香取慎吾、『ドキュメンタル』でも感じられた仕事の流儀 強烈なキャラクター演じられる秘訣とは?
歌って踊るだけではなく、バラエティにドラマにMCに……と、幅広く活躍することを求められたSMAP。その末っ子として育った香取は、誰よりも「なんでもやってみる」「とことんなりきってみる」というポリシーを強く抱いて活動を続けてきたのではないか。それゆえ、香取によって生まれた数々のキャラクターは名物として多くの人の記憶に残っている。市川海老蔵のパロディである市川カニ蔵、ドナルド・トランプに扮したカトルド・トランプ、そして松平健によるマツケンのパロディであるカツケンなど、枚挙に暇がない。
さらにバラエティのみならず、ドラマにおいても『西遊記』(フジテレビ系)の孫悟空や、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(TBS系)の両津勘吉など、インパクトのある役柄を演じきった印象も強い。また、1人のアーティストとして確立したといっても過言ではないほど人気を博した慎吾ママは、シングル『慎吾ママのおはロック』をリリースした2000年より、22年の時を経ているとは思えないくらい、今も新鮮な魅力を放っている。もしかしたら、それも香取の中で「オーディションの気持ち」と呼ぶのに近いフレッシュな気持ちでキャラクターを演じることに向き合ってきたからではないだろうか。
『ドキュメンタル』では、香取がリーゼントのカツラを被って綾小路翔に扮する場面がある。それまではどちらかといえば笑わないよう守りに徹していた印象だったが、カツラを被り、ある意味“綾小路翔”というキャラクターになりきった途端、一気にスイッチが入ったことがわかった。それは「キタキタキタ!」と観ているこちらとしても思わずテンションが上がる瞬間だ。
アイドルというのは本来、自分自身の個性で勝負する職業。一般的に考えれば、強烈なキャラクターに扮するともともとの魅力が霞んでしまいそうだが、香取の場合は不思議と共鳴して、彼自身とキャラクターの両方が同時に愛されるという現象を両立させてしまう。それは毎回「すべてぶつけたい」と気持ちよく振り切ってくれるからに違いない。
そもそも香取が自分自身を「パーフェクトビジネスアイドル」と称しているのも、ある意味“アイドル・香取慎吾”というキャラクターを演じている、といえるのではないだろうか。そして、様々なキャラクターを演じる彼自身を、最大限に輝かせようという“プロデューサー・香取慎吾”も内在している。『ドキュメンタル』でも、どのカメラが一番いい画を撮っているのかをしっかりと確認している様子が見て取れた。
今回の『ドキュメンタル』では、演じる香取と仕掛ける香取、その両方の顔が透けて見える貴重な作品にもなっている。全体の流れを見据える冷静な判断力と、ここぞというタイミングでキャラクター化する爆発力と。ぜひ、バトルと共に香取が芸能人生をかけて培ってきた、真摯でしたたかな仕事の流儀にも注目して楽しんでほしい。