フィロソフィーのダンス、会場を“愛”で埋め尽くした幸せな空間 現体制最後の全国ツアーファイナル公演

 日向ハル、奥津マリリ、十束おとは、佐藤まりあの4人からなるアイドルグループ フィロソフィーのダンス(以下フィロのス)が、6月26日に東京・TOKYO DOME CITY HALLにて、全国ツアー『Love 4 You TOUR 2022』のファイナル公演を行った。

 今年4月27日にメジャー1stアルバム『愛の哲学』をリリースしたフィロのス。5月14日の新潟公演を皮切りに、全国12カ所をめぐるツアーを開始。愛知、大阪、東京の3公演はバンドセットでのライブで、キャリア初のホールワンマンとなったファイナルもチケットはソールドアウト。またメンバーの十束が11月をもってのグループ卒業を発表しており、“ベスト・フォー”を自認する彼女たちにとっては、7年間に及んだ現体制として最後の全国ツアーにもなっていた。

 フィロのスのライブは入場BGMも注目ポイントで、毎回早めに会場に入り席に着いているのだが、この日もニッキー・ミナージュ「スターシップス」やシャニース「アイ・ラブ・ユア・スマイル」、TLC「ウォーターフォールズ」、Destiny's Child「サバイバー」、The Bangles「エターナル・フレーム」など、グルーヴィな洋楽で楽しませてくれた。

 やがて、開演の予定時間になりマドンナ「ハング・アップ」がかかると、客電がついた状態のままドラマーがステージに上がり、アウトロのビートを引き継いだ。さらに、南国の鳥の鳴き声が響く中で照明が落ちていき、ピアノ、ギター、弓弾きのベースも加わったところで、舞台中央に位置していたロゴ看板が上部へと引き上げられる。そこでバックライトに照らされたメンバー4人が登場。日向がピアノの伴奏のみで〈世界でいちばん眩しい/今を〉と高らかに歌いあげ、続く〈私は生きている〉で3人がハーモニーを重ねた。奥津が「世界でいちばん幸せな場所、TOKYO DOME CITY HALLへようこそ」と声をあげ、ライブはアニメ映画『フラ・フラダンス』の主題歌「サンフラワー」で明るく幸福感いっぱいに幕を開けた。

 フィロのスらしいユニークな振り付けとフラダンスの要素を取り入れた華やかなフィリーソウルのサウンドに続き、エレキギターのリフに合わせて、日向が「でっかい愛を届けにやってきましたー! 世界でいちばん楽しい夜にしましょう」と呼びかけると、総立ちになった観客からクラップが沸き上がり、「ロック★with you」を熱唱。佐藤と十束がスポーティーなハイキックを繰り出すと、日向は二人が土台となった組体操からの開脚ジャンプを見せ、奥津とはロングトーンでバトル。自然と拍手が上がった後で、奥津は〈その目に焼き付けろ〉と絶叫。今、この瞬間を輝かせてくれるパフォーマンスで、冒頭から観客全員の拳を上げるほどの盛り上がりをみせた。

 最初のMCではそれぞれが挨拶をした後、十束が「みんなの人生最高の日を更新しにきました!」と宣言。佐藤が「皆さんに、今日という日が人生の中で一番楽しかったと言ってもらえるくらい、私たち、全力で踊らせたいと思いますので、皆さんついてきてください!」と叫ぶと同時に、そのまま「ダンス・オア・ダンス」へ。スイングするミュージカルナンバーで、横になった奥津が佐藤と十束に運ばれると、日向はアクロバティックな側転を披露し、観客とはクラップを使ったコール&レスポンスで会場全体を1つにしてみせた。そして、「エポケーチャンス」と「バイタル・テンプテーション」を繋いだファンクミックスでは、広いステージを立体的に使用。奥津はステージ下手の前方に座って艶やかに歌ったかと思いきや、上手のドラムに移動してシンバルを叩くなど、メンバーそれぞれが散り散りになって全方位で楽しませた。十束のスイートなウィスパーボイスが際立つシティポップ「テレフォニズム」のアウトロでは、日向と奥津が見事なフェイクを展開し、場内は大きな拍手喝采で包まれた。

 電話を使った声のみのショートコントを経て、アルバム衣装からパジャマに着替え、“爆飲み打ち上げ”ならぬ“ティータイム”という名のパジャマパーティーへと突入。「マーヴェラスおとは」による恋みくじで心の観覧車をぐるぐる回したり、奥津が「記憶がなくなるまでを飲みたい」とこぼすなど、メンバー同士でずっとふざけ合っている姿はまるで普段の楽屋のよう。終始、笑い声の絶えないやりとりからは4人の仲の良さも伝わってきた。客席のファンにも自然と笑顔が伝播し、フロアがまさに友達同士が集まったホームパーティーのような雰囲気になる中で、メンバーは木製のハイバックチェアに座る。するとmihimaru GT「気分上々↑↑」をメロウにカバーし、リラックスしてスロウダウン。続いて、奥津が「今日はハルちゃんの運命の人を見つけるぞ!」と意気込み、「誓い合ったんだってね、LOVE」では客席の中に運命の人を見つけた日向が「幸せになろうね」と笑顔でプロポーズ。ハッピーなムードのまま、インスト曲「FUNKY BUT CHIC」に合わせて、一人ずつパジャマを脱いでいき、シルバーの衣装への生着替えを披露した。

 ベースのスラップに合わせてクラップと拳が上がった「アイドル・フィロソフィー」からは、後半戦へ。オルタナティブR&Bにアレンジされたインディーズ時代の代表曲の1つ「シスター」では十束と佐藤が切なく美しいハーモニーを響かせ、ゴスペル調のソウルバラード「ジャスト・メモリーズ」では、ピアノ伴奏による日向のソロを基調に3人がコーラス隊を務めるという編成で歌唱。奥津のパートを含め、純粋に歌声だけで聴き手を感動させる彼女たちのボーカリストとしてのポテンシャルの高さを見せつける場面だった。

 ここで奥津が「愛に溢れた、本当に幸せなツアーだったね」と振り返り、メンバーと「楽しかったね」と声を重ねた。さらに、「このグループに入る前、ソロで歌ってた時は、仲間なんていらないと思ってたし、音楽なんてやめちゃおうかなと思っていた時がありました。あの時やめていたら、こんな素敵な仲間に出会えず、大好きなスタッフさんやみんなにも会えなかったんだなと思うと、本当にあの時にやめないで、一人で頑張っていてくれた自分を褒めてあげたいなと思います。私は本当に今が、人生で一番幸せです。ありがとう。これからもみんなのことを容赦なく愛していきます」と感謝の気持ちを伝えた。

 佐藤は、「このツアーで愛について考えることがものすごく増えて。私にとっての愛はなんだろうなって考えた時に、最初に浮かぶのは、フィロソフィーのダンスとファンの皆様のことであって。うるさいくらい賑やかで頼もしいメンバーのことが大好きだし、そんな私たちについてきてくださるスタッフさん、今日まで応援してくださった皆様のことが大好きです。この4人での活動は限られていますが、限られているからこそ、この4人でしか見せれられない方法で皆さんに愛を伝えていきたいし、これから新しくなるフィロソフィーのダンスも皆さんに愛していただけるように、一生懸命、真面目に頑張っていくのでつていきてください」と未来に向けた決意を語った。

 日向はメンバーの顔を見ながら、「ずっと甘えることのできなかった私が人を愛することや人に弱さを見せることを知ったのは、このグループに入ったおかげです。本当に7年間、一緒に頑張ってきた仲間がこの3人でよかったなって改めて思います。本当に3人とも、どんな時も味方でいてくれてありがとう」とメンバーに向けて語り、ファンに対しては「不器用ながら、ファンのみんなへのお返しは最高の音楽を届け続けることだと思っています。これからもみんなに最高の景色を見せ続けることを約束します」と誓った。

 4人での最後の全国ツアーのファイナルを迎えた十束は、涙で声を震わせながら「本当にフィロソフィーのダンスに入ってよかったな、メンバーに出会えてよかったなということと、ファンのみんなが本当に大好きです。7年間、何を誇りに頑張ってきたのかなと思ったら、みんなが喜んでくれる姿を見ることが一番幸せで。みんなは私にとって、心から誇れる存在です。私のアイドルとしての命は残り数カ月しかないんですけども、みんなが一生思い出せるくらい大きな愛を精一杯、届けていこうと思います。そして、私がいなくなった後のフィロソフィーのダンスも、もっともっとみんなに愛されるグループになるように心から願っています。まずは、今日ここに足を運んでくれて、私たちを好きでいてくれて、ありがとうございます」と語り、深々と頭を下げると場内からは温かい拍手が起こった。

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