BTSが『PTD ON STAGE』を経て掴んだもの ラスベガス公演からも伝わった“7人のヒーロー”たちの軌跡

 BTSが4月17日(日本時間)、ラスベガスにて開催していた有観客コンサート『BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE – LAS VEGAS』の最終公演を完走した。昨年10月にオンラインコンサートとしてスタートし、ロサンゼルス、ソウル、そしてラスベガスではオフラインコンサートへ。世界的パンデミックという誰もが先の見えない不安な状況の中で、模索しながら突き進んできた『PERMISSION TO DANCE ON STAGE』(以下、『PTD ON STAGE』)。

 BTSにとってコンサートとは、ARMY(ファンの呼称)とのエネルギーを交換し合う場。最終公演は、まさにお互いに充電をした様子が伝わってくる活気あふれたライブだった。一時期はライブ活動ができず絶望感に包まれたというBTSが、『PTD ON STAGE』を経て掴んだものとは。

実は1回限りの予定だった『PTD ON STAGE』

 『PTD ON STAGE』の最大の特徴は、全曲7人全員がフル出演するという異例のセットリスト。これはBTSのメンバーみんなで考えたものであるというが、最終公演のエンディングでRMから驚くべき事実が語られた。「実は『PTD ON STAGE』は1回限りのイベントの予定でした。コロナのあと、歌とダンスを一つに詰め込んだプレゼントを贈りたいと思って。だから、休憩もなく、激しいダンスばかりに。ですが12回も公演をやりました(笑)。これができたのも、みなさんの愛があったからだと思います」。

RM

 「体力的にキツい?」と声をかけ合いながら、久しぶりに大型会場で歌い踊った、最初のオンラインコンサートが懐かしく感じられる。ライブ活動が長らくできなかったことへの悔しさ、寂しさを爆発させるように、息を切らしながらがむしゃらにパフォーマンスを披露したあの日。たった1回の公演だと思えば、そんなタフなセットリストも乗り切れるという算段だったのだと思うと、その内容を進化させながら12公演も続けたというのは、彼らにとって精神的にも肉体的にも大きな自信となったに違いない。

 最終公演も、オープニングから「ON」「FIRE」「DOPE」「DNA」と激しいダンスナンバーから始まり、「Blue & Grey」「Black Swan」「Blood Sweat & Tears」「FAKE LOVE」へと切なくも力強い幻想的なステージングで魅了。また「Life Goes On」「Boy With Luv」ではメンバーの和気あいあいとしたキュートな一面を見せつつ、「Dynamite」「Butter」と世界的ヒットソングを披露していく。グローバルグループへと成長した姿を実感させられたかと思いきや、続く「Telepathy」「Outro : Wings」でトロッコに乗り込み客席に身を乗り出しながらコミュニケーションを取るという親近感あふれる姿も。遠い存在になったように見えても、変わらぬものがそこにある、そう伝えてくれるかのように「Stay」へと続くのもグッとくる展開だった。

 そして「So What」「IDOL」では、テンションが上がるままにペットボトルの水をぶちまけるなど、まるで少年のようにはしゃぐ7人の姿が。歌が、ダンスが、そしてこのライブという空間が好きでたまらず、そしてそんな7人の笑顔が愛しくてたまらないARMYがいる。そんな心地よい空間にしか生まれない、熱いエネルギーをヒシヒシと感じることができた。

BTSとARMYの相互関係

JUNG KOOK

 「ARMYが僕の笑顔の理由です。だから僕もARMYを笑顔にする理由になりたいです」。JUNG KOOKがエンディングで語った言葉だ。このコロナ禍に開催された『PTD ON STAGE』は、ARMYの姿さえ見えなかったオンラインコンサート、そして客席数を絞った無歓声公演と、様々な模索が続いた。その中で今回のラスベガス公演はスタンディングOK、歓声OKという、かつてのコンサートの姿を思い出す形に。

 オープニング映像からメンバーが映し出されるたびに轟く歓声。「ああ、これぞライブだ」と、いち観客として見ている筆者でさえゾクゾクとするのだから、ステージに立つ彼らにとって、その空気の振動は私たちの想像以上のものなはず。「一緒に歌って!」「ジャンプ!」と声をかけるたびに会場が揺れるほどのリアクションが返ってくる喜び。Vが「誰が一番大きな声を出せるか」対決だと言わんばかりに、「Make some noise!」と叫びたくなる気持ちもわかる気がする。そんな大歓声に溢れたステージを振り返り、SUGAは「歓声があると生きている実感がします」と語り、JIMINも「一番記憶に残るのはみなさんの歓声です」とコメントしていたのも印象的だった。

 また、アンコール前にカメラが観客席を映し出す場面も、胸を打つものがあった。そこには彼らも目にしたであろう、思い思いのメッセージプラカードが並ぶ。それぞれの国の言葉で書かれたものもあれば、韓国語で書かれたものも多く見受けられたのは、彼らに届けたいという思いの表れ。また、様々な国旗が振られていた光景にも目頭が熱くなる。BTSをきっかけに言葉も文化も超えてこれだけの人が繋がり、ポジティブな空間が生み出されている。ともすれば瞬時に世界が分断されてしまいそうな今こそ、エンタメの力を感じずにはいられない。

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