Weezer、多作なクリエイティビティは“春夏秋冬EP”で新局面へ スタンダードかつ奇想天外な『SZNZ: Summer』を聴いて

 そして、いよいよ最新作の『SZNZ: Summer / シーズンズ:サマー』だが、1曲目「Lawn Chair」のプレイボタンを押すと、なぜか聴こえてきたのは、ヴィヴァルディ「冬」の第二楽章。たしかに、ほっこりと温かくも、バイオリンの旋律が涼しげで、夏に聴く「冬」もなかなかいいけれど……そんな疑問はよぎりつつ、驚かせるのも彼ららしく思えて笑みがこぼれる。しかも歌詞の内容は、大天使ガブリエルと大天使ミカエルが、天国は退屈すぎるから人間を痛めつけてやろうと画策しているというもの。いくつも意味合いが重ねられていて、一体どんな作品になのか予想ができないオープニングになっている。

Weezer - Lawn Chair

 小気味いい語感で口ずさみたくなる「Records」に続き、コーラスも含めて重厚なサウンドとドラマティックな展開の「Blue Like Jazz」で熱くなったかと思えば、号泣必至のメロディと軽快なビートの間にドラマティックな展開がタイムリープするように挟み込まれている「The Opposite Of Me」と、いい意味で気を抜く暇がない。さらに、壮大なオープニングから、グッドメロディが畳みかける歌モノへとスライドしていく「What's The Good Of Being Good」。エモーショナルなメロディに泣かされっぱなしなだけではなく、終盤にフックが隠されている「Cuomoville」、そして最後は、カラッと終わるかと思いきや、ドラマティックな展開が待っている「Thank You and Good Night」。〈この見晴らしのいい場所から/みんなが僕を見上げるのが見える/どうなるのかわかってる〉(和訳)という、あらゆる経験を積んできた今のリヴァースだからこそ書けるようなすべてを達観した歌詞が響き、さらには「グンナァァァーイ!」と歌い上げて、高らかに楽器が轟く中で曲が幕を閉じる頃には、「本当に彼らは神なのではないか!?」と思ってしまうくらい、エキサイトした気持ちにさせられてしまう。“僕らのWeezer”と言いたくなるメロディは、クラシックの影響によって古来からのスタンダードを射抜き、さらなる進化を遂げた。そこに奇想天外な展開やゴージャスなサウンドが盛りに盛られて、こってりアツい一枚になっているのだ。やっぱりこれは「“夏盤”だ!」と、すべてを聴いて腑に落ちる。

Weezer - Records (Lyric Video)

 『SZNZ: Spring / シーズンズ:スプリング』とは違った魅力を感じさせてくれた『SZNZ: Summer / シーズンズ:サマー』。多作でも飽きさせない、練りに練られたコンセプト作の醍醐味を感じさせるシリーズだと思う。これから控えている秋、冬のリリースも、彼らなりの季節に対する解釈がどう落とし込まれているのか、また、彼らの現在地がどう刻み込まれているのか、気になるところは満載。今から、秋や冬が来るのが待ち遠しい。

『SZNZ : Summer』

■EP情報
Weezer『SZNZ : Summer』
ストリーミング/ダウンロードはこちら
国内盤CD:¥2,200(税込)
2022年8月3日(水)発売
1. Lawn Chair / ローン・チェアー
2. Records / レコーズ
3. Blue Like Jazz / ブルー・ライク・ジャズ
4. The Opposite Of Me / ジ・オポジット・オブ・ミー
5. What's The Good Of Being Good / ワッツ・ザ・グッド・オブ・ビーイング・グッド
6. Cuomoville / クオモヴィル
7. Thank You and Good Night / サンク・ユー・アンド・グッド・ナイト

『SZNZ : Spring』

■EP情報
Weezer『SZNZ : Spring』
ストリーミング/ダウンロードはこちら
国内盤CD:¥2,200(税込)
2022年7月6日(水)発売
1. Opening Night  / オープニング・ナイト
2. Angels on Vacation / エンジェルズ・オン・ヴァケーション
3. A Little Bit of Love / ア・リトル・ビット・オブ・ラヴ
4. The Garden of Eden / ザ・ガーデン・オブ・エデン
5. The Sound of Drums / ザ・サウンド・オブ・ドラムス
6. All This Love / オール・ディス・ラヴ
7. Wild At Heart / ワイルド・アット・ハート

関連記事