DEAN FUJIOKAの楽曲が放つ抜群のオリジナリティ 歌&サウンドからポップミュージックとしての強度を読み解く

DEAN FUJIOKA、ポップミュージックの強度

 自らが作詞作曲を手掛けフルアルバムを含めてコンスタントに楽曲をリリース、そして全国ツアーなどを行うライブアクトとしても活動しながら、俳優として数々のドラマや映画で主演を務め活躍するアーティスト、DEAN FUJIOKA。彼のクリエイトする音像は世界的な現行のポップスやダンスミュージックと接近したものであり、「ドメスティックなファンに向けての音楽制作」とは全く違った感触がある。

DEAN FUJIOKA - “Apple” Music Video

 ドラマティックなストリングスから始まり、ほぼビートのみで構成されたBPM120付近の4つ打ちにラップが乗る「Apple」。そのラップパートの言葉は、天使と悪魔、エデンの禁断の果実、パンドラの箱といった神話的モチーフがテーマになり、決して明快とは言い難い。そこに乗るラップも低音と高音のパートを1人でコーラスさせる、より内容に抽象性や多義性を持たせるような、聴感的な印象としても興味深い構成だ。そういったセルフコーラス自体は、去年のヒット曲で言えばリル・ナズ・X「MONTERO (Call Me By Your Name)」などでも聴かれるように、音楽制作においてスタンダードなテクニックではあるのだが、この曲で形にしているくぐもったマンブル的なラップと相まって、そこには現行のサウンドへの意思を強く意識させられる。

Lil Nas X - MONTERO (Call Me By Your Name) (Official Video)

 そういった多義性は〈見えなきゃわからないの〉から始まるパートで主旋律を歌うボーカルに重なるように、ウィスパーなコーラスが被ってくる部分にも感じられる。またフック部分に関しても、スクエアなビートに乗るボーカルパートは、よく聴くとスウィングするような譜割りであったり、後ろノリな言葉の載せ方がされており(それはビートの刻みが変化する2分45秒付近と聴き比べるとより明確になるだろう)、ポップミュージックとしてしっかりと成立しているにも関わらず、いい意味で一筋縄ではいかない曲をドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ×Hulu 共同製作)の主題歌として提示する意気込みには驚かされる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる