西沢幸奏ソロプロジェクト EXiNA、2年半ぶりに実現したパワフルなロックショー ライブへの愛溢れるワンマン公演

 「ライブを意識して作った曲」だという「KAiJiN」では、西沢自身が考案した振付のレクチャータイムへ。そのほかにも曲間にステップやジャンプなどをオーディエンスに促す一幕があったが、これらは今までのように声を出したりモッシュしたりといった楽しみ方ができないオーディエンスへ向けられた、西沢の優しさの表れのように思えた。

 コロナ禍によりライブシーンの在り方が今までと大きく変わってしまったことで、ライブハウスから足が遠のいてしまったリスナーも少なくなかったはず。今回の彼女のライブが久しぶりの“参戦”だったというリスナーもいたかもしれない。それでも今まで通り、いや今まで以上に楽しめるようにと、彼女はライブの随所で“楽しむヒント”をオーディエンスに投げかけ続けていたのだ。キラーチューン「DiViNE」で一斉にフロアを覆ったヘッドバンギングの波。西沢が天に掲げた人差し指はまるでライブシーンの、そして彼女のロックンロールの復活を宣言しているようだった。

「この景色が観たくて頑張ってきた……なんて本当は言いたくないけど、でも、この景色が観たくて今までやってきました」

 冒頭で涙ぐんだ西沢は、そう言って少し背中を向け、タオルで涙を拭った。そんな彼女がアンコールで披露したのは、アルバムにも収録されている、敬愛してやまないというFoo Fightersの「Monkey Wrench」カバー。この楽曲のレコーディングを終えた後で、ドラマーのテイラー・ホーキンスの訃報を聞いたという。素朴なロックバラードとして転生した彼女なりの「Monkey Wrench」は、彼女の憧れの存在への祈りであり、彼女自身がロックミュージシャンとして歩んだ人生への誇りの表れのようだった。

 ライブ中、楽曲の激しさからは想像できないような人懐っこい表情を垣間見せていた西沢。その様子からは音楽への、そしてライブへの愛が溢れ出していた。自分自身の“好き”への敬意を貫く彼女の姿からは、記念すべき最初のアルバムに自身の本名を冠した覚悟にも重なるものを感じられる。自分の“好き”に今改めて向き合った“SHiENA”の物語は、まだ始まったばかりだ。

関連記事