AKB48はなぜ学生や街の人たちとコラボする? 元祖“会いにいけるアイドル”としての役割

「恋するフォーチュンクッキー」「心のプラカード」でも一般の人と共演

【MV full】 恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式]

 AKB48はこれまで、今回のように一般人と何度か共演をしてきた。特によく知られているのが「恋するフォーチュンクッキー」(2013年)のミュージックビデオである。同作は福岡市内でロケが行われ、4000人ものエキストラと一緒にパレードをする様子が映し出された。そのほか、学生、買い物客、タクシー運転手などさまざまな一般人も登場し、「恋チュン」のダンスを踊っている。同曲の振付が「子どもから大人まで誰でも踊れる」というコンセプトをもとに制作されたことから、そういった演出が実現した。

【MV full】 心のプラカード / AKB48[公式]

 「心のプラカード」(2014年)のミュージックビデオも、静岡の次郎長通り商店街を中心に、港、学校などがロケ地となり、そこで働く人や学生たちが撮影に参加。こちらでも一緒にダンスを踊ったほか、口では伝えづらいことをプラカードに書くというテーマで、一般人がさまざまなメッセージを文字にして掲げた。

「AKB48の曲は誰でも気軽に挑戦できる」というイメージ付け

 なぜAKB48は、活動初期から一般人との共演を重視するのか。ひとつは「AKB48の曲は誰でも気軽に歌ったり、踊ったりできる」という印象を持ってもらうためではないだろうか。

 2000年代後半より「歌ってみた動画」「踊ってみた動画」が広がり始めた。なかでも「踊ってみた動画」の流行により、多くの人にとってダンスが親しみやすいものになった。また2012年には、学習指導要領改訂で中学校ではダンスが必修化。現在はTikTokやYouTubeの効果もあって、経験者ではなくても、より気軽にチャレンジできるようにもなっている。AKB48の活動は、そういった時代性とちょうど並行している。

恋するフォーチュンクッキー 神奈川県 Ver. / AKB48[公式]
心のプラカード STAFF Ver. / AKB48[公式]

 一般人との共演で与えられる印象は、「AKB48の歌やダンスは誰でも楽しめる」、「みんなで一緒に踊れる」ということ。たとえダンスに不慣れでも、「恋するフォーチュンクッキー」や「心のプラカード」で誰もが賑やかに踊っている動画を観れば、「自分もできるかも」とアプローチするきっかけになるかもしれない。実際に2曲は様々な企業や自治体が「踊ってみた」として多くの動画を投稿している。「踊ってみた動画」以外でも学校行事、地域のイベント、結婚式の余興などでAKB48の曲やダンスがよくセレクトされる理由も、そういう部分にあるように感じる。AKB48と一般人の共演映像を鑑賞すると、自分たちがその曲で踊っている姿や、それを観ている人たちのノリがイメージしやすいのではないか。

 一般人との共演映像は、「自分もこういう風にやってみよう」とチャレンジさせる架け橋のひとつになっていると推測する。

「たくさんの人と出会いたい」というグループの願い

 もうひとつは、やはり「会いに行けるアイドル」というAKB48のテーマとの関連性である。

 ファンは劇場公演、握手会などでメンバーに会うことができる。しかしファン以外の人たちは、なかなかそうはいかない。ただ、メンバーと一般人が垣根をなくして交流する光景を映像で観せることで、「自分も会いに行ってみようかな」と興味を芽生えさせることができるかもしれない。つまり一般人との共演映像には、「もっとたくさんの人たちと出会いたい」というグループの願いが込められているのではないか。住んでいる場所、立場、年齢など関係なく、いろんな人と接点を持っていきたい――そういう想いのあらわれだと考える。

 今後はどんな形で一般人との共演が実現するのか、楽しみにしたい。

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