初音ミク×オーケストラが届けた、リアルとバーチャルを越境する音楽 『初音ミクシンフォニー2022』横浜公演レポ

『初音ミクシンフォニー2022』横浜公演レポ

 バーチャルシンガー楽曲とフルオーケストラのコラボとしてファンに定着した『初音ミクシンフォニー2022』横浜公演が9月25日、パシフィコ横浜 国立大ホールで行われた。日本の音楽シーンに、バーチャルシンガーというジャンルを確立した立役者である初音ミクと鏡音リン、鏡音レンの15周年を祝うスペシャルなコンサートでもあった本公演をレポートする。

 7月の東京公演(サントリーホール)が輝きに満ちた季節を華やかに彩るものだとすると、初秋の横浜公演は横浜港の夕暮れの海が醸し出すセンチメンタルな雰囲気に乗り、静かに深く心にしみこんでいくようなステージだった。ドラマチック、かつじっくり聴かせる東京フィルハーモニー交響楽団のシルキーなサウンドが心地いい。オープニングはDECO*27の代表曲のひとつ「ヴァンパイア」だったが、同曲とオーケストラアレンジのはまり具合が素晴らしい。原曲の跳ねた感じもいいが、オーケストラアレンジとなったサウンドの奥深さと広がりには驚かされた。

 初音ミクのオープニングMCをはさみ、ミクとリンのかみ合わないコミカルなやりとりが絶妙な「ねぇねぇねぇ。」(ピノキオピー)、都会的なサウンドの「帝国少女」(R Sound Design)、そして物悲しくも暗くはない、独特の世界観が魅力の「深海少女」(ゆうゆ)とバラエティに富んだ楽曲が続くが、オーケストラのサウンドはどんな曲調をも包み込む。デジタルサウンドの極致であるバーチャルシンガー楽曲と、アナログの極致であるオーケストラの演奏、両極端ではあるが親和性を感じさせるパフォーマンスにはそれぞれのサウンドの懐の深さが感じられる。考えてみれば、初音ミクは『超歌舞伎』で日本の伝統芸能、『初音ミク×鼓童スペシャルライブ』では太鼓芸能集団ともコラボする間口の広いシンガーなのだから、このぐらいの包容力があるのは当たり前なのかも知れない。

 そして鏡音リン&鏡音レン、巡音ルカといった各ピアプロキャラクターズのコーナーへと入っていく。「ヴァンパイア」と同じ衝撃を受けたのが、「リモコン」(ワンダフル☆オポチュニティ!)から「劣等上等」(Giga)、そして「shake it!」(emon(Tes.))へと続いたミク・リン・レン曲の演奏。いずれもダンス&エレクトロの要素が強く出た、およそアコースティックとはかけ離れた曲だが、オーケストラアレンジになると、まるで映画音楽のような壮大さを備えた楽曲に姿を変えた。楽器が変わるとこうも楽曲が変わるのか!という、新鮮な驚きに満ちた音楽の空間がそこにあった。巡音ルカと初音ミクのMCをはさみ、ルカ曲の「それがあなたの幸せとしても」(Heavenz)、そしてバーチャルシンガー楽曲制作者といえばこの人、ryo(supercell)の名曲メドレー。「ODDS&ENDS」、「こっち向いて Baby」、「罪の名前」をじっくり聴かせ、後半に向けての期待を盛り上げて休憩に入った。

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