somunia、CIEL、花鋏キョウ……歌声にのせた純度の高いメッセージ 三者三様の表現力に注目のバーチャルシンガー

 「バーチャルシンガー」とは、ボーカロイドなどの歌声合成ソフトのキャラクターと、音楽活動に力を入れているVTuberを意味する言葉だ。今回触れるのは、後者のパターン。キズナアイや花譜といったバーチャルの世界を牽引してきた面々がいる一方で、まさに今輝こうとするシンガーもまた多く存在する。中でも、ミステリアスな雰囲気と歌声に注目したいシンガーについて取り上げてみたい。

somunia

 インターネットにある何処かの部屋で歌っている、という彼女。フリーで活動開始し、IPプロダクション Fictyへ所属という経歴を経て、2021年10月1日からは再びフリーのVTuberとして活動している。甘く囁くような、それでいてどこか儚さが漂う歌声が魅力的なシンガーだ。「summer leap」や「アマイシズク」では、清涼感のある愛らしい歌声を披露している一方で、「Connected World」などハイテンポかつエレクトロな楽曲との相性が良いのも特徴。

somunia - summer leap
somunia - Connected World

 再びフリーとなってから初めてのオリジナル曲「Psykhe」は、これまでの可愛らしいイメージを一新するストイックで静寂が美しい楽曲だ。ウィスパーな歌声はそのままに、一つひとつ確かめるように言葉を紡ぐ歌い方からは、彼女の切実な表現に対する決意が伝わってくる。同曲と「Unstep feat.ケンモチヒデフミ」「Emerge」の3曲では、“蝶の一生”を表現しているとのこと。アーティストとして、どんな表現ができるか。何を伝えていけるか。模索を続け、新たな境地を開拓せんとする彼女の今後から目が離せない。

somunia - Psykhe
somunia - Emerge

CIEL

 2019年、KAMITSUBAKI STUDIOのオーディション「神椿市異住定獣課」で注目を浴び、2021年に「窓を開けて」でデビュー。同曲は、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』の主題歌に起用された。疾走感ある爽やかな歌声は、どこか無邪気で愛おしい。しかしその中には、迷いを振り切って前に進もうとする意志の強さが感じられ、聴いているこちらも思わず走り出したくなるようなエネルギーに満ちている。MVはCIEL本人にフィーチャーしたストーリー仕立てとなっており、スマホを前に歌を録音するCIELの不安と決意が入り交じった表情は必見。

【オリジナルMV】窓を開けて / CIEL #01

 オリジナル曲以外にもカバー曲の投稿も行う。「勿忘」のカバーでは、Awesome City Clubの原曲が持つ哀愁はそのままに、アコースティックギター1本のみで歌うアレンジを披露。「窓を開けて」とは違う、過ぎた恋を回顧して切なく歌い上げる様は脱帽もの。「リアルとバーチャルを行き来する越境型フィメールシンガー」という肩書きの通り、MVでは彼女と思しき人物のシルエットが映し出されている。実力派シンガーを探している人はぜひ聴いてみてほしい、そんな存在だ。

勿忘 covered by CIEL

関連記事