人格ラヂオ、ゼロ年代ヴィジュアル系シーンで放った異質な存在感 10年ぶりライブで楽曲の魅力を再確認

 これらのメディアを通した活動が人格ラヂオの知名度を高めていったことは確かだが、2011年末には悠希のブログでの失言がきっかけで活動自粛へ。翌年9月には一度活動を再開してファンクラブ限定ライブを行うも、その後すぐに活動休止を宣言し、悠希はソロアーティストとして、那オキはTHE BEETHOVENとして、別々の場所で音楽活動を続けていた。

 そして2人が10年ぶりに公の場で音を合わせたのが、今回の配信ライブである。セットリストは、先述した『証拠』の楽曲を中心に、2004年リリースのシングル『遊歩道』のカップリング曲「深い森の中のさなぎ」、2006年リリースのシングル表題曲「額縁」などの名曲も惜しみなく披露。楽曲の雰囲気に合わせて映像がモノクロに切り替わる演出や、アルバムに沿った曲順など、細部にわたるこだわりが感じられた。リリースから20年近く経過している楽曲も多かったが、古めかしさや今のメンバーが表現していることに対する違和感はなく、彼らがいかに普遍的な価値のある作品を生み出してきたのかを証明したライブだったと言っても過言ではないだろう。

 このような楽曲を生んできた彼らが、世間では“炎上して消えたバンド”という印象、ファンにとっては悲しい記憶で終わらせず、今回のライブを通して再び音楽で魅了してくれたことはとても喜ばしい。悠希曰く「今回配信を選んだのは自分たちの需要を確認するためだった」とのことだが、「やっぱりバンギャル(ファン)に(会場に)いてほしい。そういったライブを近々できれば」と次の予定を示唆する発言もあり、メンバーもまたこのライブで手ごたえを感じたようだった。

 現時点で今後の活動に関する発表はまだないが、この配信ライブの熱が冷めないうちに、生のライブを見てさらに人格ラヂオの世界に没入したい。そう願うファンは多いはずだ。これまでマイペースな活動スタイルを貫いてきた彼らだが、「ただいま」が直接聴ける日もそう遠くないと思いたい。

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