観月ありさ、『Ali30』でリンクする過去と今の自分 新しい音楽で表現した、これからの“観月ありさらしさ”
1991年にシングル『伝説の少女』でデビューした観月ありさが、アーティスト活動30周年を記念したアルバム『Ali30』をリリースした。モデル、俳優として活躍しながら、そうした活動の中心にはいつも音楽があったーーそんなアーティスト・観月ありさの音楽愛が存分に感じられる作品だ、30年以上のキャリアで培ったもの、新しい世代との交流やこれまでトライしてこなかった表現などが、全15曲、作品の隅々に込められている。
各楽曲、そしてアルバムというフォーマットへのこだわりなど、より良い作品を目指す観月の意欲溢れる姿勢に迫る。(編集部)
私が50歳、60歳になってもずっと歌っていけるような曲が集まった
ーー遂に、歌手デビュー30周年記念アルバム『Ali30』がリリースされましたね。
観月ありさ(以下、観月):ありがとうございます。今作は11年ぶりのアルバムということもあり、ファンのみんながとても楽しみにしてくれてて。Instagramで「私はこの曲が好き」と推し曲のコメントもいただいています。
ーーちなみに、どの曲が人気ですか?
観月:Novelbrightさんが書いてくださった「サジタリウス」は、やっぱりアルバムのリード曲なだけあって、推し曲と言ってくれる方が多いですね。その他は鉄板でもありますが、小室哲哉さんの「TOO SHY SHY BOY! (TK SONG MAFIA MIX)」。あとは「mint leaf」も人気が高いです。
ーー「mint leaf」は音像やコーラスワークも含めて、90年代のR&Bを彷彿させる楽曲ですね。
観月:私たちの世代はあのサウンドって聴き慣れているし、今聴くと懐かしい感じもして、とてもとっつきやすい楽曲なんです。逆に、若い世代の方たちは新しい印象を受けると思うんですよね。個人的にはクラブとかイベントのときに、DJの方が場を盛り上げるのにかけてくれたら、すごくピッタリじゃないかなって。
ーー今回アルバムを作るにあたって、どのようなイメージを持っていましたか?
観月:ジャンルを絞って作ろうかなとか、テイストを決めて作ろうかなとか、色々と考えたんです。だけど、観月ありさって今まで錚々たる方たちに楽曲を提供していただきつつ、ジャンルというものにこだわったことはなくて。アップテンポもスローテンポも歌うし、それこそポップなものからダンスミュージックまで幅広いジャンルを歌ってきたから、そこまでジャンルにこだわらなくても良いのかなって途中でハッと思って。観月ありさらしさを考えたら、やっぱり色んな楽曲が入っている方が面白いと思うんです。テイストにこだわらず「今の観月ありさが表現したい曲」、「ファンの方たちに聴いてもらいたい曲」を集めました。本当に何十曲聴いたんだろう!……って、耳がおかしくなるぐらい聴き漁りましたね(笑)。
ーーそれだけ厳選されたアルバムであると。
観月:今回はたくさんの楽曲の中から、自分の好きなテイストを選ばせていただいて、やっと1枚のアルバムになったんです。途中で分からなくなってきちゃって「んー、こういうのも良いかもしれないな! いや、どうかな?」みたいなこともあって(笑)。色々と迷いながら、新しいものを求めて旅へ出ていった感じでしたね。
ーーあまりやってこなかった制作方法ですよね。
観月:そうですね。これまではアーティストの方に自分からオファーをして「こういうテイストにしたいです」と具体的なイメージを伝えた上で、お願いすることが多かったんです。逆に、今作は今の音の作り方や、アーティストの方達が観月ありさをどういう風に切り取って表現してくれるのかにすごく興味があって。何十曲も聴いた中から選ぶことってあまりしたことがなかったから、そういう意味では今までと違う向き合い方をさせてもらいましたね。
ーー「自由に書いてほしい」というオーダーだったからこそ、Novelbrightの沖総次郎さんも気合が入ったと言ってましたね。
観月:Novelbrightさんには「アップテンポの“良い曲”をお願いします!」みたいなアバウトな感じでお願いして、本人たちはかなり驚いていたみたいですけど(笑)。確かに「良い曲を書いてね」なんてまっすぐに言われると「大変だ!」ってなりますよね。でも、それが功を奏したと言いますか。枠組みに囚われず、広い視野で曲を書いてほしかったから、結果としてはすごく良かったなと思います。他にも「ありきたりなキセキ」を書いてくださったBEGINの島袋優さんには、ゆったりしたテンポの曲を書いてもらいたかったので「スローテンポでお願いします」くらいの大まかなお願いだけをして。その結果、長い目で見たときに、私が50歳、60歳になってもずっと歌っていけるような曲が集まったと思うんですよね。
ーー「サジタリウス」を初めて聴いたときは、どんな印象をお持ちになりましたか?
観月:率直にすごく良い曲だなって。メロディラインがしっかりしてて、私の年代の女性が歌ってもポップにもロックにもなり過ぎない、とても優しいポップなロックチューンだと思いました。ただ、いざ歌ってみると……聴いているよりも数倍速くて! これが今の作り方なんだなと感じましたね。歌詞の乗せ方とかテンポも含めて、速いんですよ。一度「ちょっとテンポを落としませんか?」と聞いてみたんですけど「いや、これでいきたいです」と言われて(笑)。
ーーそこで意志を曲げないのはすごい。
観月:特に、沖さんの中で明確に見えているイメージがあったんだと思うんです。メロウな曲調なので、ミディアムテンポにしても、スローテンポにしても良い曲になったとは思うんですよ。だからこそ、やっぱりテンポ感を上げておかないと爽やかなロックチューンにならないし、この疾走感は生まれなかった。今となっては、テンポを落とさなくて良かったなと思います。
ーー何と言っても「サジタリウス」は、観月さんと奇跡的なリンクをしているんですよね。
観月:そうなんですよ! 私が射手座だから「サジタリウス」にしたのかと思いきや、私の星座を全然知らなかったという。お会いしたとき「この人に射抜かれそう」みたいな印象があったのかな(笑)。射手座特有の勢いみたいなものを感じてくれたのかもしれないです。とはいえ偶然「サジタリウス」になっただけで、違う星座でも良かったはずなんですよ。だけど、沖さんはこのタイトルにした。そう思うと、すごい奇跡のような……運命的なものを感じますよね。そういう作品との巡り合わせと言いますか、運命を感じる作品がこれまでもたくさんあって。それが音楽をやる楽しみの1つでもあるんです。
ーーそれとMVも魅力的で。これまでのMVは物語性が高くて、観月さんだけが映り続ける内容が多かった。ところが「サジタリウス」のMVは、登場人物も多いし、内容も今までにないテイストになっていますね。
観月:初めて楽曲を聴いたときから、映画のようなストーリー性が高いMVにしたいと思っていました。おっしゃったように私のMVって、割と自分が出てくる映像が多かったんですけど、今回は私だけじゃなくて、色んなシチュエーションや配役を置きたくて。
ーーそれが作品に奥行きを与えた。
観月:ストーリーも自分で考えたんですよ。今の自分が過去の自分を思い返していたら、目の前に少女だった頃の私が出てくる。過去と今の自分がリンクする作品にしようと。そこから監督さんに「今のAI技術を使って14歳の観月さんと対面させましょう」と提案していただいて、あの映像になりました。
ーーラストで少女の観月さんと現在の観月さんが向かい合うシーンは感動的でした。
観月:面白いですよね! 14歳の自分がああやって動いているのが、すごく不思議な感覚で。撮影しているときは、高校生の女優さんと並んでお芝居をしているんですけど、完成したMVの中では自分と見つめ合っている。なんて面白い映像なんだろうと。しかも、当時の私が本当に着ていた衣装を取り寄せてくれたりして、まさに14歳の頃の私に近い雰囲気になっているんですよ。撮影中も「そういえば、こんな感じのファッションをしてたな!」と記憶が蘇ってきて。自分ながらに懐かしさもありつつ、画期的で新しさのあるMVが作れて大満足です。