宇多田ヒカルのコーチェラフェス出演はなぜ特別だったのか? 88risingとステージを共にした意義
昨今の日本の音楽には、世界的にみても優れたものが非常に多く、それでありながらその大半が評価されずにいる現状がある。だからこそ、それを知る人々が積極的に光を当てることで、今回のような例が起こりうるわけだ。
ここ数年『コーチェラ』に出演しているPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅをはじめ、BorisやMONOのように国外での評価が高いバンドなどは、そうした外との交流や分析を積極的に行っているからこそ注目を集められているわけで、相手に知ってもらうためにはまず相手を知る必要がある、ということだ。YouTubeやTikTok、各種サブスクリプションサービスを通したバイラルヒットとは異なる、“J-POPが世界で評価される”ための方法、再現性を持つルートの一つとして、このような交流・貢献を通して土台を積み上げていくのも大事なのではないか。今回の88risingのステージはそうした地道な活動の結実であり、次に繋がる連帯の在り方を示す素晴らしい機会だった。宇多田の出演は日本のリスナーの注目を集めたことも含め実に意義深かったし、その意味で、88rising名義で宇多田も参加した新曲「T」が披露されたのも良かった。夕凪の時間帯によく合うアンビエントソウルは、宇多田自身の活動ではあまり見えてこなかった美点を引き出していたし、ソロ4曲を終えて肩の力が抜けたように見えた宇多田の演奏も、しみじみと好ましいものだった。
今年の『コーチェラ』はWeek2もYouTube配信があり、88risingの2度目のステージも中継される(※2)。ポップミュージックの最先端を体感する舞台としてこれ以上ないフェスであり、そんなことを抜きにしても無条件で惹き込まれる最高のアクトが揃っている。興味ある方は、ぜひチェックしてみることをおすすめしたい。
※1:https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/utadahikaru/news/detail.html?id=540231
※2:『コーチェラ』フェス公式Twitterより:https://twitter.com/coachella/status/1517266259926167552