新連載「lit!」第5回:RhymeTube、BudaMunk & Jansport J……ヒップホップシーンで活躍する国内プロデューサーの良作

BUPPON, ZIN & Kojoe『Scent』

 Kojoeは優れたアーティストであり、個性を持ったプロデューサーでもある。4月にリリースされた本作で、全楽曲のプロデュースを手掛けるKojoeは、相変わらず都会的なセンスを放ちながら、アルバムとしてはメロディアスなR&B路線に振り切っている。全体を優しくリードするピアノ演奏や、ゴスペルチックなコーラスをはじめとする演出が、BUPPONのラップとZINの透き通った歌声が放つケミストリーをさらに昇華させる。また、6曲目「Good die young」は北野武映画での久石譲のスコアを思い出させるようなサウンドとメロディで、Kojoeが持つ都市性とは一味違う景色を見せてくれる。例えば北野映画における海のイメージはどうだろう。5曲目の「Come to me」で描かれる都市の孤独と連続することで、それは効果的に対比され、さらに深く心象風景が広がっていく。これを詩的なサウンドと言わずなんと言おうか。

BUPPON, ZIN & KOJOE - Come to me

BudaMunk & Jansport J『BudaSport』

 ビートに殺される。東京を拠点とするBudaMunkとLAを拠点に活躍するJansport Jの、2人のプロデューサーによるコラボアルバムは、反射的にそう思わされる、年に数枚あるかどうかの傑作である。ダーティーでディープなムードと音像、序盤から強調される荒々しいループミュージックとしての側面。まさに沼に入り込むようなアルバムだが、言語への意識がむしろ遠のいていくような、参加ラッパーたちによる自由で多様なフロウと、それを束ねる共通言語としてのビートが、あらゆる場面で快楽的に働いているのも事実だ。まさに全てが音として溶けるように、居心地の良さと緊張感が表裏一体に存在する。すべての“隔たり”は壊れた。これを聴く我々に安全圏はない。

BudaMunk & Jansport J "Spice" ft. Illa J, Devin Morrison & Daichi Yamamoto (Official Visualizer)

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