鏡のように次々と音楽性が変化していく展開は圧巻で、これはまさに、フェスやイベントの短い尺では堪能することのできないワンマンライブならではの贅沢な時間だ。彼らの引き出しの多さに改めて驚かされたが、この後に続く「Illusion feat.ペチュニアロックス」を軸とした3連打はさらに凄まじかった。妖艶でエキゾチックな世界へ誘われたかと思えば、そのまま一気にディープな世界へと引きずり込まれていく容赦ない展開に何度も息を呑んだ。夏フェスで見せたブライトサイドの裏には、これほどまでに深いダークサイドがある。今回、初めてORANGE RANGEのワンマンライブを体験した人は度肝を抜かれたはずだ。
中盤のハイライトを担ったのは、たおやかな琉球サウンドが心地よい「Family」。彼らが真摯に紡いだメッセージが深く胸に沁み入る楽曲だ。楽曲ごとのサウンドの振れ幅が大きければ、メッセージの振れ幅も大きい。頭を空っぽにしてはっちゃけるパーティーチューン、大切な人の笑顔を守り続けたいという透徹な想いを込めた清廉なバラード、そのどちらもORANGE RANGEの真髄であり、改めて、このバンドが誇るマルチで奥深い魅力を感じた。