LOVE PSYCHEDELICOの音楽が果たす“道しるべとしての役割” 5年ぶりアルバムに込めた、内なる革命の大切さ

「人にモノを伝える時ってユーモアが必要だなと思います」(NAOKI)

ーー今はコロナ禍で生活様式が大きく変わったり、戦争によって世界の均衡が崩れたり、そこらじゅうでパラダイムシフトが起きています。そんな中、音楽が果たす役割についてはどのように感じていますか?

KUMI:「混乱している時こそ芸術の力が必要である」と私は思っていますね。コロナ禍にせよ戦争にせよ、皆それぞれの立場で物事を捉えているし、その立場に立ってみればみんな間違っていないから、理屈ではどれも通そうと思えば通ってしまう。そうやって頭で考えてしまうとますます混乱するんだけど、音楽やアートって直接魂に訴えかけるでしょう? そうすると答えはすごくシンプルになっていくのかなと思う。今こそそういうシンプルな「道しるべ」が必要なんじゃないかな。

ーーそういった思いが歌詞に反映されている楽曲も、本作にはたくさんあります。

KUMI:例えば、「今からでも遅くないんだ」と歌う「It’s not too late」とかね。「A revolution」でも〈We’re not over, yet〉と歌って、同じことを訴えています。〈10 to nothing, we’re behind〉は“10対0で負けてて後がない”という意味だけど、〈それでも構わない僕らの世界は real〉と宣言している。

ーー「It rains」もおそらく戦争について歌っていると思うのですが、聴く角度によって様々な解釈ができる歌詞になっています。

KUMI:この曲は珍しくNAOKIさんが、ほぼ一人で書き上げた曲。ウクライナで戦争が始まったニュースに胸が潰れる思いで、「何か書かなきゃ」と思って取り組んだんだよね?

NAOKI:この曲は何度も書き直してね。ノート1冊まるまる使ってようやく仕上げた曲です。でも日本にいる僕らが、ウクライナで起きている戦争についてしたり顔で誰かを責めるのも違うと思うし、それはリアルな感覚にならないと思うんですよ。なので「事実」というか、そこで起きていることをそのまま記すしかない。音楽を通してより多くの人が、そこからイマジネーションを働かせてくれたら嬉しいし、そういうきっかけになる楽曲を作りたいと思いましたね。

KUMI:ただ淡々と情景描写に徹することで「戦争ってどうしようもない、何も生まないよね?」と思いつつ、それが人の営みの一部になってしまっているということが伝わるといいなと。

NAOKI:そうだね。音楽的にはボブ・ディラン「Hurricane」とか、70年代あたりの彼の影響が強い楽曲だよね。それにここでいう「Rain」はミサイルのメタファー。CCR(Creedence Clearwater Revival)の「Have You Ever Seen the Rain?」からのオマージュだね。あの曲の「雨」にミサイルを例えた歌詞からも着想を得ました。そういう先人たちのスタイルを模倣させてもらいながら形になっていった曲です。ミックスバランスも、アコギと歌が前に出てくるようベースやドラムを抑えた不思議なミックスになっているので、そのあたりも独特な曲ですね。

ーー「シリアスなメッセージこそユーモアが必要だ」という考え方がありますが、二人はどう思いますか?

NAOKI:その考え方は常に頭の中にありますね。「この曲はシリアスなテーマを扱っているので真面目に歌詞を聴いてほしい」みたいなのって疲れるじゃないですか。「It Rains」も、爽やかなコード進行であえて始めることで、まるでポップスのようにすんなりと歌詞の本質へと誘ないたいんです。「It’s not too late」や「Radio song」の中で、たまに出てくるカジュアルなジャズっぽいフレーズなども、ある種のユーモアというか。本気のジャズはできないからね(笑)。とにかく、人にモノを伝える時ってユーモアが必要だなと思います。

KUMI:ボーカルの歌い方もそうですね。「A revolution」や「Radio song」は、歌詞と同じようにメロディも力強いんだけど、あまり勢いに任せないようにしようと思いました。自分の感情とかを込めやすい曲なので、最初のテイクでは思いっきり歌ってみたりもしたけど、それだとかえって伝わらないなと判断したんです。それで少し力を抜いて歌ってみたらしっくりきたとか、そういう試行錯誤は今回いろいろとしていますね。

LOVE PSYCHEDELICO「Radio song」ティザー映像

NAOKI:張り上げたときの声色も、もうちょっと力を入れた方がいいのか、逆に力を抜いて歌った方がいいのかとか、試しながら決めていきました。そういう声のコントロールを、KUMIは今回いつも以上にシビアにしていたように思う。とにかくどの曲でもボーカルのテンションを大切にしたかったので、ある程度オケができた後でも楽曲のキーを変更してみたこともあった。元のキーだとボーカルが強くなってしまうから、半音下げて歌ってみるとかね。

KUMI:そうだね。そうすることによって歌い方も変わるから。

ーーアルバムが完成して、今後LOVE PSYCHEDELICOがどう進んでいくのか新たな展望も見えてきましたか?

KUMI:いよいよ音楽が、自分の人生の営みの一部になっているんだなと感じています。それを自然に受け入れられるようになったから、次に作る作品もまた一層楽しみになりましたね。

ーー20年ずっと一緒に活動してきて、「今が一番楽しい」と思えるのは本当にすごいことですよね。

KUMI:でも、「楽しい」と心から思えるようになれたのは、本当にここ最近のことなんですよ。それまでは「この作品を作ったら終わりにしよう」と思っていた時期や、続けるのがやっとだった時期もあって。

NAOKI:やっと自然体で音楽と向き合えるようになったかもしれないね。それは周りのシチュエーションも含めてだけど。アルバムについて「ごった煮のスープみたい」とおっしゃってくれたじゃないですか。ある種UK的なサウンドの「A revolution」から始まり、「You’re the reason」みたいなアメリカンポップスもあれば、クラシカルな「Good bye moon」もあって、今回「こんなに自由でいいの?」というくらい幅広く曲作りができたのも嬉しかったんですよね。次はもっと自由に作れるんじゃないかな。「早く作りたいな~!」ってすでに思ってる(笑)。

KUMI:ツアーも始まるし、その準備もすぐにしなくちゃだよね。久しぶりのアルバムツアーで、やってみないと分からないところもあるけど、それも含めて「今の自分たちの音」を鳴らせることが本当に楽しみなの。どんな感覚になって、どんな音が自分たちから出てくるんだろう? って。いまだにそう思えるのは幸せだなと思いますね。

 コロナ禍になって、当たり前のことなど何もないことにみんな気づいたじゃないですか。ライブも同じで、ただ演奏して歌って、それを聴くだけじゃない何か重大なエネルギーの交換というか、みんなで特別な空間を作り出している意識は以前よりも感じていますね。音楽を通じて自分一人ではなし得ないことができるから、みんながいて音楽があればその瞬間に「世の中は変わる」って信じられるし。音楽という媒体にはものすごい力があると改めて思えるのがライブだと思っています。

LOVE PSYCHEDELICO『A revolution』

■リリース情報
LOVE PSYCHEDELICO
8thアルバム『A revolution』
2022年10月5日(水)リリース
配信はこちら

初回盤:CD+7inchレコード(EPサイズ ジャケット仕様)
¥6,050(税込)
通常盤:CD
¥3,300(税込)

<CD収録曲>
1.A revolution
2.It’s not too late
3.Swingin’
4.Hallelujah to you
5.You’re the reason
6.It rains
7.Radio song
8.Milk and honey
9.Good bye moon
10.Sally

<7inchレコード>
SIDE-A:A revolution (Alternate Mix)
SIDE-B:Swingin’

All Songs Written by KUMI、NAOKI
Produced by LOVE PSYCHEDELICO

■ライブ情報
『LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2022 “A revolution”』
10月8日(土)千葉県 市川市文化会館大ホール 開場16:00 / 開演17:00
10月10日(月・祝)富山県 富山県民会館 開場17:00 / 開演18:00
10月16日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール 開場17:00 / 開演18:00
10月22日(土)福岡県 福岡国際会議場メインホール 開場17:00 / 開演17:30
10月30日(日)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール 開場17:00 / 開演18:00
11月11日(金)京都府 ロームシアター京都 開場18:00 / 開演19:00
11月13日(日)岡山県 倉敷市芸文館 開場17:00 / 開演18:00
11月23日(水・祝)東京都 昭和女子大学 人見記念講堂 開場17:00 / 開演18:00
11月26日(土)愛知県 名古屋市公会堂 開場17:00 / 開演18:00
11月27日(日)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール 開場17:00 / 開演18:00
12月9日(金)宮城県 トークネットホール仙台(仙台市民会館) 開場18:00 / 開演19:00
12月16日(金)大阪府 フェニーチェ堺 開場18:00 / 開演19:00

前売チケット料金:指定¥6,900(税込)
※3歳未満の方はご入場できません。3歳以上の方はお一人様1枚ずつチケットが必要になります。

公式サイト

関連記事