オサレカンパニー 茅野しのぶに聞く、アイドル衣装の役割 着用者に寄り添った制作の舞台裏も明かす

オサレカンパニー、アイドル衣装制作の極意

衣装の役割は着用者が自信をもってステージに立てるようにすること

――YouTubeでもAKB48の元メンバーや現役メンバーの衣装の解説などをされていますが、一人ひとりに似合う衣装というのはどのように考えていくんですか?

茅野:コミュニケーションはよく取りますね。こういう色が似合いそうとか、この形が似合いそうとかって第一印象で分かるじゃないですか。それが本人の好きなものと一致すればいいんですけど、一致しないときもあるんです。袖を短いタイプにして二の腕を出したほうがいいと思っても、絶対出したくないんですっていう人もいる。そこは無理強いしたくないなと思っています。そもそも衣装の役目というのは、一つはプロデューサーや依頼していただいた方のイメージするものを作ること、二つ目はファンや世間に視覚から印象を伝えること。三つ目が、着用者が自信をもってステージに立てることだと思うんです。

 芸能人って繊細な人も多いんですよ。人によってはSNSの言葉とかですごく傷ついたりして、ステージでも自信を持てないときがあったりするんです。その時に衣装を着て「今日の私は可愛い、格好いい」って自信をつけてステージに立って、普段のパフォーマンス以上のことを披露できたらファンも嬉しいし、本人も自信がつく。だから、あまりフィッティングのときに無理強いはしないようにはしています。でも提案をすることはありますね。

 ゆきりん(柏木由紀)みたいに提案を全て受け入れてくれるタイプの子もいるし、自分の個性や自分の中での取り決めがある子もいるので、それは本人を尊重します。私たちから見るとメンバーがたくさんいても、メンバーからすれば私は彼女達にとって1人の衣装担当なので、フィッティングするときはどんなに時間がなくても向き合うようにしています。

――そのほか、衣装制作で大事にしていることは?

茅野:衣装制作で大切なのは、ときめきと驚きだと思っていて。AKB48で言うなら、「ヘビーローテーション」を発売の翌年にもう一回テレビで披露することがあったんですけど、発売したときに何度も歌ってるんですよ。だからただもう一回歌っても、「なんだ、『ヘビロテ』か」となってしまう可能性があるじゃないですか。そのときはテレビ局に、MVの猫の衣装を着るのはどうですかと提案しました。でも新曲の次にそのまま披露する流れだったので、着替える時間はないんですよって言われて。それを聞いて「これはチャンスだ」と思いました。衣装を作る上で、そうなるわけがないって思っていることをやった方が人は印象に残ると思うんです。「絶対成功させるので」と言って、衣装を早替え加工にしてメンバー本人たちにも頑張ってもらって、猫の衣装を取り入れました。そうしたら今でいう“バズリ”みたいになったんです。

 それから衣装を作る上で、人の目に触れた時に賛否両論含め周りと話ができることも必要だと思っていて。「この衣装はこうでよかった」とか、「このMV可愛くない?」とか、「私はこの衣装は好きじゃなかった」とかでもいいんです。スルーされることが一番悲しいので。だからどんなに良い衣装が生まれても、そこから壊してさらに構築して、発展していくという考え方でいたいなと思っています。

衣装業界を目指す若い人への環境づくりは続けたい

――オサレカンパニーは現在、学校制服や医療制服などアイドルの衣装に限らず制作されていますが、今後挑戦したいことはありますか?

茅野:ありがたいことに衣装業界を目指す若い子たちが多くなってきているので、若い人たちが夢を諦めずに才能を伸ばせる環境を作りたいなというのはずっと思っていますね。若い子が才能を伸ばす場所を作るために会社にしているというのもあるんですけど。22歳の何者でもない私を秋元さんが信用して任せてくれたから私はたまたまチャンスを掴むことができたので、秋元さんに感謝しているんです。ただ今はSNSもありますし、チャンスの場はいっぱいあると思うんですけど、その分一回SNSで評価をされたらそこから挽回したり変化するのが難しい時代にもなってきているかなとも思っているので、若い人への環境づくりは続けたいですね。

 あと最近、個人の方に特別な日のための衣装を作ってあげたいなって思っていて。もちろん大変だとは思うんですけど、ウェディングだったりその人の大切な日に向けて一緒に打ち合わせして、卒業ドレスを作るみたいな感じでやれたらなって。元アイドルの子とかからもウェディングドレスを作ってほしいと頼まれることもありますし。人それぞれ似合うものって違うと思うし、ただ実際一人ひとりに合わせていくのは難しいと思うんですよ。でも衣装業界でやっていたからこそそれができたらいいなと。

 あとは違う分野で言うと、社会貢献したいという気持ちがすごくあって。新しい事業をやっていきたいなっていう思いがあるんですよ。うちの会社は女性が多いんですが、女性が活躍する世の中にしたいということも含めて、やりたいことを選択できる世の中、日本にいて幸福感を感じられる世の中にできるといいなと思うんですよね。

 あとは高齢化社会の中で、例えば65歳過ぎたりして定年退職しても元気なんですよ皆さん(笑)。だからこそ若い頃にやれなかったことを始めたりする趣味を始めるためのきっかけ作りというかプラットフォームというか……それになかなか新しい損得がない友達ができにくかったりする中で趣味を通じて損得のない友達ができるのもいいんじゃないのかなと思ったりするので……私もお花を習いたいし、友達が欲しい(笑)!

――衣装にこだわらず?

茅野:はい。アイドルファンの方ってすごく羨ましいなと思って。損得無しに推しが好き同志という点のみで仲良くなるし、中には結婚しているファンもいるんですよ!!

 衣装だけじゃなくて、色々な方々との出会いやエンタメの素晴らしさ、普通に生きてきたら見れなかった景色を見てきたからこそ、人が「案外毎日が悪くないな」と思うような生きがいを作れたりするようなことを一生していきたいなと思うので、この記事を読んでくれて興味持ってくださった方、連絡お待ちしております(笑)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる