MACO、ライブという居場所で音楽を届ける喜び ありのまま力強く歌い切った『Acoustic & Pop』ツアーファイナル

MACO『Acoustic & Pop』ファイナルレポ

 ここから8分間の休憩に入ったが、すぐにMACOの“天の声”が流れてきた。開演1時間ほど前に収録したラジオだ。ツアーの思い出などメンバーとの賑やかなトークが繰り広げられている。どうやらこの企画はツアー先各地でやってきたようで、メンバーはトーク相手として日替わりで登板していた模様。こうしたやり取りから関係性が見えると、より親近感を持って音楽に耳を傾けたくなる。

 「後半戦スタートです!」と再登場したMACOは、一部と180度違うダメージデニムのヒップホップな装い。待ち構えていたように「運命共同体」で客席は総立ちに。パキッとしたリズムに包まれて、ラップに近いメロディを歌うMACO。こういった低めのトーンもまた魅力的なのだ。続く「lonely」は、〈買ってみたストロングゼロ〉や〈クソみたいな恋が終わって〉など強い言葉がたくさん出てくるのに、それとは裏腹な切ない気持ちがフィーチャーされるというMACOらしい歌。大きな手拍子が気持ちいい。「NATURAL LOVE」では今度はゆったりとしたワイパーが自然と湧き起こった。それをライトが照らし出し、MACOも心底嬉しそうだ。気持ちの上昇とともに飛び出すちょっとしたフェイクもカッコいい。カラフルな光に彩られた「We Gonna Be Happy」まで、まずはノンストップで二部の頭の4曲を駆け抜けた。

 頰を紅潮させて「ライブっていう感じがしてきましたね」とこれ以上ないほどの破顔になるMACO。弾んだ気持ちを目一杯に表現するように、「夏風邪」「タイムリミット」と跳ねるリズムのラインナップ。これがMACOのガーリーなヒップホップ・ファッションとドンピシャだった。特にBPMの上がったアシッドジャズ風哀愁ラップの後者は、大人っぽくもあって聴きごたえ満点。モータウンビート炸裂のファンキー&ファニーな「交換日記」もベストマッチだ。

 「盛り上がってくれてありがとう! 声が出せなくても熱気で伝わるのが嬉しかったです」と大興奮のMACO。その熱気を逆のベクトルに凝縮させて、ここからバラードを2曲届けた。ドラムが再び深い音となり、まず「手紙」。一つひとつの言葉から主人公が描く回想シーンがドラマのように見えてくる。その景色をふっとめくるようにウィンドチャイムが響き、「End Love?」へ。地声とファルセットが絶妙にブレンドされた非常に難易度の高い曲だ。技術力のいる曲とも言えるが、MACOはそれを誇るでもなく、衒うでもなく、ただひたすらに歌を、思いを紡いでいく。胸を打つ素晴らしい歌唱だった。

 「あっという間の時間でした。最後まで緊張してたけど、ここまでこれたのはみんながいてくれたおかげです。ありがとう!」と、独特の静かなトーンで感謝を伝えたMACO。「アルバムで一番好きな曲で楽しく終わりたいなと思って。みんなへの最初のラブレターです。では、最後の曲……」と言いかけて、急に「ああ、終わりたくなーい!」と駄々っ子のようになったのが可笑しかった。大きな拍手でエールを送る観客。オープンでアーシーな「これは君への最初のラブレター」は、今だからこそライブという特別な出会いの時間を、会場の全員が分け合う1曲となった。リプライズでは一人ひとりに向けて〈私の大切な人〉と歌いかけたMACOは、「みんなの拍手は宝物。いいファイナルだったと思います」と、爽快な笑顔で本編を終えた。

 アンコールは、先に出てきたメンバーが会場を煽って「LOVE MYSELF」からスタート。自らのヒット曲「LOVE」をサンプリングしたこの曲は、私小説的な要素も含んでいる。2番になったところで急に何かこみ上げたのか、しばし歌えなくなる場面も。曲が終わったあと、「泣かないって決めてたのに、ママとパパのくだりでウルッてきちゃって」と心情を吐露したMACO。それこそがまさに歌詞の通り、〈生きるってこういうことなんだ/泣いて笑って泣いて〉だよねと、こちらもしみじみと感じ入った。

 ラストは『Promised.』からの「愛」。「音楽と距離を置いていた時期もあったけど、ここが居場所だよって言ってくれたのはみんなだった。スタッフが、チームが、ただMACOでいいよと言ってくれた」と語り、心からの「ありがとう」を歌に託すMACO。立ちすくんでしまったことも、居場所が見えなくなってしまったこともきっとあったに違いない。でも今、紛れもなくステージの上に立てている。昂る安堵感を胸に、見守ってくれていた一人ひとりに「愛、溢れてたよ!」と叫ぶMACO。晴々としたその姿をギュッとハグするように、鳴り止まない拍手と温かい光が包んでいた。

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