クリエイター Payao&作詞家 zopp特別対談 それぞれの創作スタイルで向き合う、日常生活と言葉の相関関係

クリエイターPayao&作詞家zopp対談

歌詞のわかりやすさ、わかりづらさのバランス

zopp:作詞のメソッドや方法論をかなりオープンにしていますが、教えても実践できないというか、そんなに簡単じゃないと思うんですよ。僕がやっているプロを目指すサロン(zoppの作詞クラブ)からは、5人に1人くらいがプロデビューしてるんです。でも全員がすべての作品で高いレベルを体現できているかといえば、そうとは限らなくて。オリジナリティが確立できていないと指名で仕事をもらえないし、コンペを抜け出せないんです。

Payao:コンペを抜け出せるかどうか、その差はどこにあるんでしょうか?

zopp:まずは成長を続けられるかどうか。もちろん「サビの最初と最後は重要」などの基本もあるのですが、そこに入れたい言葉がハマらないときに、諦めないで考え続けないといけないので。「他の言葉がない」ということはあり得ないので、思考を止めないことが大事というか。言ってしまえば根性ですね(笑)。

Payao:当たり前かもしれませんが、諦めないのは大事ですよね。お話を聞いていて思ったのですが、たとえプロの作詞家になれなかったとしても、言葉の扱い方を知ることで、日常生活においても良いことがあるような気がします。

zopp:なるほど。

Payao:僕は会社を経営しているんですが、社内のコミュニケーションのなかで「なんでそういう言い方になるんだろう?」と感じることもあって。言葉の使い方、届け方によって人間関係は違ってくると思うんですよ。Twitterでやっている「#深夜の二時間作詩」(毎週テーマを決めてユーザーに詩を投稿してもらうTwitter企画)も、「言葉を使ってクリエイティブなことをやってみない?」という気持ちで続けているんです。Twitterはまさに言葉で成り立っている場所だし、日常で起きたことを詩にして、“いいね”される体験をしてほしくて。そのなかで生活の中のイヤなことを肯定できて、自己受容につながるのかなと。

zopp:いろんなところにヒントがありますからね。たとえば国会中継も「今、この人は言い淀んだ。触れてほしくないんだな」とか、いろんなことが見えてきたり。歌詞に関して言えば、わかりやすい言葉、わかりづらい言葉のバランスが大事だと思うんですよ。すべて理解できてしまうとつまらないし、「ここはどういうことだろう?」という余白を作るというか。どこまで理解できないと聴くのをやめてしまうのか、どれくらい謎めいていれば聴き続けてもらえるのか。そのバランスを日々、いろんな場面で検証していますね。

Payao:わかりやすさ、わかりづらさのバランスは僕も考えるようになりましたね。最初は字面の良さやカッコいい言葉を使いたくなったりしたんですが、それを経て、聴いてくれる方に「自分のこととして考えてほしい」と思うようになって。あえて説明しない部分だったり、急に話が飛んだりすることもあるんですが、それは「半分はこっちで用意するから、あとの半分はそちらで考えてみて」ということなので。

zopp:「理解してもらうのではなく、考えてほしい」というのは僕も同じですね。たとえば「生きろ」とストレートに歌うのではなくて、「この先、生きていったらどうなるだろう?」みたいな問いかけというか。もちろん聴いてもらわないとダメなので、まずは「どう惹きつけられるか?」も大事なんですけどね。最初に話が出ていた「青春アミーゴ」のサビの頭は〈SI〉なんです。それがいい言葉かどうかはわからないんですが、リスナーが「何だろう?」と気にしてくれると思うんですよ。“SI(シー)”って、うるさい人に対して「静かにして」と注意するときに言うじゃないですか。それをサビに持ってくることで、アテンションできるというか。意味というより響きなんですが、日常生活と言葉がリンクすることで、反応してもらえるので。

Payao:確かに〈SI〉は耳に残りますね。zoppさんの分析を聞いても、自分では絶対に思いつかない。

zopp:僕も後から「どうしてこんなに聴かれたんだろう?」と考えてわかったんですけどね。書いたときはそこまで意識していたわけではないので。

Payao:体得されているんでしょうね。運転中にウインカーを出すときのように、頭で考えるのではなく、自然にやっているというか。

zopp:そうかもしれないですね。トライ&エラーを続けて、仮説を立てながら、一つ一つ実践してきたので。他人の作品をチェックするのもいいですよ。自分の歌詞を否定するのは難しいけど、人の作品だったら「これはここが良くないけど売れている。なぜだろう?」って冷静に考えられるじゃないですか。創作の場においては、経験していないことを探すことが大事だと思うんです。いろいろ試しているうちに夢中になって、悩んでいたことを忘れられるのもいいんですよね。

Payao:なるほど。

zopp:Payaoさんは経営もしているのが、すごくいいなと思います。今は現代社会のことを歌詞に入れたほうが伝わりやすいし、実生活のなかにもクリエイティブにつながるものがたくさんあるはずなので。

Payao:ありがとうございます。諦めることなく言葉に向き合い続けて、修練を積んでいくしかないなと思います。

■リリース情報
Payao「線香花火-Remix-」
2022年7月19日(火)リリース
Remixer:今井大介(Daisuke”D.I”Imai)
ダウンロード/ストリーミングはこちら

■関連リンク
Payao公式サイト:https://payao-web.jp/
Payao Twitter:https://twitter.com/junkysugar
zopp Twitter:https://twitter.com/zopp_zopp

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