sumika主催対バンイベント『TOOY』にKroi、ズーカラデル、w.o.d.が集結 音楽性の異なる“ライブバンド”招いた異種格闘技戦

 ラストにはsumikaが登場。対バンライブの場合、主催バンドが一番長くライブを行うケースも多いが、“全バンド、フラットに”という考えから4組とも持ち時間は同じにしたとのこと。前3組のライブに焚きつけられたのか、いつもよりさらに泥臭く、短い持ち時間で心を燃やすようにライブするsumikaの姿がそこにあった。

「w.o.d.、カッコよかったよね。ズーカラデルもカッコよかったよね。Kroiもカッコよかったよね。ライブバンドとして、ラストバッター、sumika始めます!」

 片岡の激しいギターカッティングをきっかけに「グライダースライダー」からスタート。勢いに身を任せるというよりかは、一歩一歩踏みしめるように深く鳴らすバンドサウンド。荒井智之(Dr/Cho)のドラムは一発一発が重く、澄み切った音を繰り出す小川貴之(Key/Cho)のタッチも力強い。黒田隼之介(Gt/Cho)のギターソロからも想いが溢れていて、片岡はその横で「いけ!」と言わんばかりのしぐさをしつつ、自らもギターを掻き鳴らしていた。2015年にリリースされた曲だが、自分の心に従って一つの道を選ぶ覚悟を歌ったこの曲は、後にMCで語られた、2020年以降確かめた“やはり自分たちには音楽だ”という想いとも重なっている。歌詞に綴られたかつての自分の心の核は、今の自分の中にもある大切なものだと認識した上で歌う片岡のボーカルは力強い。そのボーカルを、彼と同じ想いで同じ言葉を発するメンバーのコーラスが肉づけすることで生まれる、圧倒的に“人”由来の熱量。バンドの演奏が観客の心を熱くさせるまでに時間はかからず、「まだまだ元気残ってんの? 本当にまだまだいけんの? ちょっと心配だなあ。そんな時の呪文があった気がするなあ」と片岡が挑発的に誘ってからの「ふっかつのじゅもん」ではさらに盛り上がった。「グライダースライダー」に引き続き、楽器を持ち上げたり前傾姿勢になったりしながらガシガシとギターを弾きまくる黒田の前のめり具合も最高。片岡が歌の合間に投げかける「もっともっと!」「後ろも!」「最高!」といった言葉がバンドや観客をさらにブーストさせる。

写真=後藤壮太郎

 客席からの拍手に対して、「音がでっかい!」と笑う片岡。MCでは「いやー、とんでもない対バンですね」と切り出しつつ、この日集まった4組について「似てないけど共通して言えるのはみんなライブバンドだということ」とコメントし、「俺らも負けちゃいけない」と意気込んだ。そして「誰に言われたわけでもないんですけど、やりたい曲をやらせてもらうので、聴いてもらっていいですか?」と始まったのはなんと出演バンドのカバーで、w.o.d.の「1994」、ズーカラデルの「アニー」、Kroiの「Balmy Life」をメドレーにして演奏。sumika流にリアレンジというよりかは、相手バンドの特色に寄せたアプローチを楽しむような演奏で、だからこそ片岡、荒井、黒田、小川のプレイにある彼ららしさがかえって浮き彫りになっている(特に「アニー」のドラムは荒井らしさ全開)。そしてメドレーになると改めて思う。本当に異種格闘技戦のような対バンだなと。出演バンドへのリスペクト、多様なジャンルを自分たちの楽曲に取り入れてきたsumikaの音楽性があるからこそ成り立つメドレーだ。

 ゲストメンバーの須藤優(Ba/XIIX)、George(Syn/Mop of Head)、岩村乃菜(Cho&Per)も含めたソロ回しがあった「Strawberry Fields」までを終えると、早いものでライブの終わりも近い。ここでは片岡が、人に会えなくなり、気軽にライブをすることもできなくなった2020年春以降、ふてくされていた時期も正直あったが、オンラインライブや感染症対策ガイドライン下でのライブを行う中で「音楽がなくても死なないけど、音楽があった方が人生が豊かになる」「だから音楽のある人生の方が好き」と改めて実感したと明かし、その上で、今日出演した3バンドは「2020年の暗闇の中でも今日まで音楽を続けてきた同志」だと、さらに「やっぱり生のライブを観ると心にグッとくるんだよね」という気持ちで今日ここに来たであろう“あなた”(観客)も志は一緒だと語った。

「あなたの前だから嘘つくことなく、音楽をやり尽くすことができます。ラスト、剥き出しの心でやっちゃっていいですか!」

 そうして片岡が歌い始めたのは「ファンファーレ」。〈夜を越えて/闇を抜けて/迎えにゆこう〉という歌い出しが今ここに広がる光景とぴったり重なった。曲の終盤では追い込みをかけるようにさらに激しくなるバンドサウンド。メンバーそれぞれ全力疾走しているが、決してバラバラにならない、テンションをしっかり共有した演奏からはバンドの絆が感じられる。「ラストはsumikaらしく笑って終わります!」と本編ラストは「Shake & Shake」。全編通して小川が大活躍する軽やかなピアノフレーズが肝の曲だが、一旦伴奏を同期に託す2番Bメロではセンターのマイク前まで行き、歌うふりをしてから平然と自分のプレイに戻るエンターテイナー精神も微笑ましい。

 幸福なムードでラストを迎えたため拍手は鳴り止まず、再び登場したsumikaはアンコールとして「Lovers」を演奏。アウトロ中には片岡が言葉を重ね、いいバンドはたくさんいる、しかしバンドはずっと続くわけではないという前置きとともに「カッコいいなと思うバンドがいたらぜひライブを観に行ってください。お互い生きているうちに」と伝え、「『TOOY』を選んでくれてありがとうございました!」と感謝の言葉で締め括った。この言葉は観客一人ひとりに響いたことだろう。自らの体内に流れるバンドマンとしての血を確かめた2日間を経て、10周年イヤー邁進中のsumikaはさらなる未来を目指していく。

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