西沢幸奏ソロプロジェクト EXiNA、2年半ぶりに実現したパワフルなロックショー ライブへの愛溢れるワンマン公演

 シンガーソングライター 西沢幸奏が、ソロプロジェクト“EXiNA”としてワンマンライブ『SHiENA -A NEW STORY BEGiNS-』を5月22日にSpotify O-WESTで開催した。1stフルアルバム『SHiENA』のリリースを記念して行われた今回の公演は、彼女にとって約2年半ぶりのライブ。しかも1日2回公演の第1部となればさぞや感激もひとしおだろうと固唾を呑んで待っていると、最初にステージの上に登場したのはなんと彼女のマネージャーであり所属事務所社長の糸賀徹氏だった。驚くオーディエンスにライブでの約束事を丁寧に、かつサービス精神旺盛にアナウンスし、加えてなんと歌声まで披露して退場した糸賀氏。どうやらこの社長自らによる“オープニングアクト”も、西沢自身による“久しぶりに集まってくれたオーディエンスを先に温めてあげてほしい”という要望によるものらしい。

 糸賀氏のアジテーションによってしっかり温まったフロアにバンドメンバー、そして西沢が登場。会場を埋め尽くすリスナーを見渡して弾けるような笑顔を見せた西沢だが、ピンクのラメをあしらったギターを手にすると一変、その少女のようだった表情は一瞬にして引き締まり、生粋のロックミュージシャンの顔を覗かせる。

 「PERiOD」「吹雪」と立て続けに強力なロックチューンを叩きつける彼女は真っ赤に彩る照明の中、オーディエンス一人ひとりの表情を目に焼き付けるようにしてフロアを隅々まで見つめ、シルバーの指輪の光る指先で力強く、かつ繊細にギターを掻き鳴らす。朗々としたロングトーンで魅了したかと思いきや、迫力あるビブラートで血が湧き上がるような感覚を覚えさせる。彼女の稀有な歌声を極限まで底上げするバンドメンバーのサウンドも、パワフルでありながらグルーヴ感も抜群。たった2曲でフロアの空気を熱気で満たしてしまった。

 久しぶりに実現したライブに最初のMCで感極まってしまい、少し涙ぐんだ様子を見せていた西沢だったが、「今のEXiNAを形作った曲」と言い切る「ENDiNG MiRAGE」を披露すると再び豹変。「歌えるかなあ」と不安そうにしていたのが嘘のように深く、重い低音から始まる情念の塊のようなボーカルをタイトなバンドサウンドにのせていく。しかし次の瞬間には「SAGA」「Shark」とアッパーでライブ映えする楽曲を立て続けにパフォーマンス。フロアから湧き上がるハンドクラップに思わず可憐な笑顔を見せ、カートゥーンのようにくるくると表情を変えながら唸るようなギターソロまで披露してみせた。西沢自身もMCで「うちのバンド、音でっかくない?」と口にしていたほどの爆発的なバンドサウンドにも負けない圧倒的な存在感を、華奢な佇まいから放つ西沢の姿は痛快としか言いようがない。

 ライブも半ばに差し掛かった「CARPET」からは、彼女のアルバムでサウンドプロデュースを手掛けたdaiki kashoがギターで参加。「このアルバムが完成したのはdaikiさんのおかげ」と西沢も語る彼のギターはバンドにヘビーな響きを加え、楽曲の持つどこかダークファンタジー的な異世界感をどんどんと増幅させていく。髪を掻き乱し、挑発的な眼差しをフロアに向ける西沢。そしてその隣に立つkashoのギターはまるでツインボーカルの如き迫力を放っていた。

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