SOMETIME’Sが「Clown」で踏み出した新境地 尊敬するNakamuraEmiとの2マンへの熱い思いも語る
毎回強力なゲストアーティストを迎える『SOMETIME’S Presents 2022 2man Live Series “League”』が好評の、SOMETIME’Sから届いたニューシングル。「Clown」は、洗練されたシティポップの衣をまといつつ、ロックな歪みと絡みつくようなグルーヴ、そして恋愛下手な男の純情をズバリとえぐる歌詞が、耳について離れない魅力的な1曲だ。新境地へと踏み出した心境と、楽曲に込めた思いについて、そして6月17日に渋谷WWW Xで開催される第2回『League』のゲスト、尊敬してやまないNakamuraEmiについて。NakamuraEmiから二人へのメッセージを含む、SOMETIME’Sの現在地を確かめる最新インタビュー、しっかりチェックしてほしい。(宮本英夫)
「Clown」はサウンドも歌詞もSOMETIME’Sの新境地に
――ニューシングル「Clown」は、都会を舞台にした、ファンクでメロディアスなグルーヴチューン。お洒落なシティポップ感と、SOTAさんのねばっこい歌い方が、不思議なバランスの良さを感じさせる曲です。
SOTA:もともと前作「Somebody」と同じ時期にデモはあって、自分ではそこまでな印象だったんですけど、サビのメロディが良くも悪くもずっと頭に残っていて。このねちっこさが、聴いてくださる方々の耳にへばりつく力があるんじゃないか? と思って、テンポを落としてお洒落な感じにしたら、功を奏していい感じになりました。先に「Somebody」があったので、明るい曲のあとにはこういう曲調がいいんじゃないか? というふうになっていきましたね。
TAKKI:「Somebody」の時には、デモの段階で全体のサウンド感が見えていて、「絶対いい曲になる」という確信があったんですけど、今回はかなり悩みました。しかも最初のSOTAのギターへのオーダーが、「胸毛生える系のギターで」だったんですよ。
――意味がわかりません(笑)。何ですかそれ。
SOTA:そこだけかいつまんで話すと、俺が変な奴みたいじゃない(笑)。二種類のギターを入れた音源が送られてきて、「きれいに脱毛してあるほうか、胸毛のあるほうか」みたいなことが書いてあったから、「だったら胸毛生えるのほうが好き」って言ったと思う。
TAKKI:違う違う。「胸毛系」って先に言われたから、脱毛バージョンを作ったの(笑)。とりあえず胸毛バージョンをやってみたんだけど、自分の中で辻褄が合わない部分が増えてきちゃって、SOTAに送る時に「脱毛したバージョンも弾いてみたから」って、2パターン出して、「やっぱり胸毛系のほうがいいな」ということになった。
――ああ。なるほど。
TAKKI:もともと自分はギターをジャカジャカ弾いてきたほうなので、初心に戻るというか、しっかりと歪んだ音にしてみたんですね。1st EP『TOBARI』にはそういう音も入れていたんですけど、去年の1st アルバム『CIRCLE & CIRCUS』ぐらいから、ギターのアプローチが軽くなってきたので、久しぶりにロックのアプローチでやれればいいなと思って挑みました。今回、SOTAが自分で歌詞を書くことを決めていたので、自分はギターに集中できました。
――食い気味に入ってきて、サビ裏、ずっと歪みギターですもんね。
TAKKI:久々にジャカジャカ弾けて、楽しかったです。
――ギターは胸毛系で、でもギター以外のサウンドは、ソフトで洗練されたアプローチで。どっちも入っていると思います。
TAKKI:最初はイントロもがっつり歪んだギターで行く予定だったんですけど、アレンジャーの藤田道哉の作りたい世界との折衷案ですね。リファレンス(参考音源)もいろいろ出しあって、聴きあって、という感じだったので。
――リファレンスは、たとえば?
TAKKI:松任谷由実さんの80年代後半くらいの作品がほとんどでしたね。ゲートリバーブ感のあるスネアと、一番上の音域でフルートやソプラノサックスを使ってみたらどうかな? という話をして使ってみました。今までは、管楽器がメインリフになることが多かったんですけど、ギターリフの歌に菅楽器でオブリガート(主旋律を支える助奏)を入れてみたらどうかな? とチャレンジしました。
――歌詞がまた独特です。それをラップのように韻を踏みまくって、R&Bのようにメロディアスに歌い上げている。
SOTA:「いかにサビが耳に残るか?」が今回の賭けではあったので、意味合いというよりは、どれだけ耳にへばりつくかを考えていました。サビの「いいだばし~」の部分は最初から歌っていて、仮タイトルも「飯田橋」だったんですけど、さすがに〈飯田橋〉のままで最後まで行くとは思ってなかった(笑)。
――サビの脚韻を「あ・あ・い」でずっと踏んでいくライム。〈市ヶ谷過ぎたら飯田橋/変わることのないその並び〉のところが最高です。そりゃそうだろうと(笑)。
SOTA:決定的に変わらないところが、恋が成就しない感じとリンクしていて、いいかなと思ったんですね。
――おお! なるほど。じゃあそのあとの〈水道橋から飯田橋〉も。
SOTA:結局、どっちから行っても変わらないぞということですね。映画の『ジョーカー』の主人公かのように、本当は傷ついているけど、へらへらして表には出さないような感じも意識しました。
――タイトルの「Clown」は、直訳すればピエロ、道化。
SOTA:そうです。そのイメージに引っぱられた感じはあります。
――そういう男性像って、SOTAさんの自画像に近いところはありますか。
SOTA:そうかもしれないですね。若い頃は、プライドなんて全然ないと思ってたんですけど、30過ぎて冷静に考えてみたら、けっこうプライドが高いほうだなということに気がついた(笑)。本当はプライド高い奴が「プライドなんてないです」って言うのは、ダサいじゃないですか。
――それは、男女間の問題についてですね。
SOTA:この歌詞は、全然モテない人をイメージして書いたんですけど、見栄を張って、好きな人の前ではきらびやかにしてみたり、だいぶ背伸びした発言をしてみたりする。さすがに僕は女の人の前でそこまで変なことを言ったりしないですけど(笑)。でも、自分を取り繕いたいみたいな気持ちはあるので、そこは自分に近い部分もあるかもしれない。でも最近、アーティストとしてそれは正解なのか? と考えることもあったりして。
――というと?
SOTA:やっぱりかっこ悪いものには誰もついてこないじゃないですか。自分はプライベートもあけすけにしてるんですけど、その反面、決めるところはしっかり決めてバランスをとっていかないと、という気持ちはもちろんあって。そのへんは難しいなって、ちょうど考えていた頃に書いていた詞ですね。
――やっぱり自伝ですね、そう考えると。この歌詞は、ユーモラスな表現でありつつ、グっとくる人はけっこう多いと思いますよ。
SOTA:新しいフックにはなると思うし、今までとは違う変化球を投げたつもりなので、この曲が新しいリスナーを連れてきてくれたらうれしいなと思います。
TAKKI:どこに刺さるかわからないけど、ワンチャンあるんじゃないか? という期待もしつつ、刺さらなかったらどうする? みたいな話もしたり(笑)。でもクオリティには満足しているし、いいものができた自信はあります。何事も、今までと違うことをするのは勇気がいることで、これがいい結果を生めばいいなと思っています。