access、30年変わらない常識を打ち崩す姿勢 予測不可能なステージ展開した『ELECTRIC NIGHT 2022』豊洲PIT公演レポ

access、常識を打ち崩す姿勢

 そう、予定調和を排した『ELECTRIC NIGHT』は、さまざまな気づきと出会える。不意の出会いや偶然の出会いが、知っているつもりでも知らなかったaccessの魅力に改めて気づかせてくれるのだ。1994年のヒット曲「MISTY HEARTBREAK」も意表を突くサウンドになっていた。AメロとBメロは、ディレイ(残響音)三昧。多くの場合、隠し味やスパイス的に用いられるディレイを、サウンドの中心に据える。結果、独特のグルーヴが生まれていた。サビになると、いきなりコード(和音感)が強調され、解放と高揚がおしよせる。

 続く「AGAINST THE RULES」でも、過激なリアルタイムリミックスがさえわたる。バックトラックの音をほぼほぼミュートしてしまい、ボーカルとキックだけの音場を創り出す。ライブで、つまりボーカリストが生で歌っているステージで、このアレンジはここにしかない。浅倉と貴水、信頼で結ばれた二人にしかできない。

 「Star Tribal」では、「なつかしくも新しく、新しくもなつかしいサウンド」の中、貴水のボーカルがさらに存在感を発揮。きらめくハイトーンが代名詞の彼が、切なさをしみこませたトーンで歌う。歌に情感を込めすぎると重くなる。逆に、抜き過ぎると味気ない。その境界線上でバランスをとる貴水。また〈世界が交わる時まで〉では、微妙な時差で、ジワッと音程をあてる。いわゆるシャクリだ。accessでの貴水は、リズムもピッチもジャストで歌う傾向が強いから切れ味が鋭く、この歌唱法をほとんど使わない。だからこそ、ここ一番で、もっとも効果的なポイントで、たった1回だけ使うと、聴く者を一瞬にして歌の世界へ吸い込んでしまう、ブラックホール的な破壊力が生まれるのだろう。

 もしかしたらリアルタイムリミックスの『ELECTRIC NIGHT』だから、貴水の生のボーカルや表現力が際立つ箇所が、予期せぬところに生まれているのかもしれない。予定調和を排した『ELECTRIC NIGHT』の効力だ。

 90年代、00年代、10年代、さまざまな時代の曲が交差する。その中、いきなり英語詞の新曲が飛び出した。完成形ではないベータ版らしいが、2000年代に入ってから、accessはしばしばこのような未完の曲をライブで披露してきた。なぜなら完成までの過程をオーディエンスとともに楽しみたいからだ。

 2017年リリースの「Heart Mining」からが終盤戦。『ELECTRIC NIGHT』らしい尖った音だった。ありがちなセトリなら、ここからアップテンポな曲を続けるが、accessは常識破り。「grand muse」「Missing 4 seasons」とミドルテンポの落ち着いた曲を続ける。リアルタイムリミックスをはじめ、サウンドもセトリもすべて、『ELECTRIC NIGHT』にしかないオリジナルだ。

 本編ラスト3曲でテンションはついに大爆発。「ELECTLIC☆NIGHT」「SOUL DYNAMITE」「永遠dive」。声を出すことができないオーディエンスの心を、完全解放するとどめだ。『ELECTRIC NIGHT』のエキスが詰まった佳境だった。

 アンコールでも、この日が初公開の新曲を演奏。こちらもベータ版だそうだ。筆者は、キャリア45年超のベテランアーティストが“新曲は希望”だと言っていたことを思い出した。この時代、いつかこの曲をライブで演奏し聴ける日がくるという、アーティストとオーディエンスの約束のようなものだから。きっとaccessの二人が、いちはやく新曲を披露した思いは、先述のベテランと同じだったはずだ。

 ラストは夏曲の「DRASTIC MERMAID」。もうそこまできている夏、つまり未来で締めくくるセトリだった。30周年だからと、思い出にひたったり、デビュー曲で締めくくったりしないところもaccessらしい。常に未来へ向かっている。それはきっと希望は過去よりも未来にあると、彼らが固く信じているからだ。accessの一番大切なポイントがしっかりと伝わってきた『ELECTRIC NIGHT 2022』だった。

■ライブ情報
『access 30th Anniversary ELECTRIC NIGHT 2022』

(※終了分は割愛)
2022年5月14日(土)愛知県 ダイアモンドホール
2022年5月15日(日)愛知県 ダイアモンドホール
2002年5月22日(日)北海道 ペニーレーン24
2022年5月28日(土)大阪府 なんばHatch
2022年6月5日 (日)福岡県 DRUM LOGOS
2022年6月11日(土)宮城県 仙台Rensa

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